ギルド戦 2

 キングがゲームの事で悩んでいる。その内容は、所属しているギルドに人が集まりすぎて、強くなりすぎて戦闘が起こらないというものだった。


 僕はキングに最大の人数を誇るギルドの脱退を進める。ある程度、勢力が分散すると戦闘が起こると思ったからだ。

 しかし、僕の予測は外れてしまった。キングが移籍した弱小ギルドに、前のギルドからほとんどの人が移動してきて、また強大なギルドが出来上がってしまったからだ。



 僕は何故、そんな事になってしまったか話しを聞いてみる。


「なんでキングに着いて、ギルドを移動したのか分かる?」


「ウーン、それが分からないんだ。考えられる理由は、俺の知り合いが何人か着いてきて、そのプレイヤーがゲームが上手いから、その人達について更に移動してくる。くらいかな?」


「なるほどね」


 僕は納得した。次にジミ子が質問をする。


「勝ち馬に乗りたいんじゃないの? 利益の分配もあるんでしょ?」


「ウーン、まあ、そうかもしれないけど、ギルド員が多いから、配られる利益は、そんなに多く無いんだよな」


 するとヤン太がポツリとつぶやく。


「利益が無くても、勝つ方に着きたいのかもな」


「まあ、それもあるかもな」


 キングもとりあえず同意をするが、やはりいまいち理由が分からないらしい。



 真相が分からず、迷宮入りになりそうになった時、ミサキが別の角度から質問をしてきた。


「ところで、ギルドを移る時はどうしてるの? だれかに報告してるわけ?」


「昔からのゲーム仲間には、Lnieのチャットで知らせているかな。あとはトゥイッターでインターネット上につぶやくくらいかな」


「なるほどね、ちょっとトゥイッターの様子を見せてよ」


「いいぜ、ほら」


 そういってキングはミサキにスマフォを渡した。

 スマフォを受け取ったミサキは驚く。


「ちょ、ちょっとフォロワァーが2000人を超えているじゃない」


「そうなんだ、最近、増えてきて、俺もビビってる」


「実況中継の動画とかやってたりする?」


 僕がキングに質問をする。もし動画配信とかしていたら謎は解けたも同然だ。人気の実況者に付き従う視聴者も多いだろう。

 だが、残念ながら答えは違った。


「いや、動画配信とかには手をだしてないぜ、そういったアカウントも取得していない」


「そうなんだ……」


 ますます謎は深まった。



「ちょっとトゥイッターの過去の発言を見せてもらうね」


「いいぜ、隠すものでもないしな」


 ミサキがキングのつぶやきのログを追う。これらはキングの言った通り、インターネットで公開されていて、覗いてもプライバシーを侵害する事はないだろう。


「うーん、ゲームの話題で盛り上がってるけど、変な点はなさそうね」


 ミサキがスマフォをキングに返そうとした時だ、ジミ子が会話に割り込んで来た。


「ちょっと待って、もしかしてフォロワァーって急に増え始めた?」


「ああ、うん。よくわかったな。ここ2~3週間くらいで急に増え始めたよ。理由は分からないけど」


 キングはサッパリ分からないといった仕草をして、ジミ子の質問に答えた。


「もしかして、そのゲームのギルドの人員も増え始めたのもそのくらいからじゃない?」


「その通り、なんでわかるんだ?」


 キングが不思議そうな顔をしながら答える。


「ちょっとトゥイッターの画面を見せてね」


 こんどはジミ子がキングのスマフォをのぞきこむ。するとやっぱりそうかといった表情を浮かべて、こう言った。


「原因はこれだと思うわ」


 そういってトゥイッターのプロフィールを僕らに見せる。

 僕らはなにか変な文章があるのかとチェックをするが、どこにもおかしな文章は見当たらなかった。

 キングもプロフィールの文章を否定する。


「プロフィール画面の文章はここ半年ぐらいイジってないぜ」


 そういうと、ジミ子は反論した。


「でも、写真は変えたでしょう?」


「ああ、別人だと文句を言われた事があるから変えたけど……」


「今回の原因はこれよ、みんなこの容姿に騙されて集まって来たんだわ!」


 ジミ子が衝撃の真相を語る。



 だが、写真一枚で、ギルド戦の勢力図に影響が出るものなのか?

 僕が疑問に思っていると、キングも同じ事を考えたようだ。


「写真一枚で、そこまで変わるとは思えないぜ」


 するとジミ子からこんな提案があった。


「じゃあ、写真を昔のヤツに戻してみれば」


「わかった、試しに戻してみよう」


 キングが写真フォルダを見直して、プロフィール画像を太っていた頃の物に直す。

 そしてつぶやく。


『プロフィールの写真を昔にもどしました』


 すると、すぐリトゥイート返事が返ってきた。


『ああぁぁ』『そんな馬鹿な!』『嘘だ!!』『ごめん、ギルド抜けます』


 こうして一大勢力を誇ったギルドは、あっという間に瓦解がかいした。



 さらに翌週、キングが笑顔でやってきた。


「たのしそうだね」


 僕がキングに話しかけると、満面の笑みで答える。


「いやぁ、ギルドが分裂したからギルド戦が楽しいぜ」


「やっぱ、戦ってなんぼだよな」


 ヤン太も拳を突き出しながら熱く語る。


「サッパリわからない」


 ミサキがそう言うと、


「ほんとね」


 ジミ子も相槌を打つ。

 こういったゲームの話しは、元男子でないと分からないかもしれない。



 さらに数週間後、キングがこのゲームのオフ会に参加してしまった。

 その容姿はトゥイッターで瞬く間に広がり、再びキングを中心とした一大勢力が築かれる事となる。

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