#223(5週目土曜日・夜・????)
「なんでお前たちが
「かまわない、スタートと同時に
「くそ、押すな! もっと互いに距離をとれ!!」
村の外の林・王国軍側侵入部隊スポーンエリア。イベントは開始したものの、参加者が多かったため中々後続がスタートできずにいた。
「焦ることは無いとは言え、ここまで混みあっていると別の意味で不快ですね」
「まだリアルじゃないからマシだけど、ちょっと人混みで酔ってきそうにゃ」
「猫、ちょっとその辺一帯のPCを間引きしてきなさい」
「まだ
侵入側の序盤は、後衛職が主体であるためベテラン以上のPCは無暗に攻め込まず様子見に徹する者が多い。今回はC√PCが魔人陣営側で参加できない事もあり、6時代以上にギスギスした雰囲気につつまれている。
「すごい人だね。これ、私たちまで出番回ってくるのかな?」
「(PCが)多いと言えば多いけど、これでも全体から見たら少ないのよね?」
「(王国軍)防衛側は、たぶんもっと混雑しているだろうけど…、どうも参加率はそこまで高くないみたい。それなりにランキングを目指しているPC向けのイベントと言うか…、イベントの裏で悪さする人も多いから、C√の人たちや自警団は不参加みたい」
「2人は、自警団とは関わりたくないんだっけ?」
「まぁ、そうだけど、SKはあまり気にしなくていいよ。こっちの都合だし…」
「水臭いな~。…。」
本来の魔人侵攻イベントは、4つの陣営に分かれて競い合うものだが、未転生PCであふれる現状での選択肢は実質2つ(例外は1人だけ)なので、その場は千人近いPCで溢れかえっているが…、これでも全体のプレイヤー数からすれば1%程度にすぎない。しかし、これでも人気や注目度が低いとは言いきれない。ゲームによって事情は大きく変化するだろうが、L&Cのプレイスタイルは多様であり、同時に、戦闘系イベントである以上参加には一定のハードルが存在する。つまるところ「参加率はいい方」だと言えよう。
「そう言えばさ、なんで人間同士で争い合っているの?」
「え?」
「ほら、NPCの兵士って殆どが人族って言うんだっけ? そればっかりじゃない? もっとこう、人対魔物みたいなのを想像していた」
「あぁ、私も、実は思ってた」
「お姉ちゃん、ストーリー解説、読んでないの?」
「うっ、まぁ…」
各陣営のスポーン位置からは本陣での戦いがモニター越しに観察できる。そこでは王国軍と魔人側兵士が戦っているが…、人族や亜人種族で構成された王国軍に対して、魔人陣営は魔物や魔人が混じっているものの、大半は人系種族であり…、数と練度で
「なんでも魔人は強い代わりに繁殖力が極端に低くて、国を作れるほど数が揃わないみたい。だから、魔人軍って言うのは…、人の国じゃなくて、魔人を信仰している集団って意味で、逆に人族の側につく魔人や、中立の種族も多いみたい」
「そう言えばこのゲーム。国はアルバ1つで、あとは中立都市とか、敵対勢力ってだけだもんね」
「なんか難しそうな話だよね。アタシは、もっとこう、シンプルに人対悪魔のゲームだと思ってた」
「L&Cの世界観だと、悪魔じゃなくて魔人で、魔王も"魔道を極めし者"って意味で"王"で、つまりは
「
「そのあたりのストーリーは謎が多いみたいだよ? 詳しい人なら知ってそうだけど、攻略サイトには濁した表現ばかりみたい」
「あくまで裏設定ってだけで、ストーリーには直接関係ないわけね」
混みあっている事もあり、多くのPCが雑談に花を咲かせる。スポーン位置は強制無敵状態であり、例え「見るからに敵対組織のPC」であっても攻撃する事は出来ない。そして無敵と言う事は、仮面などのアバターIDを隠すアイテムも機能する。
「それで、作戦はどうするにゃ? この中にはEDの連中もいるみたいにゃけど」
「共戦するつもりはありません。敵の敵も、全て敵です」
「さすがアイにゃん、清々しいまでに分かりやすいにゃ」
「別に、私は私の考えを押し付けるつもりはありません。猫は猫でしたいようにすればいいのですよ」
「にしし、アチシも、EDの連中と仲良くするつもりはないにゃ~」
「ふっ、そう言うことです」
MMOの世界は多くの人が集まって出来ている。協力プレイがしたい者もいれば、相手を
「あ、そろそろ動き出すみたい」
「まだ1つ目のルートが解放されただけみたいだけどね」
「これで上から一方的に攻撃していたNPCを倒せるようになるから、ここからは展開が早くなるみたいだね」
「くぅ~、待ちくたびれちゃったよ。どうせ再スタートできるんでしょ? 取りあえず突っ込んで雰囲気を掴みにいこうよ!」
「ちょ、だからペナルティーはあるんだって!」
徐々に近接職の冒険者が魔人の村に流れ込んでいく。参加アバターの成長度で言えば最も未成熟ではあるが…、それゆえに別ルートのPCが同じ陣営で競い合う、異例の状況。
こうして、7世代では最初にして、最もカオスなイベントの舞台に…、役者が集っていく。
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