#235(5週目日曜日・午後・セイン2)
「それでは! 新しいBLのプラグインを発表します! その名も…、バトルロイヤルMODです!! このプラグインは…。…。」
壇上でビッチが…、さも自分が作りました的な顔をしてアバター判別機能を利用したツールの追加プラグインを発表する。
割れんばかりの拍手をもって、会場が盛況ぶりを表現する。しかし、ビッチはBLやプラグインの開発には一切かかわっていない。あくまで配布サイトを(言われるがままに)管理しているだけ。当然、開発の指揮も、開発費用もだしていない。それなのに「このツールの開発は当サイトの広告収入で成り立っています」と言わんばかりにWeb広告や自身の動画が張られており、がっつり広告収入を稼いでいる。
「いや~、これで、
話しかけてきたのはレイ。今回のプラグインはレイや…、例のBOプレイヤーの意見を取り入れて(俺が業者に外注して)作った本格的なソフトだ。
「一応、基盤は作った。あとは宣伝と、運だな」
「運は…、どうにもならないですね~。でも! なかなかいいものは出来たと思いますよ!?」
「まだ改善点は山ほどある。運もそうだが、サポートやイベント運営も大事だぞ!」
「調整作業やアップデートもしていかないとだしな」
「中世ファンタジーがベースになっているせいで、兵器が原始的過ぎるのは気になるが…、まぁヒットするだけの基準はクリアしている。つまりココからだってことだな…」
そう言って現れたのは元BOプレイヤー、アンダーワードの3人。3人は好き勝手に意見をぶつけ合っていただけだが、その情熱は(俺の知る限りでは)誰にも負けない。レイも含めて、最近、開発者気取りでちょっとウザいが…、まぁそこは目を瞑ってやろう。
新しいプラグイン「バトルロイヤルMOD」の機能は…、
①、従来のワンヒット制とは違い、耐久値やヘッドショット判定、そして時間経過やアイテムなどでの回復の概念が組み込まれている。例えば「ヘッドショットで即死。近距離攻撃なら胴でも即死。カスあたりは連続4ヒットでアウト。ただし時間経過で回復有り」などの条件を設定できる。
②、別ソフトで、参加者や時間・場所を自由に指定できる。試合の判定(審判)が機械的におこなえるので、個人で練習もできるし、大会運営もラクで確実になる。
③、レートのカウントとランク分け機能。まだ未実装だが、既存のランキングとは別に、MODを使用しているPC限定のランキング機能を実施する。
④、ストリートファイトモードの追加。まだ未実装だが、ゆくゆくはルールを少数のパターンに限定して、そこにフリー遭遇戦モードを追加する。こっちは大会でのランクアップではなく、フリーファイトに限定(特化)したカテゴリーとなる予定。
「あぁ、あと、今さらですけど…」
「「??」」
「いや、いいんですかね? PK対策で開発したソフトなのに、こんなPKを公認する様なプラグインを、どんどん追加しちゃって」
「お嬢(ミーファ)が許可しているんだから、自警団公認だと思っていたんだが…、違うのか?」
「そういえば、お嬢って縁切れているんだっけ? 自警団と。その辺、いまいち分かりにくいよな?」
4人が自警団やビッチについて憂いを抱くのは当然のこと。実際、かなり複雑な状況になっている。
「そのへんは気にする必要はない。たしかに自警団団長は潔癖で、頭の固いやつだが…、バカでも無ければ落としどころもわきまえている」
「そうなのか?」
「あぁ。あと、連中が規制したいのはイベント妨害や無差別なPKであって、C√PC同士が争うのには、全く関心がない。むしろ、監視しやすくなると喜んでいるくらいだ」
自由連合内では、一応、ビッチの全面的な協力でBLを利用したプラグインの開発をおこなっている、事になっている。そして「ビッチが許可しているんだから、自警団本部も許可している、だから団長も許可している」と言う三段論法が成立している。しかし、ビッチが自警団から切り捨てられている事は事実であり、自警団はBLの拡張プラグインを何一つ公認していない。
「なんと言うか、自警団の対応って外交みたいだよな? 国としては敵対していても、経済協力や援助は続けたりとか、遺憾の意を表明しておいて何もしないとか」
「「あぁ…」」
実際のところ自警団は、疑いだけで創設以来の功労者を悪者にするわけにもいかず、首輪だけのこして放し飼いにしたら…、急に有能になったと驚いている状態だ。まぁ怪しんでいる部分もあるだろうが、そこは全く問題ではない。俺がビッチを通して、会議で団長を"納得"させている。それが全てなのだ。
それと、話はかわるが…、自警団はイベントでの俺の快進撃に対して何もコメントを出していない。内心ではキレていてもおかしくないが、そこは事前に勇者同盟から釘を刺されている事は知っている。今後、何らかの圧力はあるだろうが…、自警団が表立って俺や、イベントでPKをおこなっていたPCを処罰することは出来ない。
(イベントで何方の勢力につくかは個人の自由であり、公式がそれを公に認めているので、それでも名指しで迷惑PCとしてPKKなどの妨害をおこなうと粘着行為などの違反行為に該当してしまう)
「さて、そろそろ演説も終わるぞ」
「おっと、そろそろ出番か」
「ふっ、調子にのってハンデをよこしたこと、後悔させてやる!」
「バトロワゲーは地形とチームワークがモノを言う。BOでつちかった俺たちのテク、見せつけてやるぜ!」
「頑張ってくださいね~」
前回はビーストに客引きパンダをまかせたが…、今回のパンダは"俺"。今一番話題のPCがデモンストレーションに参加するのだ。宣伝効果は抜群だろう。
こうして、俺は戦いのフィールドへと足を向ける。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます