第21回目の改善政策 1

 正午を迎え、定例の改善政策の発表が始まった。

 福竹アナウンサーと宇宙人の二人が出てきて、いつもの番組が始まる。


「こんにちは、第21回目の改善政策の発表です。皆様、今日もよろしくお願いします」


「ヨロシクネー」


「さて、さっそくですが本題に入りたいと思います。今週はどのような改善がなされるのでしょうか?」


「今週はチョット『政策』とは呼べないネ。ワレワレが新たにサービスを提供するヨ」


「それはどのようなサービスなのでしょう?」


「ソレは、これネ」


 そういって宇宙人はテロップを出す。

 そこには『プレアデススクリーンの機能拡張』という文字があった。



『プレアデススクリーンの機能拡張』と言われて、僕は二つの機能が思い当たる。


 一つ目は姉ちゃんの使っていた機能だ。

 天気予報、メールの確認、カーナビ、スケジュール手帳など、一般的なスマフォにもあるアプリケーションの類いで、これはサービスが提供されても問題はないだろう。


 これらは携帯より、空中に現れる大画面の方が使いやすそうなので、むしろ率先そっせんして提供してもらいたい。



 そして二つ目に思い当たる機能が問題になりそうだ。それは僕らが遊んだ事のあるゲームの機能だ。

 もちろん、普通のゲームなら全く問題にならない、ところが僕たちは『ラブモンGO』という問題作を体験している。

 アレが世間に流出すれば、大混乱が待ち構えているだろう。



 僕の心配をよそに、福竹アナウンサーは淡々と番組を進める。


「ええと、『プレアデススクリーンの機能拡張』というと、どのような機能なのでしょう?」


「スマートフォンと同じような機能ネ、試しに画面を呼び出してみてヨ」


 宇宙人に催促され、福竹アナウンサーは自分のプレアデススクリーンを開く。


「さて、開きましたが、従来とはどこが違うんでしょう」


「右の方にメニューが追加されてるネ、『ニュース』『ナビゲーション』『メール』この三つネ。

 『ニュース』は天気予報、アト、購読している新聞があれば、その新聞はいつでも読めるネ。

 『メール』はスケジュール管理も付いているヨ」


「なるほど、便利そうですね。何か試してみても良いですか?」


「イイヨ、ニュースとメールはスマートフォンと操作が一緒だケド、『ナビゲーション』は使い方がチョット違うネ」


「分かりました、ではナビゲーション機能を使ってみたいと思います」



 福竹アナウンサーが『ナビゲーション』のボタンを押すと、かわいらしいデフォルメされたイルカのキャラクターが表われた、そして福竹アナウンサーに音声で目的地をたずねてくる。


「ナビゲーションシステムへようこそ、どこか行きたい場所はありますか?」


「ええと、特に目的はないのですが……

 そうですね、試しに近くの『明石駅あかしえき』へのナビゲーションを頼めますか?」


「分かりました、『明石駅』へ行く方法は『徒歩でおよそ15分』か『徒歩3分の人丸前駅ひとまるまええきから電車で乗り継ぐ方法があります』どちらにしますか?」


「15分くらいなら歩いて行けますね。電車代ももったいないので、ここは歩きでお願いします」


「了解しました、では、矢印の後に着いていって下さい」


 イルカのキャラクターがそういうと、福竹アナウンサーの2メートルほど先に、30センチほどの光の矢印が空中に現れた。


 この矢印がナビゲーターだろう。

 福竹アナウンサーが試しに矢印の後を追いかけると、その分だけ矢印は前に進む。

 この矢印の後を追いかけていけば、そのうち目的地に着くだろう。


「これは分かりやすいですね。従来の地図だと細かな路地が分かりにくかったり、行き過ぎてしまう事もあるのですが、これなら大丈夫です。それに音声入力なので、機械の操作が苦手なお年寄りも、安心して使えそうですね」


「ソウデショ、便利でショ」


「ええ、ところで、このイルカ、ナビゲーションが始まるともう要らないですよね、消せないんですか?」


 イルカのキャラクターは空中をフヨフヨと漂い、福竹アナウンサーの隣に居座っていた。


「消せないネ、ソウイウ仕様ネ」


「そうですか。まあ、仕様なら仕方ないですね」


 あのイルカは邪魔でしかなさそうだが、福竹アナウンサーは何故か納得をしてしまう。



 僕がイルカを消せる方法を考えて居ると、宇宙人はとんでもない事を発表する。


「それと、このシステムでゲームも出来るようにしたヨ。この惑星の住人はゲームが好きでショ」


「へえ、ゲームですか。たしかに面白そうですね。それにプレアデス星人の方がどんなゲームを作るのか気になります」


「残念だケド、サンプルに作成したゲームは、この惑星の住人のアイデアから制作したネ。著作権フリーのデーターだカラ、みんなで遊んで欲しいネ」


 ……これは大変な事になった。

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