会社概要

 レオ吉くんとの別れの日の放課後、僕らはどこかに行こうとしたのだが、どこだってドアから姉ちゃんがやってきて、レオ吉くんを連れて行ってしまった。


 これから挨拶回りらしい。

 ちょっと不安そうなレオ吉くんだったが、姉ちゃんが何とかしてくれる事を願おう。



 僕らはレオ吉くん抜きで、いつものハンバーガーチェーンのメェクドナルドゥに向った。

 メェクドナルドゥにつくと、お決まりのメニューを注文して、席に着く。


 話題に上がるのは、もちろんレオ吉くんの事だ。

 一緒にいた期間は、ほんの一週間ほどだが、かなり古くからの友人に感じる。


「レオ吉くん、今頃なにをしているかな?」


 ミサキがポテトを食べながら言う。その質問にジミ子が答える。


「挨拶回りって言ってたじゃない」


「大丈夫かな、アイツ一人で……」


 ヤン太が心配そうに言った。


「だ、大丈夫だとおもうよ。たぶん」


 僕が根拠の無い後押しをする。

 ……おそらく平気だと思いたい。



 不安なのはどうやらみんなも同じようだ、しばらく黙ったあと、キングが話題を切り出した。


「そうだ、レオ吉くんのcompany会社はどんなcompany会社なのかな? 調べてみようぜ」


 そういってスマフォを調べる。


 すると、姉ちゃんの会社のページのリリースニュースにレオ吉くんの会社が載っていた。


「みんなで見てみようぜ」


 キングのスマフォを全員がのぞきこむ。


 リリースニュースの記事を最初は、レオ吉くんの挨拶だ。

 先日の改善政策の発表会でやったものと同じだった。


 ちなみにこの挨拶は文章だけのものだ、写真くらいは載せてほしい。



 記事を読み進めて行くと、どういう事業内容なのかが載っている。


『新聞配達から老人ホームなどの介助犬から、タレントの芸能分野まで幅広く取り扱っております』


 と、参考にならないほど幅広い業務が書かれている。


「なんでもやっているようね」


 ジミ子がちょっとあきれた口調で言った。


「おっ、次に実際の事業例が載っているぜ」


 キングが更に記事を進める。


 するとそこには老人ホームで介助を行なうゴールデンレトリバーの姿があった。

 記事を読むとロボットと二人一組で派遣されているらしい。


 ロボットは命令されれば動くが、命令されなければ動かない。自発的に動く事は無いので、例えば布団がずれて居てもそのまま放置するらしい。もちろん命令があれば直すが、寝ている時はそうはいかない。布団は乱れたままとなる。


 そこで寝る前に『布団を直せ』と命令をしておく。だが、これはこれで問題がある。暑くて寝苦しい時に布団をはねのけると、ロボットは律儀にそれを直し、再び蒸し風呂状態にするようだ。もちろん、これは命令を解除するまで延々と繰り返される。


 もちろん、発汗や体温などをとらえるロボットの高性能のセンサーを使えば、完璧に対応が可能だが、このセンサーを使用すると、ロボットの時給が跳ね上がるらしい。経営者のほとんどは、この機能を使わず最低賃金で使い倒したいようだ。


 ロボットは命令された対応しかしないが、動物ノ王国の住人は違う。

 暑くて寝苦しそうにしていれば、布団を薄手のものに、寒そうにしていれば追加の布団を持ってくる。


 あと、ロボットはどうしても会話相手にならないらしい。

 話しかければ答えるが、その答えのほとんどは『はい』か『いいえ』のどちらかだ。これで話しを続けるのは不可能に近い。


 動物ノ王国の住人は、その愛らしい姿もあって話しやすいらしい。

 もちろんロボットとは違い、人間並の受け答えが出来るので会話も続く。



 老人を介助している写真の下には、次のようなキャッチコピーがあった。


「話して良し! 気づかい良し! 湯たんぽにしても良し!」


 次の写真には、おばあさんの膝の上にのっている猫の写真があった。

 たしかに湯たんぽの代わりにはなるだろうが、そんな事の為に人材を派遣をするのはどうなのだろう?


 動物ノ王国の派遣業について、不安を感じたが、まともな派遣事業も紹介されていた。


 猫や小型犬による、狭い場所での配線工事。

 犬などの鼻の良い人材の、臭いによる品質チェック。

 車の入って行けない場所への、馬の運搬業務など。


 人間にはちょっと難しそうな、動物ならではの派遣業務が書かれている。


「これならやっていけそうだな」


 ヤン太がちょっと安心をしながら言う。


「そうね、大丈夫みたいね」


 ジミ子も納得の様子。


「私、冬になったら絶対に湯たんぽの派遣を雇う!」


 ミサキが興奮しながら言う。


「じゃあ、お金を貯めておかないとね」


 僕が忠告をする、なにかとミサキは無駄遣いが多い。



 僕らが無駄話をしている間にキングが記事を読み進める。

 すると、最後にこんなリンクがあった。


「『動物ノ王国、タレント名鑑』ってあるぜ、どんなタレントがいるのか見てみるか?」


「うん、見てみよう」


 ミサキが真っ先に反応をする。


 動物の写真を見てもあまり意味がないかもしれない。なぜならば僕らは区別がつかないからだ。

 違う種類や毛色が違うならすぐに分かるが、顔つきだけで区別がつけられるとは思えない。


 とは言え、どんな人材が居るのかは気になる。

 僕らは『タレント名鑑』をのぞきこむ。するとそこには見た顔があった。


『タレントNo.000001 国王 レオ吉』


 なんとレオ吉くんがトップに載っている。


「これは……」


 僕が何か言おうとするが、言葉が出てこない。


 後でレオ吉くんにLnieのメッセージを送り、この事を聞いてみると、


『えっ、知りません。どこに載っているんですか?』


 と、逆に質問が来た。

 姉ちゃんが無許可で掲載してしまったようだ……


『レオ吉くん、頑張って』


 僕らは、そうメッセージを送るしかなかった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る