スキャン 2
宇宙人の健康診断のスキャンが終わると、健康に問題がある人物には警告が表示された。
『視覚障害者』という重い病名が表示される。
ジミ子がつぶやくように言う。
「なにこれ……」
「もしかして、ジミ子はあまり見えてないの……」
ミサキが心配そうに声を掛ける。するとジミ子は否定する。
「いや、そんな事ないよ」
「今は大丈夫だけど、これから先、もしかして症状が現れるんじゃないのか?」
ヤン太が心配そうに言った。
「それなら
すかさずキングがフォローする。
「あっ、うん、そうだね。宇宙人の技術できっと治るよ」
ミサキもジミ子をフォローして励ます。
ジミ子の顔からは血の気が引いていて、ふらふらとしている。
僕は心配になり、声を掛ける。
「大丈夫? 具合わるそうだけど」
「大丈夫。 ……じゃあ、確認してみるよ!」
ジミ子の決心がついたようだ。
気持ちが揺るがないうちに、病気の『詳細表示ボタン』を力強く押した。
すると
『近視(乱視を若干含む)』
と、表示される。
「「「…………」」」
僕らは沈黙した。
「はあぁー、脅かしやがって」
しらばくしてヤン太が力なく笑った。それにつられて僕らも笑い出した。
「まあ、たいした事なくて良かったね」
ミサキが励ます。
一方、僕がひとりごとのようにつぶやいた。
「これも眼科に行くのかな」
「そうね。近視って治療できるのかしら?」
ミサキが疑問に思ったらしい。
たしかに近視は眼科で治るのだろうか?
するとキングが有力な情報を提供してくれる。
「
ヤン太が、レーシック手術に対して率直な感想を言う。
「レーシック手術って良い話聞かないよな」
確かに、あまりいい話は聞かない。
『視力が良くなったのは一時的で、また元に戻った』とか。
酷い話だと『ピントが合わなくなった』『白内障になり、白く濁った』といった話から、最悪のケースは『感染症による失明』なんて話まで。
これらの情報はネット上から拾ったもので真偽の程は分からないが、良くない噂はあふれていた。
僕はジミ子を励ます。
「まあ、宇宙人の技術だから、地球のレーシック手術より数段優れていると思うよ」
「そうだね、でもちょっと怖いな……」
まあ、怖がる理由は分かる。
目に対する治療は怖い。仮にレーザーや針先などで治療する事となると、その絵図は想像もしたくない。
萎縮しているジミ子にミサキが声を掛ける。
「まあ、治療法の話を聞いて、今のままで不自由じゃなければ、治療しないって選択肢もあるんじゃないかな」
「そうね、とりあえず病院行くけど、眼鏡があれば問題ないし、あまりに痛そうなら治療を拒否するわ」
そう言うと、ジミ子の表情が明るくなった。
後日、二人は病院に行き、その数日後。
放課後、僕らは雑談の為、ハンバーガーチェーンのメェクドナルドゥに来ていた。
「痛って、しみる」
ヤン太がアイスコーヒーを飲みながら悲鳴を上げる。
頬がかなり腫れていて痛々しい。
ヤン太はたまにケンカをして頬に
僕が声を掛ける。
「大丈夫?」
ヤン太が苦い顔で答える。
「あの医者、いきなり歯を抜きやがった」
ミサキが横から質問をする。
「そんなに歯の状態が酷かったの?」
「そこそこ酷かったらしい。抜くときに麻酔はかけたんだが、それが痛いのなんのって……」
ヤン太が腫れた頬をさすりながら、眉間にしわを寄せた。
「
キングがヤン太に質問をする。。
たしかに、いきなり歯を抜くとは、かなり酷い医者だ。
「ああ、出てきたぜ、エイリアンの技術。何かを注射をされた、これもまた、すげー痛くてさ……」
「注射? 麻酔とは別の?」
僕が、そういうと、ヤン太が口を開けて見せてくれた。
「ここにもう小さい歯が出来てきてるだろ? これがちゃんと大きくなるそうだ。
場合によっては歯並びの矯正が必要になる場合もあるが、大抵は問題ないらしい」
「ああ、そうなんだ」
僕は感心をする。
たしかに、新しく歯を生やす事ができれば、重度の虫歯は引っこ抜いた方が早いかもしれない。
入れ歯や
そのための注射は、かなり痛そうだが……
あの健康診断で引っかかったのは、この中では二人居る。
一人目はヤン太で『虫歯』と診断された。
二人目はジミ子で、『近視』と診断された。
ジミ子も眼科で治療を受けているのだが、これがまた簡単だった。
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