第14回目の改善政策 1

 第14回目の改善政策の番組が始まった。


 福竹アナウンサーがいつものように番組を進行する。


「第14回目の政策発表を始めます、今日はどのような内容なんでしょうか?」


「今日はね、コレを行なうヨ」


 そういって宇宙人はテロップを出した、そこには『動物の殺処分の原則禁止』とあった。



「先週に引き続き動物がらみの案件ですね。しかし殺処分の禁止ですか」


「ソウネ、原則として動物の殺害は禁止ネ」


「これは困りましたね、どこまで禁止するんでしょう。例えば害獣駆除でイノシシや鹿を殺す事もありますし。食肉はもちろん家畜を殺して作られます。これらが一切禁止となると……」


 そこまで言うと、宇宙人が言葉を挟んだ。


「大丈夫ネ、ソレラは禁止しないヨ。禁止するのは、いわいるペットの殺処分ネ」


「それを聞いて少し安心しました」


 福竹アナウンサーはひとまず胸をなで下ろす。

 確かに害獣や家畜の殺害が禁止されるとキツい。


 もし仮にこれらが禁止され、害獣を生きたまま捕らえようとすると、鹿ぐらいなら人数で押さえ込めば何とかなりそうだが、イノシシだと怪我人が出てしまいそうだ。

 もし熊が出現したとなれば、人間の方から死者が出てもおかしくない。


 また、肉の代わりになる豆は、まだ流通していないので、もし禁止されたなら当分の間は、肉が食べられなくなってしまう。

 こちらは来年まで我慢すれば済むかもしれないが、その間に肉を扱う業者が潰れてしまいそうだ。いつも使っているハンバーガーチェーンのメェクドナルドゥが無くなってしまうなんて、とても考えられない。



 福竹アナウンサーは宇宙人から更に話しを聞き出す。


「さて、ペットの殺処分の禁止という事ですが、具体的にはどのような政策を行なうのでしょうか?」


「勝手に殺処分をすると重罪ネ。もし殺処分したい動物が居る場合は、保健所に連れてっていってネ」


「……それだと今まで通りではないですか?」


「ソウネ、そこまでは今まで通りかもしれないケド、その先が違うネ。殺処分されるハズの人材はワレワレで引き取るネ」


「ええと、人材ですか? 動物ではなくて?」


「良い言葉が無いネ、動物を引き取って、それを人材のように扱う予定ネ」


「な、なるほど、しかし人材ですか。動物たちが働ける仕事というのは、どのようなものがあるでしょうか? 正直、あまり思い浮かばないのですが……」


「ソレハ、後で考えるヨ」


 確かに、僕が思い当たるのは『牧羊犬』『狩猟犬』『犬ぞりレース用の犬』くらいなものだ。

『盲導犬』は、宇宙人が全て視覚障害者を直してしまったので、引退に追い込まれたし。

『救助犬』は、宇宙人の監視ロボットに職を追われた。監視ロボットの方が捜索能力が高く、救助する力もあるからだ。

 宇宙人が来てから、動物もけっこう厳しい状況に置かれている。



 そんな状況を心配しながら、福竹アナウンサーが宇宙人を問い詰める。


「本当に大丈夫ですか? まあ、殺されるはずだった動物たちが助かるのは、大変良いことですけど」


「大丈夫ネ、何とかなるヨ」


「分かりました、今週の政策は以上でしょうか?」


「ソウネ、今週はコレだけネ」


「では、アンケートを取ります。みなさまご協力お願いします」



 いつものアンケート集計画面が出てきて入力をする。


 僕は「今週の政策は『よかった』」「宇宙人を『支持する』」に投票する。



 しばらくすると集計されたアンケート結果が表示された。


『1.今週の政策はどうでしたか?

   よかった 81%

   悪かった 19%


 2.プレアデス星団の宇宙人を支持していますか?

   支持する 66%

   支持できない 34%』


 今週の政策は良かったと思っている人が大半だ。



 福竹アナウンサーがチラリと時計を見る。

 まだ、番組終了の時間まではかなりある。


 すると、福竹アナウンサーはこう話しを切り出した。


「時間が余ってしまいました、以前行なった質問の応答コーナーを、またやっても良いでしょうか?」


「イイヨ、質問に答えるネ」


「ではみなさま、何か質問がありましたら、口頭でお伝えください。アンケートのシステムを通して集計いたします」


「質問待ってるネ」


 久しぶりに宇宙人に質問ができるようだ。

 さて、僕は何を質問してやろうか。

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