#143(21日目・番外編・リン)
「鈴お姉様。オススメのお菓子とお茶をお持ちしました。今日は2人でじっくり話し合いましょう!」
「え、あぁ…、うん」
なんなんだろう、この状況。色々あって落ち込んでいたら…、なぜだか妹の親友が、高級そうなお菓子と紅茶を持参して、なぐさめ?に来てくれた。
紬ちゃんだっけ? ほとんど面識がないはずなのだが…、なぜだか妙に気に入られてしまった。なんと言うか、この子からは百合百合しい気配を感じるので、できることならあまりお近づきにはなりたくないのだが…、それで断れる性格なら、私も苦労はしていない。
そもそも、私が落ち込んでいる原因は、この子にもあるのだから…。
「それで鈴お姉様。こちらのリーフなんですけど…。…。」
リーフって紅茶の葉の事だよね? なんなのこの女子力の高い会話。女子力と言うか、お嬢様度? もしかしなくてもお金持ちなんだよね? つか、なんで八重はこの子と付き合っているの?? ダメだ、ツッコミどころが多すぎる。
「うん、おいしいね。紬ちゃんは、こういうの詳しいんだ?」
「ん~、私の場合、お姉様方とお喋りをするのが楽しくて、気づいたら詳しくなっていただけで…、じつはそこまでお茶自体に思い入れは無かったりします」
「そ、そうなんだ…」
そう言ってハニカむ紬ちゃん。くそっ! 少女漫画のヒロインみたいだ!!
紬ちゃんは、なんと言うか…、人懐っこくて、愛嬌があり、おまけに気立てもいい。育ちが良い事も鼻にかけないので付き合いやすそうなイイ子なのだが…。
「その、できればパジャマ姿で、夜通しお話したりしたかったのですが…、さすがにそれはヤエに止められてしまいました」
「う、うん、そうだね。学校とか、家の事もあるし」
ナイス妹! この子、根はイイ子なんだろうけど、ぐいぐい押してくる感じが正直キツい。
「その、よろしければ! 一緒に背中の流し合いっこをしませんか!? 心を開くには裸の付き合いが1番だといいます! わ、私に、鈴お姉様の体を隅々まで洗わせてください!!」
「え、あ、それはちょっと…、ムリかな…」
「そうですか…」
物凄く落ち込む紬ちゃん。なにやら大きな荷物を持ってきたと思ったら…、そう言うことだったようだ。
それはさて置き、悪いが私はノーマルだ。同性愛を否定する気はないが…、私自身は異性でしかナニできない。
まぁ、コミュ障のせいもあって未だに未経験なんだけど…。
「えっと、それよりも! あの、ゲームの事なんだけど…」
「そうでした! すみません!!」
「え?」
「私がご無理を言ってしまったせいで、鈴お姉様には迷惑をかけてしまいました。私は、すこしでも鈴お姉様と親しくなりたかっただけなのですが…、そのせいで、なにやらご迷惑をおかけしてしまったようで…」
「あ、うん。私こそゴメン。私にも付き合いとかあるから、引き受けられなくって…」
あっさり解決してしまった。
紬ちゃんは"根は"本当にイイ子だ。オンラインゲームにリアルの友達を誘うのは普通の行為であり、違反でもなんでもない。ないのだが…、それはプレイスタイルの1つでしかない。
かく言う私も、(誘う友達はいないが)リアルの知り合いを誘ったり、オフ会などで交流を深めるのは反対派だったりする。正直に言って、リアルどころか、ゲーム外の事を詮索されたり、ゲーム内でゲームとは関係のない話題を振られるのも嫌なくらいだ。
私にとってL&Cは「現実逃避の場」であり、ニャンコロと言う名のPCは私とは別人。だから私の部屋に猫グッズなどは置いていない。私にとって猫とは「気まぐれの象徴」であり、愛でる存在ではないのだ。
「いえ、私は鈴お姉様と仲良くなれれば、それでいいので」
「え、あ、うん」
"うん"ってなんだ!?
つくづく自分の性格が嫌になる。指導の話も、はじめから私は受けるつもりはなかった。しかし、断り切れなかった私は…、あろうことかセインに話を丸投げしてしまった。リアルの持ちだし否定派の私が…、断れなかったという理由で、他のPCにリアルの事情を押し付けてしまったのだ。これではセインが怒るのは当然。私だって逆の立場なら、ギルドを抜けていただろう。
それもこれも! 居心地が良すぎるのがいけないのだ!!
私は、期待されてもプレッシャーしか感じないし、リアルを詮索されたり必要以上に交流を深めたいとも思わない。
そう言う意味で、セインやアイちゃんは最高の仲間だ。2人とも前衛であり、ソロプレイヤーとして完成されているので…、必要以上に気にかけたり、PTとしてフォローしあう必要がない。作戦は、セインが全て考えてくれるので考える必要はないし、責任もない。私は言われたことをこなせばいいだけ。これほど気楽なギルドは他にないだろう。
「そうだ! 鈴お姉様、この前のオモチャは、どうやって遊ぶのですか? よろしければ、一緒に遊びましょう!」
おいバカやめろ!
「いや、あれはオモチャじゃなくて…、そう! マッサージ器具だから! こう、ツボとか刺激する感じの!!」
「そうなんですか? それなら丁度いいです。私も肩が気になるので、使ってみてもよろしいですか?」
「いや、それは…」
「ダメですか…」
「いや、うん。ダメではないけど…、人には、特に妹には言わないでね! 絶対秘密だよ!!」
「はい! 2人だけの秘密ですね!!?」
これは全て、優柔不断な私に与えられた罰だ。
ごめんなさい、紬ちゃん。
ごめんなさい、セインにアイちゃん。
そんな事を考えながら…、妹の親友の体を、カラフルなオモチャでマッサージしていく。
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