第20回目の改善政策 1
そんな中で、第20回目の改善政策の番組が始まろうとしている。
僕らはいつもの様に教室で待機して、テレビを見ているのだが、ミサキがちょっとソワソワと落ち着きがない。上手く行けば、なんらかの手当が貰えるのではないかと、良からぬ期待しているように見える。
しかし、もしアホ毛の人に手当を与えるなんて事になったら、国の財政は大丈夫だろうか?
日本はまだアホ毛の人数が少ない方だが、国によっては傾くくらいのお金が吹っ飛ぶ可能性もある。
今日の発表の内容は、とても不安だ。
正午の時報が鳴ると、福竹アナウンサーと宇宙人が画面に映り、番組が始まった。
「はい、第20回目の改善政策の発表です。皆さん、今日もよろしくお願いします」
「ヨロシクネー」
「今週の政策の発表の前に、ひとつ質問をしてもよろしいでしょうか?」
「イイヨ、何でも聞いてネ」
「先週、テストに落ちた人をアホ毛にしたじゃないですか」
「ソウネ、アホ毛にしたネ」
「その後、アホ毛の人達が『AHG共生団体』という団体を作り、援助を求めている声は届いていますか?」
「秘書から聞いているネ。生活保障や介護などの援助が必要とか聞いてるヨ」
「そうですか。ではこのAHG共生団体に対して、今後の対応はどうするんでしょうか?」
「ソレが今週の改善政策の内容ネ。ワレワレはアホ毛の社会的支援を行なうヨ」
宇宙人が驚きの政策を挙げた。どうやらAHG共生団体の要求を受け入れるようだ。
まさか、AHG共生団体の要望が通ると思っていなかった福竹アナウンサーは、慌てて宇宙人から詳細を聞き出そうとする。
「ちょっと待って下さい。彼らの知能は変わってませんよね? それでも援助するのでしょうか?」
「ソウネ知能は変わってないケド、社会的弱者は支援しないと駄目ネ」
「まあ、そうかもしれませんが。本当に彼女らは社会的弱者なのでしょうか?」
「ソコデ、確認の為にアンケートを取るネ。これからの表示する質問に答えてネ」
そういうと宇宙人は手で合図を送る。
僕らの前に、アンケート画面が表示された。
画面には、こんな質問が書かれている。
『私は自立して生きていけないほど、知能が悪い 【はい】・【いいえ】』
なかなか酷い質問だ。
僕はもちろん『【いいえ】』を選択する。クラスのみんなも、すぐに同じ回答をした。
こんな問題に考えて答える必要はないのだが、一人だけ悩んでいる人物がいる。ミサキだ。
ミサキは画面を見ながら
この場面で『【はい】』を選択すれば、もしかしたらお金が入ってくると思っているのだろう。
時間を掛けて考えていたが、さすがにマズいと感じたのか、ちゃんと『【いいえ】』を選択していた。
しばらくするとアンケート結果がでてくる。
ほとんどのアンケートの結果は『【いいえ】』だったが。
『【はい】』の選択肢を選んだ人が116万人居た。かなりの数に思える。
「ちょっと待って下さい。こんなに居るんですか?」
福竹アナウンサーが悲鳴に近い声を上げた。
「ソウネ、コレだけ居るみたいネ」
「ええと、もし、もしですよ。一人、月額10万円を援助するとなると月額1060億、年で1兆3920億になります。大丈夫でしょうか?」
さすが福竹アナウンサー。金の計算は非常に早い。
「ソノ計算だとそうなるネ」
宇宙人は居たって冷静に返事をする。
ここで僕は先日の演説を思い出す。
たしか『2万6千円』『8万円』『6万円』とか金額を並べていた、AHG共生団体の要望をそのまま受け入れた場合は、最悪の場合は月10万円でも足りないかもしれない。
手当の金額が気になり、ハラハラと心配している福竹アナウンサーを横に、宇宙人はこう言った。
「ソンナニ心配しなくてもイイヨ、ワレワレは最高の援助をするからネ」
宇宙人は筋ちがいの気配りをしてくれる。違う、福竹アナウンサーの心配している所はそこではない。
福竹アナウンサーの不安をよそに、番組は続く
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