#194(5週目月曜日・午後・スバル)
「ふにゃ~~」
「ふわぁ~~」
「「ん~~~」」
「ニャンコロさん、今日は何かやらないんですか~」
「ん~、別に~。ユンユンさんこそ、何かやらないのかにゃ~」
「ん~、別に~」
昼、ギルドホームに顔を出すと、ユンユンさんとニャンコロさんが、盛大にダラダラしていた。
「えぇ…っと、そう言えば、少しずつですけど、ユニークの装備が露店に並ぶようになってきましたね」
「ん~、そうだにゃ~」
「そうですね~」
なんだこれ…。
いつもなら張り詰めた空気に満ちているギルドホームも…、今日に限っては別モノ。例えるなら「取りあえずお正月だから帰省したけど、やることもなければ、やる気も起きない」って感じだろうか?
「2人とも、あまりダラダラしていると師匠に怒られちゃいますよ」
「ん~、兄ちゃんはそう言うの、気にしないにゃ~」
「気にしないですよね~」
だめだこりゃ。
2人がだらけ切っている理由は…、「先輩がいないから」この一言に尽きるだろう。先輩は今週、仕事の都合で昼間はログインできない。当然、昼の試合はお休みで、その間の指示も特に出していかなかった。
正直なところ、ニャンコロさんは何となくこうなるんじゃないかと予想していた。彼女は自由奔放で、本来は戦いたい時に戦い、休みたい時に休むタイプだ(少なくともボクはそう思っている)。しかし、先輩と一緒に居る時は例外と言うか…、悪い言い方になるが、先輩に判断を委ねて自分では何も考えないようにしている印象を受ける。もちろん実際のところは見ていないのでよく知らないが…、それでも、あの愛花とも肩を並べているのだ、実力的にも精神的にも、どこか一本、筋は通っているのだろう。
それとは別に、ユンユンさんはニャンコロさんの空気に完全に当てられている。本来ならば魔人襲撃イベントに向けて何かするところなのだろうが…、どうにも今回のイベントは見送るようだ。
「師匠は自主性を重視しますから、遊んでいても文句は言わないでしょうが…、戦力外にはシビアですよ?」
「「ぐっ…」」
先輩の性格は結構ストレートと言うか、ハッキリしている。なのでしばらく一緒に過ごせば、考え方くらいは理解できるようになる。まぁ、あのバッサリした性格と、思慮深さは読み切れない部分もあるが…、それでも2人への反応くらいは容易に想像できる。
「そう言えばスバル君は、なにか聞いてないの? やること的な…」
「え? ん~、これと言って指示は受けて無いですけど、ボクの場合はレベル上げと装備集めですね」
「あぁ、レベル上げは…、ん~」
どうにも複雑な表情を見せるユンユンさん。やはり動画の事もあって、レベルや装備の足並みは揃えたいようだ。
「ニャンコロさんは何か指示されていないんですか? 今週の方針とか…」
「ん~、その辺、兄ちゃんもちょっと悩んでいる見たいにゃ。セオリーでいけばイベント対策か、ユニーク狩り、金属系素材集め、あたりにゃんだけど…。ん~」
現在のトップ攻略者のレベルや装備がどれほどのものかは分からないが…、先輩がソコから大きく差をつけられているとは考えにくい。しかし、それなりに寄り道(自警団や商人運用など)もしているのでトップではないと思う。
しかし、だからこそイベントに参加したら間違いなく目立つだろう。すでに襲撃事件で目立っているので今さら感はあるが…。
「そうだ! せっかくだし、3人で過疎っているダンジョンを見に行きません? PTは非公平(経験値を均等分配しない設定)でいいので」
「そんなこと言って、ちゃっかり撮影する気にゃ?」
「そうともいいますね~」
そう言ってお道化たポーズをとってみせるユンユンさん。ちゃっかりしているようだが、撮影も結構、気を使うことが多い。例えば今回のユニークの大量出現もそうだ。チャンスが増えて人が多くなると、他のプレイヤーが撮影に映りこむ頻度も増えるし、トラブルも起きやすい。それでも気にしない人は気にしないようだが…、ユンユンさんはちゃんと気を使う人であり、わざと打算的に振舞ってはいるが、考えなしと言う訳でもない。それがユンユンさんだ。
「ボクはいいですよ? せっかくですから、なにかサブクエストを進めたり、素材でも集めに行きますか??」
「ん~、ま! それもいいかにゃ」
そう言って跳ね起きるニャンコロさん。どうやらその気になってくれたようだ。ボクも基本はソロプレイヤーであり、レベル上げなどは1人でもできるのだが…、だからと言って、この流れで解散して各自で行動するほどドライでもない。考えてみれば先輩不在の状態で、この3人がPTを組むのは、まずありえない。上手くいくにしろ、いかないにしろ、何かいい刺激になるかもしれない。
そんな事を考えながら…、ボクたちは即席のPTを組み、ホームから足を踏み出した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます