第15回目の改善政策 1

 第15回目の改善政策が始まった。

 福竹アナウンサーと宇宙人が出てきて挨拶をする。


「はい、今週も始まりました、第15回目の改善政策です」


「ヨロシクネ」


「さて、今週ですが、どのような改善政策が発表されるのでしょうか?」


「今週は新製品の発表ネ」


 すると福竹アナウンサーの目つきが変わる。おそらく値下げをするつもりだろう。

 宇宙人はそんな福竹アナウンサーを警戒することなく、いつも通りに番組を進める。



「新製品はこれネ」


 宇宙人が差し出した物は、高さ70cm、幅30cm、奥行き20cmほどの黒っぽい金属の箱に、自転車のサドルとペダルとハンドルの付いた物だった。


 福竹アナウンサーは何の製品だか分からないようだ。


「なんでしょう、これは? ペダルと椅子があるので、フィットネス用のエアロバイクでしょうか?」


 僕らは乗ったことがあるから分かったが、あれは空飛ぶ自転車だ。ジミ子のコストカット案を姉ちゃんが受け入れて、あられのない姿になってしまった。やはり車輪が無いと別物にしか見えない。


「コレは自転車ネ、試しに試乗してみてヨ」


 そういうと、スタッフがヘルメットと、船などで使うライフジャケットのようなプロテクターを持って来た。

 スタッフに差し出され、言われるがままに安全装置を付ける福竹アナウンサー。


「さて、これでこの自転車のような物に乗れば良いのですか?」


 福竹アナウンサーが自転車にまたがると、宇宙人はこう言った。


「ソウネ、試しに展望台から飛んでみてヨ」


「えっ、何を言ってるんですか?」


 動揺する福竹アナウンサー、まあ当然だ、宇宙人は『空を飛べる』という事を一言も説明していない。


「ココにその自転車のリモコンもあるネ、ちょっと強制的に進ませて見るネ」


 そういうと、宇宙人はリモコンの操作して福竹アナウンサーの乗っている自転車を展望台の窓の方へと進ませる。


「ちょ、ちょっと、待って、めて! めて!」


 福竹アナウンサーの悲鳴もむなしく、自転車は展望台の開いている窓から外へと飛び出した。


「イヤあぁぁぁ…… あれ? 浮いてますね?」


「ソウネ、空飛ぶ自転車だからネ」


「……そういう事は最初に言って下さい」


「マア、気にせずちょっと漕いで見てヨ」


「……分かりました」


 ペダルを漕ぎ出すと、優雅に自転車は進む。

 福竹アナウンサーはふてくされた顔をしていたが、青い空の中、すぐに笑顔へと変わった。


「これは楽しいですね。そよ風が心地よいです」


「安全装置も付いているからネ、ちょっと自転車から飛び降りてネ」


「……大丈夫なんですよね?」


 宇宙人に確認をする福竹アナウンサー。


「大丈夫ダヨ、そのまま飛び降りてネ」


 少し間を置いて、福竹アナウンサーは決心をしたようだ。


「では行きます、えい!」


 かけ声と共に自転車から飛び降りる。すると身につけているプロテクターがブゥンとうなり、福竹アナウンサーはゆっくりと下降して行く。ちょっと遅れて無人になった自転車も、やはり同じくらいのスピードで下降を始めた。


 かなり長い時間をかけて、やがて着地をする。

 下にはカメラが待ち構えていて、さっそく感想を視聴者に伝える。


「ふう、怖かったですが、なんとか無事に着陸できました。この自転車は極めて乗り心地がいいです。振動などが全くありませんでした。安全装置のプロテクターも快適で、特に締め付けなどは感じませんでした」


 僕も乗ったことがあるから分かる。あの自転車の乗り心地を味わうと、もう普通の自転車には戻れないかもしれない。


 レポートが一通り済むと、福竹アナウンサーはエレベーターで再び宇宙人の元に戻った。



 宇宙人の元へと帰った福竹アナウンサーは、開口一番、こう言った。


「さて、この商品はおいくら何でしょうか?」


 自分が酷い目にあった事をそっちのけに値下げ交渉を開始しようとした。

 宇宙人はひとまず、それを制止する。


「チョット待ってネ、この自転車の開発への経緯を説明させてヨ」


「分かりました、では手短にお願いします」


 やや興奮ぎみの福竹アナウンサーをよそに、淡々と宇宙人の説明が始まった。

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