占いと種類 2
Lnieの『プレアデスのお告げ』という怪しげなグループ会話に入ってから、しばらくすると『お告げ』が下された。
『13分後、震度2の地震がやって来るでしょう』
そして13分後、弱い地震が訪れた。地震速報を覗いてみると、確かにこの地域の震度は2だった。
ミサキはこの事について、
「占い、凄いね、当ったね」
と喜んでいたが、僕らはそうとは感じない。
これは『占い』や『予言』といったものより、科学的な観測による『予測』の気がする。
まあ、『予測』も『お告げ』も『未来の予知』という範囲には入るのかもしれないけど……
その後、この『プレアデスのお告げ』のシステムは、突然の雨と近所の渋滞情報を『占い』や『予言』として発信してきた。
放課後、僕らはこれらの『占い』について話し合う。
「これ、『お告げ』でも『占い』でも『予言』でもなんでも無いわよね」
ジミ子が冷静に言い放つ、それに答えるヤン太。
「そうだな、単なる予測とか予報の類いだよな」
「うん、私もそう思う」
さすがにミサキも気がついたようだ。
これらの『予想』をオカルトめいた『予言』というのは無理がある。
これは、姉ちゃんが占いの概念を上手く説明出来なかったのか、もしくは、そもそも宇宙人には『占い』の概念に近いものが無いのかもしれない。
ちょっとガッカリしていると、キングがこう言った。
「でも、これはこれで便利じゃないかな?」
「確かにそうだね、雨の予報とかは助かるよ」
僕がそう言うと、みんなのスマフォが震えた。
スマフォを取り、何のメッセージが送られて来たのか確認をする。
すると、例の『プレアデスのお告げ』のシステムユーザーから、
『お褒めの言葉、ありがとうございます。何か他にお役に立ちそうな出来事があればリクエストして下さい。分かる範囲で予言をします』
と、メッセージが送られて来た。
僕の言葉に反応したという事は、どこかでこの会話が盗聴されているのだろう。
気味が悪いが、ミサキ達は全然気にしていないようだ、何を予言して貰おうか真剣に考えている。
ミサキが悩んでいると、キングが何かを思いついたようだ、こんな事を言った。
「ところで地震の予測はどの程度出来るのかな?」
『大小様々な地震を予測する事が出来ます。小さい地震は難しいですが、大きな地震なら、およそ10日ほど前には予言できますね』
「なるほど。ちなみにその地震の予測はどこかに報告しているのか?」
『ええ、大きな地震は、その国の政府には報告をしております』
「それじゃあ安心だな。犠牲者が出なくなりそうだぜ」
ちょっと安心した様子のキング、だが『お告げ』のシステムは衝撃の事実を告げた。
『ただ、いくつかの政府は、この事実を国民には伝えませんでした。国民がパニックに
「あっ、そうなんだ……」
僕は宇宙人が来てから起こった地震を思い出す。
うん、確かに、あの国とあの国は国民に事実を
僕とキングが言葉を失っているとヤン太がこんな事を言った。
「何か大事件は起こらないのか?」
するとこんなメッセージが流れてくる。
『今日、ニュースでトップを飾るのはA社の粉飾決算のニュースですね。ちなみに私の予言だと、会社はこのまま倒産しそうになりますが、倒産直前で他の国の企業に買収されますね』
「お、おう。大変だなそれは」
粉飾とか倒産とか、ヤン太はあまり興味なさそうだが、もしかしたらこの情報は凄い価値のある情報かもしれない。
未成年は基本的には株はできないが、もし株取引ができれば、一儲けできていただろう。
このシステムが、お金儲けに直結しそうな事を感じたジミ子が、こんなストレートな質問を投げる。
「何か私の利益になる予言はないの?」
その質問には、こんな『お告げ』が返ってきた。
『ジミ子さんがいつも飲んでいる紅茶が隣町のスーパーで、半額セールで販売されます。お一人様2パックまでです』
「……確かに安いわね」
今までのスケールとは桁違いの、極めて少ない利益の『お告げ』がなされる。
もっと得るものが大きければ良いのだが、隣町まで出かけて行って、この利益だと交通費で損をしそうだ。 自転車なら利益は出ると思うけど……
もしかしたらこのシステムはポンコツかもしれない。
僕がそんな事を考えていると、ミサキがようやく意見が決まったらしい。こんな事を言う。
「私に訪れる災難を教えて」
極めて占いらしい質問をする。
もし災難が来ると分かっていれば、その災難を避ける事が出来るかもしれない。
この『予言』が出来るとすれば、このシステムは価値のあるものだと言えるだろう。
僕らはこのシステムが『災難を予言』できるのか見守る。
しばらくすると、こんなメッセージが流れてきた。
『ミサキさんは、英語のテストで24点を取り、追試を受けます』
「…………」
ミサキは言葉を失った。
「まあ、災難といっちゃ災難か」
ヤン太があきれたようにつぶやいた。この災難の内容には僕らも納得する。
ミサキはこの予言に打ちのめされたと思ったのだが、次の瞬間、何かを思いついたようだ。不適な笑みを浮かべ、予言システムにこんな質問をする。
「私が英語のテストで低い得点なのは分かったわ。でも、この未来は変えられるの?」
『まじめに勉強すれば変えられます』
もっともな答えが返ってくる。するとミサキはこんな質問を投げかけた。
「じゃあ、まじめに勉強するから、問題を教えてちょうだい」
なんと予言システムに問題の予想をさせるつもりだ。
問題が分かれば英語が苦手なミサキでも、高得点が取れるだろう。なかなかずるいアイデアを思いつく。
そして、しばらくすると予言システムからメッセージが返ってくる。
『今回の英語のテストの範囲は教科書の32ページから67ページです、この範囲を勉強してください』
「……なによこの予言は、役に立たない」
ミサキは言葉を失った。どうやらインチキは出来ないらしい。
ちなみにこの後、ミサキは真面目に勉強をする事もなく、英語のテストは24点を取った。
かなり正確な予言のシステムだが、このシステムは人によっては役には立たないかもしれない。
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