クローンとアンドロイド 2

 未成年はクローンもアンドロイドも使えない。

 僕らには関係ないと思っていたが、ある朝、キングからLnieからメッセージが飛んできた。


『大変だ、うちでクローンを作る事になったらしい』


 ミサキがすかさず返事をする。


『良いね! おめでとう!』


『いや、ちょっと、素直に喜べないんだが、これからどうして良いか……』


 キングは困惑こんわくしているようだ。まあ、いきなり妹が出来たとなると、無理もない。


『とりあえず、集まって話しましょうか?』


 ジミ子が、このままLnieで話すより、直接に会って話した方が良いと判断したようだ。話を振ると、すぐにキングから返事が返ってくる。


『悪い、そうしよう。メェクドにでも集まろう、おごるから』


 こうして僕達は朝から、ハンバーガーチェーンのメェクドナルドゥで集まる事になった。



 僕はミサキを誘ってメェクドナルドゥに行く。

 メェクドナルドゥに着くと、朝メェクドゥのメニューからセットを頼み、いつものテーブルへと向う。

 いつものテーブルには、ヤン太とジミ子が既にいて、何かを話している。僕らは挨拶をして、隣に座る。


「おはよう、凄い事になったね」


「そうだな。クローンとか俺らには関係無いと思っていたんだがな……」


 コーヒーのコップを傾けながら、ヤン太が返事をする。すると、ミサキがこんな事を言う。


「クローンって言っても、普通の兄弟と変わらないんでしょう?」


「まあ、そうでしょうね。遺伝的にも、親の遺伝子から作られる訳だし」


 ジミ子がスマフォをイジりながら答える。おそらくクローンに関してのページを見ているのだろう。

 僕も何か情報を調べようかと思ったが、ちょうどキングがやって来た。



「いやぁ、まいった。みんな、おはよう」


 ちょっと困った顔をしながら、キングがテーブルに着く。


「妹ができておめでとう!」


 ミサキが何も考えず、お祝いの言葉を贈る。


「うーん。まあ、ありがとう」


 歯切れの悪い返事が返ってくる。キングはクローンに関して、あまり良い印象を持っていないのだろうか?

 僕は単刀直入に聞いて見る。


「やっぱり、クローンだと嫌なの?」


「いや、あまりに突然の話だったから、頭がついていけないだけだ。妹ができること自体は、悪くないと思う」


 すると、ヤン太がニヤけながらこう言った。


「妹ができると振り回されるぜ。これから大変だぞ」


「それはヤン太の所だけだろ? 俺はそんなに振り回されないと思うぞ」


 キングが冷静に反論をする。

 まあ、兄弟の関係は様々だ。ヤン太は妹に逆らえないが、僕は姉ちゃんに振り回されっぱなしだ。 ここら辺の力関係は、実際に暮らしてみないと、どうなるかわからない。



「まあ、どういう関係になるか分らないけど、クローンってどうやって作るの? 審査とか、手続きとかはどうなのよ?」


 ジミ子が現実的な話に戻す。するとキングはクローンの制度に関して、説明をしてくれる。


「何度か医者に通って、カウンセリングを受けて、心境が変わらなければクローンを作れるらしい。俺は気づかなかったが、両親は3度ほど医者に通って、OKが出たみたいだ。クローンは原則として両親の遺伝子のコピーだけど、意外とリクエストに応えてくれるらしい」


「リクエストって何?」


 不思議に思い僕が聞くと、こんな事を答えてくれる。


「遺伝的なかたよりを、ある程度は選択できるってさ。例えば、顔は父親で、声は母親似、運動能力は父親よりで、頭脳は母親より、とか色々リクエストを言えるらしい。もちろん、両親の思った通りに出来上がる訳じゃないらしいけどな」


 どうやら、ある程度の遺伝子操作をしてクローンを作れるようだ。宇宙人の技術に改めて感心する。



「そんな事まで指定できるのね。それで、キングの妹さんはどんな設定で生まれてくるわけ?」


 ミサキが聞くと、キングはこう言った。


「うちの両親には既にサンプルがある。まあ、サンプルとは俺の事なんだが。うちの両親は色々と設定が面倒くさいのか、俺の配合をベースにして、もう1体のクローンを作るらしい」


「へえ、じゃあ、そっくりなんだ」


 僕が言うと、こう答える。


「ただ一つ、違う点があるらしい。俺は昔はかなり太っていただろ? あまりに太ると、将来、成人病の恐れもあるらしいから、そこだけ『改善』をするらしい。太りにくい体質にするそうだ」


「太らないなんて、うらやましい……」


 ミサキがメガダブルチーズマフィンを食べながら、キングをにらむように見る。

 しかし、遺伝子をイジっても、ミサキぐらい食べれば、やはり太ってしまうんじゃないだろうか……



 ヤン太がちょっとなぐさめるように言う。


「基本的な遺伝子が同じなら、クローンでも気が合うんじゃないか?」


「いやぁ、でも、急すぎるな、不安だ」


 心配をするキングを、今度は僕が励ます。


「生まれてくるのは来年でしょ。そこから関係をゆっくりと、徐々に築き上げていけば問題ないよ。まだまだ時間があるんだから」


「うん、まあ、来るのは、おそらく1年くらい後で、来年になると思うんだが。クローンの設定年齢が15歳で、いきなり高校生として家にやって来るんだ」


「いきなり高校生で!」


 僕は驚いて、ちょっと大きな声を上げる。


「ああ、おそらく俺らと同じ高校に通うと思う。たぶん俺らの下級生の1年生として入ってくると思うんだが……」


 ヤン太も呆然ぼうぜんとしたような顔で答える。


「そうか、いきなり俺の妹と同い年か……」


 てっきり僕はクローンでも、小さな子供がやって来ると思い込んで居た。

 子供から育てて行けば、愛情や信頼をはぐくんでいけると思ったが、いきなり高校生か……


 大丈夫だろうか? 上手くやっていけるか不安になってきた。



 この後、僕らは兄弟の関係について色々と話し合った。

 とりあえず、来るのは来年らしいので、まだまだ準備の時間はあるはずだ。僕らはそんなに焦る必要はないかもしれない。

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