第1回目の改善政策 5

 人類はすべて女性に変えられてしまった。

 男性がいなくなり子供が作れなくなってしまった、このままでは人類が滅びてしまう。


「これでは子孫が作れないです。滅びてしまいます」


 福竹アナウンサーが宇宙人を問い詰める。


「その点は考えているヨ。コレだヨ!」


 そう言うと、宇宙人はちっちゃなプラスチック製の容器を取り出した。

 見た目は使い切りタイプの目薬のような形をしている。


「マズ、消毒をしまショウ」


 福竹アナウンサーの腕をかってに消毒し始めた。


「何をするんですか?」


 不安そうな顔を浮かべるが、特に抵抗することなく、おとなしく消毒の処置を受けた。そして、宇宙人はおもむろに、プラスチック容器を腕に突き刺した。

 どうやら先端に針が付いていたらしい。


「痛っ」


 福竹アナウンサーは小さく声を上げる。


「そんなに痛いカネ?」


「いや、まあ。ふつうの注射と同じですね。あまり痛くはありません」


「デショ。では、股間を確認したまエ」


「???、何故でしょう?」


 そう言いつつも、福竹アナウンサーはズボンの中を覗いてみる。


「ああぁぁぁぁぁぁぁ、戻りました。男性器が戻ってまいりました」


 福竹アナウンサーは今まで聞いたことのないような喜びの声を上げた。



 宇宙人はそんな福竹アナウンサーにあくまで冷静に対処をする。


「違うネ戻したのではナイ。

 君たちの言う、マイクロマシン、ナノマシン、つまり極小の機械を使って一時的に生やしただけだヨ」


「一時的とはどのくらいでしょうか?」


 福竹アナウンサーが食い入るように質問をする。


「およそ1時間30分程度カナ。」


「1時間30分ですか…… ところでこの状態で、その、子供は作れるのでしょうか?」


「その為の試薬だヨ」


「なるほど、この試薬はどうやって入手が出来るのですか?」


「3日後、医療機関、薬局、薬店で販売する予定ダ」


「試薬に、M、25%と付箋ふせんが張ってありますが。それは何でしょう?」


「男性器のサイズと受精率ダネ。

 サイズはS、M、L、LL。受精率は0%、10%、25%、97%と用意してあるヨ。

 アト、今回は使ったのは注射器タイプだけど、服薬タイプも用意するヨ」


「なるほど、なるほど、それでお値段はどのくらいでしょうか?」


「1回分が230円、10回分で1980円ダネ」


「今回はみなさま初回利用となっております。もう少々だけ何とかなりませんかね」


「……分かったヨ、10回分1980円のトコロ、11回分1980円で」


「もう一声、もう一声だけ、いけるでしょう」


 福竹アナウンサーが強気で押す。その勢いに宇宙人が折れたようだ。



「ショウガナイ、大サービスして13回分1980円でお届けするヨ」


「いよっ、太っ腹」


「コレは今だけのチャンスだからネ。買い逃してもシラナイヨ」


「それではご利用おまちしております。お求めはお身近の薬局薬店で」



「……なんだこの番組。通販番組みたいな感じだぞ」


 ヤン太がポツリと言う。まったくもってその通りだ。



 次に、通販の電話番号でも出てくるのかと、テレビを見ていると、


「そういえば、番組の最後にアンケートがあるという話でしたが」


 福竹アナウンサーが思い出したように宇宙人に訪ねた。


「ソウダヨ、最後にアンケートを取るヨ。アンケートの内容には正直に答えてネ

 画面にタッチすればそれでOKだからネ」



 宇宙人は手で合図を送ると、僕ら一人一人の前に光りのディスプレイが空中にあらわれる。

 30cm四方の正方形で、文字が書かれていて、回答用のボタンも表示されていた。


 質問は、


「1.今週の政策はどうでしたか?『よかった』『悪かった』」

「2.プレアデス星団の宇宙人を支持していますか?『支持する』『支持できない』」


 二問だけ書かれている。



「こんなもん決まってるだろ『悪かった』『支持できない』だぜ!」


 ヤン太が怒りをあらわにしながら、力強く光りのディスプレイを押した。


「俺もだ同じだ!!」


 キングもそれに続く。


 というか、人類なら答えは同じだろう。

 僕も同じ答えを選択した。



 クラスのみんなは即答すると思ったのだが、そうではないらしい。

 ミサキとジミ子が相談をしていた。


「ミサキどうする? どうでもいい政策だったけど」


「うーん、そうだねアンケートどうしようか?」


 どうでもいいって……

 男子はこんな大変な目にあっているというのに女子というヤツは……


「とりあえず私は男子がかわいそうだから、政策は『悪かった』。宇宙人は『支持できない』に投票するよ」


 ジミ子は男子に同情票を入れてくれた。


「でもこれでセクハラが無くなったじゃない。

 私は、政策は『よかった』『支持できる』に投票しようかな」


 ミサキ、ちょっとそれは酷いんじゃないかな?


「まあ、それでいいんじゃない」


 そんなミサキに以外にもジミ子はOKを出してしまった。

 ちょっと女子は酷いんじゃ無いかな…… まあ、もう僕も女子なのかもしれないが。


 一通り、入力が終わると、テレビに結果が出てきた。



『1.今週の政策はどうでしたか?

   よかった 3%

   悪かった 97%


 2.プレアデス星団の宇宙人を支持していますか?

   支持する 6%

   支持できない 94%』



 だれだろう『よかった』と『支持する』に入れた人は、以外にも高い。

 ……まあ、身近にもいるわけだけど。



「以外と、支持率がありますね」


 福竹アナウンサーが、ぼそっと感想をのべる。


「ソウカナ? 情報解析によると、もっと良い数字が出ると思ったんだけどネ」


 どう考えたら、その結論になるのか僕には分からない。



 福竹アナウンサーは腕時計をチラリとみる、終了時間が近いらしい番組を締めにかかった。


「それでは時間となりました。

 第1回の改善政策施行かいぜんせいさくしこう。明石市立天文科学館からお届けしました。

 来週もまた、ご覧下さい」


「マタネー」


 二人が手を振って、波乱はらんの番組がようやく終わる。


 テレビが終わった後も、僕たちは股間を何度も確認するが、やはり無いものは無い。

 こうしてセクハラの撲滅する為だけに、男性は居なくなってしまった。

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