第18回目の改善政策 1

 改善政策の発表の日、僕らはのんびりと食事をとり、正午を迎えるのを待つ。

 やがてテレビに宇宙人と福竹アナウンサーが写り、いつもの番組が始まった。


「みなさまお元気でしょうか、第18回目の改善政策の発表会です。今日もよろしくお願いします」


「ヨロシクネー」


「さて、早速ですが、今週の改善政策の発表は何でしょう?」


「チョット待ってネ、まずは先週の問題点を言うヨ」


「先週? 先週の改善政策で何か問題が出たのでしょうか?」


 先週の改善政策の内容は、レオ吉くんが動物ノ王国の派遣会社を作るという話しだった。

 もしかして致命的な問題でも出たのだろうか? 上司は姉ちゃんだし、とても不安だ。



 宇宙人は心配をよそに淡々と話しを進める。


「先週の派遣会社の設立は覚えているカネ?」


「ええ、動物ノ王国の住人を派遣するという話しでしたよね」


「ソウネ、それでね、問い合わせがいくつか来たんだけど酷いのヨ」


「どのように酷いのです?」


「『動物だから最低賃金を守らなくてイイよネ』トカ、『時給200円くらいで雇える』トカ、『タダで使えるの?』トカ、無茶苦茶ダヨ」


「あっ、それはたしかに酷いですね」


 福竹アナウンサーが本当に申し訳なさそうに謝る。人間より多少は安くてもしょうがないかもしれないが、この時給はあまりに酷い。


「コレって、知能的には人間とほとんど変わらないのに、おかしくナイ?」


「まあ、はい。おかしいですね」


「人間の知能ってそんなに高いのカネ」


「私は進化した動物と大して変わりないと思いますが、世間では動物よりは高いと思い込んでいる人が多いかもしれませんね」


 福竹アナウンサーがかなり厳しい言い訳をする。

 僕らはレオ吉くんと交流があり、人間となんら変わりが無い事を知っているが、世間では知能の上がった動物よりも頭が良いと思い込んでいる人は多いのかもしれない。


「ソコデ、コレネ」


 宇宙人はあらかじめ用意しておいたテロップを取り出した。



 取り出したテロップには『知力テストをするヨ』と書かれていた。


「テストですか?」


「ソウネ、人間が最も知能が高いというナラ、まずそれを証明すれば良いじゃナイ」


「まあ、たしかにそうかもしれませんが、これはどういった人達を対象にするのでしょう? 動物ノ王国の住人を雇う人間が対象でしょうか?」


「違うネ、ほとんどの人間が対象ネ」


「ほとんどですか?」


「ほとんどネ、働く事の出来る人間が対象だからネ。この国だと高校生以上は働けるカラ、高校生以上の人間はテストを受けてもらうヨ」


「なるほど、テストはどのような内容なのです?」


「今回は簡単な問題だネ、一般常識の範囲内にする予定ダヨ」


「簡単なのはうれしいんですが、そんなに簡単で良いんですか?」


「イイネ、ある種の選別せんべつの為のテストだからネ」


「選別ですか…… ちょっと気になる言葉ですね。もしかして、テストの成績が動物ノ王国の住人と比べて悪かったら、何か罰則のような物はあるのでしょうか?」


「罰則はあるネ」


「それはどのような罰則です?」


「テストを受けて、動物ノ王国の住人より知能が低いと判断した場合ハ、ワレワレが頭をイジるネ」


「えっ…… 頭をいじる……」


 宇宙人はとんでもない事を言い出した。

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