#203(5週目火曜日・夜・セイン2)

「お、レアが出たにゃ。[清らかなる枝]にゃ」

「あぁ、また、扱いに困るものがでたな…」


 レイと別れ、予定通りキアネアの攻略を再開すると…、ウッドゴーレムの親戚、フェアリーゴーレムからレアアイテムの[清らかなる枝]がドロップした。このアイテムは上位のマジックロッドのメイン素材であり、完成させれば充分な戦力になる。しかし…、魔法職がPTにいない事や、売るにしても現状で高ランク装備コレに妥当な金額を払えるPCがどれだけいるか…。


「やっぱり、PTに魔法使いがいた方がいいのかにゃ~」

「いや、要らないだろ? トレイン狩りをするって言うなら話もかわってくるが…」


 C√において純粋な魔法使いの人権は殆ど存在しない。それはイベント戦闘の殆どが個人戦であるのも大きいが、やはり転生前の低ステータスと魔法使いの要求ステータスが噛み合っていないのが1番の問題なのだろう。


 ほかの職業も転生前なら中途半端なのは当たり前なのだが、前衛職などは中途半端でもそれなりに戦えてしまうのに対して…、魔法使いは魔法威力と詠唱速度に加えて魔法スキルのバラエティーなどステータスやスキルに余裕がなく、必然的にレベルに対して防御面がどうしても貧弱になってしまう。デスペナが重いL&Cでは「適性狩場ですら即死の危険がある」と言うのはあまりにも重いハンデとなる。


 そのあたりをPTやギルドの優遇でキッチリサポートすれば、自警団のように周囲攻撃を生かして荒稼ぎも可能となるが…、基本的には欲をかかずに近接主体の手堅いPT構成が、C√では最適解となる。


「ちょっと勿体ないですけど、売るしかないですね。せめて知り合いに魔法使いでもいればよかったんですけど…」

「 …あ」

「そうかしましたか、兄さん」

「いや、なんでもない」

「「??」」


 知り合いに1人、高レベルの魔法使いがいたのを忘れていたが…、このまま忘れる事にした。


 だってビッチだし…。


「まぁいい。枝は買い取り商人に流すとして…、取りあえず食材系を集めよう。できれば早めに纏まった数を用意して、料理スキルも上げておきたい」

「料理スキルもあげるのにゃ??」

「初級だけな。アイには引き続き製造系スキルを上げてもらう。料理スキルを覚えるのは俺がやる」

「男の手料理に需要はあるのかにゃ?」


 ニヤニヤと笑みを浮かべて問いかけるニャン子。そもそもリアルでも料理人の殆どは男性なのだが…、それはさて置き、バカらしい話だが「女性PCが売る料理」の方が圧倒的に売れ行きがよかったりする。


「売るのはアイだから問題ない。取りあえず狩場を移動するぞ。余裕が出てきたら料理は自分たち用にも使う予定だ」

「うぃうぃ」


 わざわざ時間と手間をかけて食材を加工するのは、自分たちも使うためだ。料理のコスパは確かに悪い。普通の回復アイテムは、NPCから無尽蔵(値段の変動はあるが)に購入できるのに対して、料理は食材を集めて加工する手間が必要になる。回復のみが目的なら、多少、重量効率や回復量がいいとしても商人(荷物持ち)がいるPTで料理を常食するのはバカらしい事この上ない。





「ところで猫、アナタ猫ですよね?」

「アチシは猫ロールをしているだけで、別に水棲適性はないにゃ。だから、水中に落とそうとするのはやめるにゃ。あと、普通の猫も水は嫌がるモノにゃ!」

「チッ! 使えない猫ですね」

「相変わらずアイにゃんが素直で、涙がでてくるにゃ…」


 2人の漫才は置いておいて、俺たちは海岸エリアに来ていた。狙いはもちろん魚介系食材。


 料理システムは、後期バージョンで追加された要素であり、当時の追加マップであるキアネアで殆どの食材が入手できるのだが…、それでも一ヶ所で固定狩りをして料理が完成するほど甘くもない。もちろん、他の地方でも食材を集める必要はあるが…、まぁそっちは露店で買うとか、現地で声をかける手もある。それに…、今なら自由連合の掲示板で呼びかける手も使える。


 大規模ギルドなんかは基本的にどこもそうだが…、わざわざ露店を探しまわらなくてもグループ内で声をかけ合えば簡単に必要素材が集まってしまう。もちろん、対価は払うが、それでもレベル帯の合わない狩場で狩りをしたり、現地でPCに声をかけてまわるよりは遥かに効率がいい。


「あ…」

「どうかしましたか、兄さん」

「いや、何でもない」

「「??」」


 そう言えば、スバルやユンユンに頼む手もあった。もちろん、収集目的だけなら自由連合や情報屋に頼むのが早いのだが…、スバルなら俺の行動が周知されるのを回避できるし、宿題と言うか、特訓?にも使える。今は漠然とレベルや装備を整えろと言って放置しているが…、一応、師弟なわけだし、もう少し具体的な道筋を示してやるのもいいだろう。


 そう考えると、何となく今後やる事の方向性が見えてくるし…、楽しくなってくる。


「ちょ、猫! 早くタゲをとってください!」

「水辺には入れないから、しばらくはアイにゃんが耐えるにゃ!」

「 …!!」

「 …!?」


 それはさて置き、完璧に見えたアイとニャン子の連携も、なれない狩場を前に成すすべなく崩壊した。


 距離をつめたり後ろに回り込むにしても、水場に飛び込むわけにもいかず、どうしても魔物を陸地まで釣りだす工程が必要になるほか、水棲の魔物は水属性の遠距離攻撃も頻繁に使ってくるからだ。




 久しぶりに戦闘はグダりにグダったが…、それはそれとして、アイとニャン子のやりとりがちょっと面白かった。

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