ギルド戦 1

「はぁ、また増えたのかぁ~」


 ため息交じりにキングがなげく。


「どうしたの? どうせまたゲームの事でしょ」


 あまり関心がなさそうだが、ジミ子が詳細を聞き出そうとする。


「その通り、Gameゲームの事なんだけどさ、またうちのギルドのメンバーが増えたんだよ」


 ジミ子はいまいち訳が分からないようだ、さらに質問を重ねる。


「仲間が増えるのは、良い事なんじゃないの?」


 たしかにジミ子の言う通りだ。ゲームは仲間の数が多いに越したことはない。

 キングが嫌な顔をしている理由にはならないだろう。


「いや、それがさ、このゲーム、週に一度、ギルド戦って言って、プレイヤーのギルド同士が戦うんだけど、それが問題なんだよな」


 なんでキングが嫌がるのか僕も理解ができない、これは詳しく話しを聞かないといけないだろう。

 


「ギルド同士の戦いなら、人が多い方が有利でしょ? なんで憂鬱ゆううつそうなの?」


 僕がキングに質問をすると、横からジミ子が鋭い意見を言う。


「わかった、初心者で戦いの場では使い物にならないんでしょ?」


 確かに、ある程度はゲームの腕前がないと、こういったプレイヤー同士での戦いでは意味がないかもしれない、場合によっては足手まといになる可能性もあるだろう。


「いや、今回加入した人は、結構な腕前の人だよ。有名人で俺も名前は知ってるし」


 予想外の答えが返ってきた、ますます憂鬱な理由が分からなくなった。


「理由がまったくわかんねー、なにがそんなに不満なんだよ?」


 ヤン太が話しが進まず、しびれを切らした。するとキング分かりやすく答える。


「ギルド戦ってヤツは団体戦で、俺がやってる場所サーバでは200人ぐらいが戦うんだけど、バランスが極めて悪いんだ。うちの勢力が130人くらいで過半数を超えている、ギルド戦で得られる利益を独占して、もはや敵無しの状態だ」


「別に独占できてれば良いんじゃないの?」


 ジミ子が理由が分からないようだが、僕とヤン太はキングが不満な理由がわかった。


「戦闘が起こらないんだね」


 僕がそう言うと、キングがうなずく。


「そうなんだ、強くなり過ぎて戦闘が起こらなくなってしまった。しかもまだウチのギルドの勢力が拡大し続けている。ますます戦闘がおこらない状況だ」


「なんでそんな風になっているの、原因は?」


 ミサキがあまり興味なさそうに聞いてくる。


「うーんそれが不明なんだよな。考えられる理由としては、利益を独占してるから、それを目当てに人が集まっているくらいかな?」


「それが原因なら、そのギルドを抜けて、他の小さなギルドに移るしかないんじゃないかな」


 僕が打開策を提案すると、キングは悩みながら、その案を受け入れた。


「そうだな、戦闘が全く起こらないから一時的でも別のギルドに移るか。まあ、これで問題解決だな、ありがとう」


 この問題はこれで解決したように思えた。



 しかし、翌週、またキングが頭を抱えてこう言った。


「ギルド戦で戦闘が起こらなかったんだ……」


「えっ、どうして? ギルドを移動したんじゃなかったの?」


 僕が疑問を投げかけると、キングが詳しい事情を話してくれた。


「ああ、俺は所属するギルドを変えた、そしたら元のギルドのメンバーのほとんどが着いてきてしまって、新しい強大なギルドが出来てしまったんだ……」


「つまり、ギルドの名前が変わっただけで、状況は変わっていないと」


「その通りだぜ。ああ、なんでこんな事になってしまったのか……」


「原因を分析してみれば?」


 ジミ子が建設的な意見を言うが、キングはいまいち理由が分からないらしい。


「うーん、とくに理由はなさそうなんだが……」


 僕が思いついた事をキングに質問する。


「そういえば、いつ頃からギルドの勢力のバランスが崩れ始めたの?」


「2~3週間くらい前かな、急に勢力図が変わった気がする」


「意外と急だね、他の場所サーバでそう言った話しはあるの?」


「いや、全く聞かないな、ウチの場所サーバだけの現象っぽいぜ」


「うーん。もう一度、ギルドを移るしかないんじゃないの?」


 他に思いつかないので、僕が再び同じ提案をする。


「そうか、まあそうだよな。もう一度、移ってみるぜ」


 これで大丈夫だと思ったのだが、二度ある事は三度ある。

 翌週になって、再びキングがこう言った。


「戦闘が起こらなかった……」


 いったいそのゲームはどうなっているんだろうか?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る