占いと種類 1

 朝の登校の途中に、ミサキが微笑みながらこう言った。


「今日のテレビの占いランキングで、私の星座が一位だったよ。今日は何か良い事が起こるかも」


 僕の見たテレビでは、たしかミサキの星座は6位か7位くらいと微妙な順位だった気がしたが、あまり余計な事は言わない方が良い。


「そうなんだ、よかったね」


 と、軽く話題を聞き流しておく。


 そして、その日は特に良い事が起こらずに終わった。



 次の日、ミサキが落ち込みながらこう言った。


「今日のテレビの占いランキングで、私の星座が最下位だったわ、今日は良くない事が起こるかも……」


 僕の見たテレビの番組では、たしか3位くらいだったが、この結果を知って調子に乗られても困る。


「そうか、今日はジッとしていた方が良いかもね」


 そういって、適当に返事をしておく。


 この日も特に不幸な出来事は起こらず、一日が過ぎていった。



 さらに翌日の朝、ミサキはこう言った。


「今日の運勢のランキングは、4位で良い方だけど、もう占いは信じない」


 本当に占いを信じていなければ、テレビのラインキングをチェックしないはずだと思うのだが……

 まあ、あまり当てにならないという事は確かだろう。


「まあ、そうかもね」


 僕はいつもの様に聞き流しておく。



 この日の昼休み、ミサキがみんなにこの話題を振った。


「ちょっと聞いて、占いが当らないのよ」


 すると内容を聞く前に、ヤン太が話題を切り捨てる。


「占いなんてそんなものだろ」


 まあ、確かに元男子はこういった事に興味はない。

 テレビなどで流れてくればチェックするかもしれないが、わざわざ手間を掛けて調べる人は少ないだろう。

 この反応はヤン太だけでなく、僕とキングも似たような感じだった。

 ジミ子は女子だが、占いに興味が無いのかスマフォをいじっている。



 しばらくして、元男子があまりにも興味なさそうにしていると、ジミ子がこの話題に対して話を切り出した。


「私の星座は『天秤座てんびんざ』なんだけど、ちょっとコレを見て」


 そういってスマフォを差し出す。


 スマフォには、『今日の天秤座は3位』という結果が出ていた。


「それで、こっちのサイトを見てよ、あとここも」


 こんどは別のサイトを見る、するとそこには『6位』と『8位』という数字が。


「どれが正しいと思う?」


 その質問にミサキは答える。


「一番、順位の高いヤツ」


 なるほど、ミサキは自分に都合の良いやつを信じるようだ。

 その一方でジミ子は論理的な説明をする。


「どれも正解よ、この最初のヤツは純粋な『西洋占星術』次のは『九星気学きゅうせいきがく』の理論を追加したもの、最後のは『四柱推命しちゅうすいめい』の計算を取り入れた独自の星座占いよ」


「なに? それ?」


 ジミ子は占いの種類を説明したのだが、ミサキにはさっぱり分からないようだ。僕でも『四柱推命』という名前くらいは聞いたことがある。


「これは占いの仕方の種類よ、それぞれの計算方法があって、それぞれ答えが違うの」


「どれが正解なの?」


「だから占いの答えはどれも正解よ」


「???」



 ミサキはまるで分かっていないようだ。そこにジミ子の新たな解説が始まった。


「一日のうちに、『良い事』も『悪い事』もあるわよね」


「まあ、あるわね」


「一つ目の占いで『良い事』が当って、二つ目の占いで『悪い事』が当ったとするじゃない、そうなると両方とも当った事になるでしょ」


「そうね、両方とも正しいわ。もしかして今まで外れてたと思っていたのは、私の考え方が間違っていたのかも。やっぱり占いって正しいのね」


 そこまで言うとジミ子は冷静な声であっさり否定した。


「いや、本当に占いが当っていれば正しいけど、ほとんどは当らないじゃない。

 的中する精度が低すぎるわ、せいぜい10回に1度くらいしか当らないでしょ」


「ま、まあ、そうかもしれないけれど……」


 ミサキがちょっとションボリとする。するとジミ子がドヤ顔をしらがらこう言った。


「人類の占いだと精度が低すぎるのよ、人類だとね。でも宇宙人だとどうかしら?」


 宇宙人? もしかして宇宙人にも占いがあるのだろうか?


「ちょっとコレをみて」


 ジミ子がスマフォを差し出す。

 そこには姉ちゃんとLnieのやり取りが映し出されている。


『宇宙人に占いとかあるんですか?』


『ちょっとチーフに聞いて見るね。

 ええと、占いの概念がいねんの説明がちょっと難しかったんだけど、未来予知のおげの様なシステムはあるってさ。その気があるなら、ちょっと使って見る?』


『よろしくお願いします。出来ればツカサくん、ミサキさん、ヤン太くん、キングくんにも使えるようにして下さい』


『分かったわ、お告げが何か出たらLnieのグループ会話に流れるようにしておくわ』


 そんな会話がなされていた。



 しばらくすると、Lnieに『プレアデスのお告げ』というグループ会話のお誘いが来る。

 僕らはその、怪しげなお誘いに乗ることにした。

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