#197(5週目月曜日・夜・セイン)
「
「はい!」
「よっと、コツさえ掴めば、余裕だにゃ!」
宙を切り裂く無数の閃光を回避して、一気に距離をつめる。スキル発動後の
相変わらず安っぽい断末魔と共に二足歩行の猫が光になって消える。
「兄さん、ここにももう1体!」
「アイにゃん。それはアチシだにゃ。 あと! 分かってい、て! 本気で当てよう、と! するの! やめる…、にゃ!!」
「遊んでないで、次いくぞ」
「はい、兄さん」
「 …この落差にゃ」
相変わらず仲良しな2人はいいとして…、キアネアの魔物は基本的にフェアリー○○(動物名)と言った構成の名前で統一されている。ただし、フェアリーと言っても妖精族とは限らない。あくまでキアネアの固有種と言う意味にすぎないようだ。
戦闘面では、厄介な特徴として強力なスキル攻撃を備えており…、Fキャットなら爪のリーチにプラスしてスキル攻撃のリーチが追加される。スキル攻撃は魔法と逆で予備動作が短くディレイが長めに設定されている。近接戦で通常攻撃のリズムに体が慣れた頃、その隙を突くかのようにテンポをずらして中距離の飛翔する斬撃が放たれる。この遠距離とも言えない中距離物理攻撃は、戦闘に慣れてきた中級者の調子を狂わす厄介な相手となる。
「慣れているみたいだけど、ニャン子は
「ん~、そうでもないけど、時々来ていたにゃ。なんかココの敵、格ゲーみたいで面白いにゃ」
「あぁ~、たしかにそんな感じはあるな」
言われてみれば、たしかにニャン子は格闘ゲーマー特有の戦闘スタイルを主体にしている。攻撃がぶつかり合った時どちらの技に優先権があるとか、牽制で軽く素振りしたり、追い込むと二者択一を迫ってくる。
F系も二足歩行が多く、ときに射速や射程の違う必殺技っぽい技が混ざるところも格闘ゲームっぽい。ダメージ判定も同様で…、一言に斬撃スキルと言っても、物理判定である爪本体のアタリ判定と、エフェクトにつくフレーム毎の疑似物理のアタリ判定が個別に設定されており、ノックバックやヒット数の概念もある。
物理判定と疑似物理判定の違いは…、物理は物理演算による重さなどの演算判定があるのに対して、疑似には重さなどが設定されておらず物理攻撃属性になっているだけで魔法と殆ど同じダメージ計算が適用される。
「格ゲースタイルは戦闘を簡略化しているから、慣れてくれば結構早く上達できるにゃ。最適解とか、確率論で勝負する感じに近いにゃ」
「猫、余計なお喋りもいいですが、するならお喋りに集中してください」
「いや、死にたくないから油断はしないにゃ」
そんなやり取りをしながらも、冷静にFバードに対処する2人。ときおり乱れ飛ぶ羽のエフェクトをアイが盾でカバーして、ニャン子が上手く後ろに回り込む。後ろのニャン子に注意がいけば、今度はアイが隙だらけの背後に溜め攻撃を叩きこむ。動きどころかターゲティングまで巧みにコントロールして戦っている。むしろ、俺が下手にカバーに入らない方がいい気がしてきた。
「あ、[風の属性結晶]にゃ」
「こっちは[パパイヤ]ですね」
「やっと出たか。相変わらずフルーツ系はよくわからないポジションだよな」
「ですね」
「まぁたしかに、そのへんの木から取れないのか?って時々思うにゃ」
入手したドロップを確認しながらシミジミ思う。F系の魔物は共通して料理スキルに使用できる回復アイテム(食材系)をドロップする。食材はそのまま使えばただの回復アイテムだが…、調理して使えば様々な追加効果が得られる。つまりは
料理は手間がかかる分、お値段もそれなりで、効果は気休め程度。初心者から中級者はお世話になる事のない嗜好品扱いだが…、資金に余裕のあるトッププレイヤーなどは僅かな差にも出費を惜しまない。実際、ステータス的に差は少なくとも確殺ラインの変化は時間効率に大きく影響する。「2回攻撃しないと倒せない敵が、料理アリなら1回で倒せる」なんて事になれば処理速度は実質2倍だ。
とは言え、こんな非効率のアイテムを常用するくらいなら、もっと他に使うべき場所はあるべき。それでもあえて
こうして、F系を狩る生活がはじまった。
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