#179(4週目金曜日・午後・セイン2)
「うわっ、やっぱり混んでますね…」
「これじゃあ、他で狩りをした方が効率がいいにゃ」
「そうだな。完全に(最初のイベントと言う事もあって)お祭りムードだ」
来て早々、同じ道を引き返す。イベントエリアを確認しに来た俺たち3人だが…、予想以上の混雑ぶりに狩場の変更を余儀なくされた。
場所は、ビワスールエリアにあるイベント用の村の近隣に位置するマップ。つまり"ビワスールの森"系全域となる。
「しかし、この森にこんなに人がいるのは、なんだか不思議な気分ですね」
「スバルにゃんは、このあたりでレベル上げしていたにゃ?」
「そうなんですよ。昨日まで全然人がいなくて、たまにクエストやPKをする人が来るくらいでした」
「まぁイベント用のマップだからにゃ。普段はわざと重要度低めに設定されているのにゃ」
「そうだったんですか。…。」
早くも打ち解けているニャン子とスバル。スバルを
話は戻るが、魔人侵攻イベントは実は"救済系"のイベントだったりする。イメージ的には王国が追い詰められる、つまりPCに発破をかけるイベントに思えるが…、実際にはストーリーの緊迫とは裏腹に、中堅以下のPCにメリットの多い内容となっている。
ユニークの出現率が上がるのがまさにそれだ。ユニークの装備はどれも高性能だが、どこか性能が中途半端で(例えば、[祝福の指輪]の効果は状態異常耐性で、汎用性は高いが何1つ状態異常を無効化できないので信頼性がない)トッププレイヤーは使わない。しかし、そのおかげで安価で取引されるので"繋ぎ装備"として重宝される。
メインの侵攻イベントも、デスペナルティーの軽減があり、撃破時は参加者全員にボーナス報酬が発生する。負けると勢力図が変化するが…、もともと重要度の低いエリアの所有権が変わってもPCに大きなデメリットは発生しない。むしろ、使われていないエリアに出現する魔物を入れ替えられる分、得でもあったりする。
「 …兄ちゃん、聞いてるにゃ?」
「え? いや、聞いてなかった」
「だから、スバルにゃんの装備を揃えに行くのはどうかって話にゃ」
「あぁ、俺はいいが…、スバルはいいのか?」
スバルは、装備よりもプレイヤースキル(PS)を優先するPCであり、今までは俺が言っても殆ど装備を変えなかった。まぁ、刀系自体が選択肢の少ないカテゴリーなので、すぐに良いものを揃えられないのも事実だが。
「そ、その…、師匠が選んでくれるなら…」
「ん? それくらい構わないが…、やはり自分で手に取って、手に馴染む物を選ぶ必要があるだろう?」
「あぁ~、スバルにゃんも苦労しそうだにゃ~」
「いや、ボクは!?」
「なんの話だよ? とりあえず、ポン刀使いなら露店をまわるか(港町)アーバンの掘り出し物を漁るのが1番だな」
L&Cのベースは、あくまで西洋ファンタジーであり、東洋系の装備は全てレア扱いになっている。一応、アーバンから船で日本をベースにしたエリアに行くこともできるが…、現状では面倒なクエストをこなす必要があり、おまけにレベル的にも厳しい。つまりは、転生後に挑戦するエリアなのだ。装備が欲しいだけならランダム系のアイテムか、アーバンの店に限定品として並ぶのを待つのが現実的な選択肢となる。
「でも、それだと3人で行く意味はないにゃ。アイにゃんには悪いけど、2人っきりで行ってくるにゃ~」
「はわわわ、ニャンコロさん!?」
「いや、買い出しだけなら1人で充分だろ? と言うか、Dランク以下なら下手に露店をまわるより、ギルドの倉庫を漁ったほうが早い」
「「あ~、うん、そうですよね~」」
「??」
よくわからないが、ギルド倉庫には海底神殿で集めた装備が山のようにある。Dランクの短剣と片手剣の品ぞろえなら、まず間違いなくウチが1番だろう。
「えっと、それじゃあ防具はどうするにゃ?」
「そうだな、拘りがなければ戦士セットと影靴でいいだろ? 金さえ出せば幾らでも売ってやる」
「「あ~、うん、そうですよね~」」
「??」
結局、ウチが1番と言う結論に収束してしまう。別に、最速攻略をしているわけではないが、ガチ勢が気軽に強力な装備を市場に流すわけもなく…、現状の店売り装備でウチの在庫を超えるものが露店に並ぶ可能性は極めて低い。あとは…。
「えっと、そうなるとエンチャント勝負だにゃ! なにかオススメはないかにゃ!?」
ニャン子が妙にグイグイ来るのが気になるが、とりあえずスルーしておくとして…、スバルのように特定の分野に特化したタイプは下手に装備を浮気するよりも、得意分野にとことん特化した方が強い。そうなると、同じ装備を複数用意して、エンチャントで使い分けるのが1番だ。そう言ったスタイルは、見た目では装備の特性を推測できないので、対人メタとしても使える。
「そうだな…、スバルの場合は基本が出来ているから、無理に耐久値を補強するより、攻撃面を尖らせた方がいいだろう。そうなると、防具は体力やスタミナを強化して…、武器は[カタナ]を大量に用意して種族別に特攻装備を揃えるか…、あとは…」
「あぁ、完全にガチで装備を考えてるにゃ…。ごめんね、スバルにゃん」
「え? いや、ボクは別に…」
結局午後は、夕方に用事があった事もあり、ギルドや露店を行き来して終わってしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます