ガロアの夜明け 1

 僕らは期末試験を終え、ハンバーガーチェーンのメェクドナルドゥに向っていた。


 僕は、宇宙人が共同経営する『プレアデス星団グループ』の株価について、不安を感じている。『ほとんど利子を支払わない』『株を売るならどうぞ』『値段が下がっても気にしません』みたいな発言をしているのが気になっていた。



 メェクドナルドゥに着くと、真っ先にミサキが注文をする。


「ビックメェクセット。ポテトはLサイズにアップで。あとサイドメニューがわりにビフテキバーガーね」


「サイドでハンバーガーって何だよ、サイドはポテトだけで十分だろ。それにさっき飯をくったばかりじゃないか?」


 ここに来るのは、いつもは夕方だが、今日の授業は午前中のテストだけで、今はまだ午後の2時くらいだ。 思わずヤン太がつっこみを入れる。するとミサキはこんな言い訳をする。


「テストで体力を使ったのよ。しょうがないでしょ」


 まあ、今回、ミサキは勉強を頑張った。この位の事は大目に見よう。


「アップルパイをおごってあげようか?」


 僕がそう言うと、ミサキが笑顔で答える。


「うん、お願いね」


「まだ喰うのか……」


 ヤン太は完全にあきれていた。



 ハンバーガーを食べて一息つくと、今日の改善政策の発表が気になった。


 株価はどうなっているのだろうか?

 日経平均株価をチェックしてみると、マイナス300円と、少し下がってはいるものの、大した影響は無かったようだ。


 僕はひとまず安心をする。


「どうしたの?」


 ジミ子が僕の様子を見て、気になったようだ。


「いや、ちょっと株価が気になって。宇宙人が変な事を言っていたから」


「そういえばそうね。それでどうなったの?」


「日経平均がマイナス300円だね。あまり影響がないみたい」


 ヤン太が横から口を挟む。


「今までが酷かったから、まあ、この位なら大丈夫じゃないか?」


 確かに、これまでやった事を考えると、今回の発言は些細ささいな事に感じる。


「特に企業側の動きも無いみたいだぜ。ニュースは特に無さそうだ」


 キングがスマフォで検索をしたが、その手のニュースは無いらしい。

 僕が過剰な心配をしているだけらしい。



「そんな事より夏休みはどうする? 海に行く? 山に行く?」


 ミサキがスマフォの旅行のページを見せながら、僕らに意見を聞いてきた。


「俺は海が良いかな。思いっきり泳ぎたい!」


 ヤン太が海を選ぶと、ジミ子は山を進める。


「私は山がいいわ、川沿いの温泉宿なんてどう?」


「それは、ちょっと年寄りくさくないか?」


 キングの反論に、ジミ子はこう反論する。


「最近は、地方の温泉宿も、宇宙人の技術をつかったWi-Fiを完備していてゲームも快適よ」


「おっ、いいな、温泉宿」


 キングがジミ子の意見に、あっさり流された。


「私は、海の方が良いかな?」


 ミサキがちょっと考えながら答える。すると、ジミ子はこんな勧誘をする。


「川原でバーベキューとかどう?」


「いいわね。バーベキュー」


 食べ物に釣られ、よだれをすする音をさせるミサキ。

 さっきあんなに食べたハズなのに……



「ツカサはもちろん海だよな?」


 状況が不利になりつつあるヤン太が、僕に援護を求めてきた。


「僕はどっちでも良いよ。お金があるなら、両方とも行けばいいんじゃないかな?」


 そう言うと、ミサキがこんな事を言い出した。


「私達には空飛ぶ自転車があるじゃない。その気になればタダで海に行けるんじゃないの?」


 キングがすかさずスマフォで経路を調べる。


「一番近い海水浴場まで60キロあるぜ……」


「大丈夫よ。それは道沿いの距離でしょ。空を上を直線で飛べば短くなるわ。

 海だけじゃなくて、温泉宿へも自転車で行けば交通費がタダよ。その分を食事に回せるわ」


 ミサキがやや興奮気味に言うと、


「……夏休みまではまだ時間があるから、あとで計画を立てましょう」


 ジミ子が、保留という形で計画の先延ばしをする。

 もしかしたら、過酷な夏休みになるかもしれない……



 この後も、夏休みの予定について語っていると、時間がどんどんとすぎて行った。

 やがて夜になり、僕らは帰宅する。


 風呂に入り、食事を済ませて、久しぶりにネットを見て回る。

 するとジミ子からLnieでこんなメッセージが飛んできた。


「テレビ都京ときょうの『ガロアの夜明け』っていう経済番組で、プレアデス星団グループについて特集をするみたい。宇宙人の会社運営に興味があったら見てみたら?」


 僕は「ちょっと見てみるよ」と、メッセージを返し、気軽な気持ちでテレビの電源を入れた。

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