動物と人間 2

 動物の声が聞こえる翻訳機が発売されたのだが、

 どうもうまく行かない飼い主が多いようだ。


 どうやら動物は歯に衣着せない発言をしてしまうのが原因らしい。



「動物との関係が上手くいかないケド、どうすれば上手くいくと思うネ。キミタチ、良いアイデアは無いカネ?」


 宇宙人は僕らに無茶ぶりをした。

 するとジミ子が手を挙げて発言をする。


「翻訳機を回収して、今までどおり、動物の声を聞けない状況に戻せないんですか?」


「マア、それも一つの手かもネ。再び会話ができなくなれば、新たな問題は起こらないかもしれないケド、いったん『悪口を言った相手』とキミタチは今まで通り付き合えるカネ?」


「無理です、もう関係は修復できません」


 毒舌猫の飼い主の田淵たぶちくんは叫ぶようにうったえる。


 たしかに。聞こえなくなった所で、おそらく猫の悪口は続いていく事だろう。

 一度壊れてしまった信頼関係は、もう修復できないのかもしれない。



「上手くいっているcaseケースは無いんですか?」


 キングが質問をすると、宇宙人は少しだけ得意げに言う。


「一部デハ、すごく好評ネ」


「一部ってどういった人たちなんですか?」


「『羊飼い』には凄く好評だったヨ、牧羊犬とのコミュニケーションが細かく出来るってネ。他には犬ぞりのオーナー達から絶賛されたヨ」


 たしかに、仕事をする上でパートナーの動物の言葉が分かれば、これ以上便利なことはない。

 だが、これはかなり特殊で、一般的にはあまり当てはまらない事例だろう。日本にいる動物のほとんどは、仕事はしないペットのはずで、仕事をする動物は一握りしかいないはずだ。



 次にヤン太が荒っぽい事を言った。


「悪口言ったり、言う事きかなければ、軽く電気でも流して教え込めば良いんじゃねーか」


「ソレハ、一種の虐待に当たるかもネ、動物からクレームがきそうだヨ」


「そうか、なら他の方法を考えないとな」


 これは一種の体罰みたいなものだろう。体罰はできるだけ無くしていきたい。

 それに、もし実際にやったとしたら、動物からの苦情より、動物保護団体からの苦情の方が多くなりそうだ。



 こんどはミサキが元気よく提案をする。


「あの、知能を上げる注射はどうなんです。テレビを見ていた限りだと、かなり賢くなって、礼儀正しいくなるみたいですが」


「ソウネ、アレを使うとかなり賢くなるネ、空気をよんで発言したり、お世辞とかも言うようになるヨ」


「それなら問題ないんじゃないですかね、全ての動物にバンバン撃てば良いと思います」


「ソレも一つの方法かもネ。なかなかイイアイデアだヨ」


 ミサキが無責任は発言をして、それを宇宙人が採用しそうになっている。これはまずい。取り返しのつかないことになりそうだ。

 僕は何とかして止めに行く。


「あの知性を上げる薬はクレームとか来てないのでしょうか?」


 宇宙人に質問すると、ちょっと困ったような顔をして、こう答える。


「実は結構な数のクレームが来てるネ、使用した飼い主が『かわいく無くなった』『気持ち悪い』って言ってきてるネ。中には捨てられて、ウチの会社で保護しているペットもいるネ」


「それでは強制的に使用すると、捨てられる動物たちが増えるのではないでしょうか?」


 僕が宇宙人に提言ていげんする。


「ソウネ、そうかもしれないネ」


 宇宙人が少し納得したようだ。



 僕がミサキの意見に反対した形になると、本人から文句が来る。


「じゃあ、ツカサはどうすれば解決すると思うの?」


「えっ、ちょっとまって。 ……ええと、いったん距離を置くぐらいしか思いつかないです」


「一旦、距離を置いて、お互いの関係を考え直すという事カネ?」


「そうですね、せっかく動物から話が聞けるようになったので、意見を聞いてみるのも手かもしれません」


 すると、宇宙人は顎に手をあてて、ウンウンとうなる。

 何かに納得したようだ。


「今日は貴重な意見をありがとネ、距離を置いて、動物達の主体性も考慮して政策を考えて見るヨ。試しに知能を上げる薬も使って見るのも手かもネ。じゃあまたネ」


 そういうと宇宙人はお金を置いて扉の向こう側に消えていった。

 果たして僕の意見は参考になったのだろうか。そして、今後どういった政策が出てくるのだろうか。


 大丈夫だろうか? あまり良い予感はしない……

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