第1回目の改善政策 3

 福竹ふくたけアナウンサーの目の前に、銃のような形の浮遊物体が浮かんでいた。



「それでは、男性に消えて貰うネ」


 宇宙人が手で合図を送ると、銃のような浮遊物体から放電するように電気が走る。

 それは福竹アナウンサーを貫いた。


「うわああぁぁぁぁぁぁ!!」


 さきほどの兵士は『溶かされた』とか、ショッキングな事を言っていた。

 これから酷い惨劇が起こるだろうが、僕はテレビから目が離せない。


 そして、電撃が放たれて、およそ20秒ほと経ったとき、宇宙人が福竹アナウンサーに声をかける。


「そんなに痛いカネ?」


「あぁぁぁぁ…… あれ、なんともありません。

 冬場にちょっと静電気をもらったぐらいの痛みですね」


「そうデショ、そんなに痛くないでショ。これで目の前から男性が消えたネ」


「何を言っているのですか?」


 宇宙人が訳の分からない事を言い出した。

 福竹アナウンサーはピンピンしている。



「ところデ、この惑星の住人の男と女を見分ける確実な方法は何かネ?」


「ええと、一番確実なのは生殖器を見る事でしょうか?」


「ソウダネ、『ちん○』を確認すれば良いんだよね」


「すいません、その言葉は放送コードに違反します。使用を控えてもらえないでしょうか」


「分かったよ、確か放送できる別名は『息子』だったかネ」


「ええ、それで構いません、お願いします。

 視聴者の皆様へ、さきほど不適切な発言があり、誠に申し訳ありません」


 さすがプロのアナウンサー。こんな緊迫した状態でも放送コードなどを気にしているらしい。



「それでダ、キミの『息子』を確認したまエ」


「えっ、なぜですか?」


「イイから、確認したまエ」


 宇宙人の強引な催促さいそくに押されて、福竹アナウンサーはズボンの上から触って確認する。


「ん? あれ? どこだ?」


 福竹アナウンサーはゴソゴソをいつまでも探してる。

 そんな無くすようなものじゃないのに、何をやっているんだろう。


「まさか!」


 今度はズボンを直にのぞき込んだ。


「ないぃぃぃ、俺のちん○が無くなってる、おれのちん○が!!」


 福竹アナウンサーがえらく取り乱した。

 スタジオから春藤はるふじアナウンサーが割り込んで呼びかける。


「福竹アナウンサー、放送コード、放送コードの厳守をお願いします」


「ちん○、ちん○、ちん○がなくなってます、そんな、ちん○がぁぁぁぁ……」


 春藤アナウンサーがこの発言に切れた。


「黙れ、福竹、放送コードって言ってるだろ!!

 ちん○、ちん○うるせーよ。ちん○一つでうろたえてんじゃねーよ!!!」


 いつも冷静で好感度も高い春藤アナウンサーが暴言を吐いた。


 次の瞬間、テレビは『しばらくお待ちください』と待機画面に変わった。



 教室はザワつく。


「なんだ?」「どうなってるんだ?」「まさかちん○が無くなったんじゃ」


 どういう事だこれは?

 僕らは、なんとか理解をしようと、これまでの状況を整理する。


「福竹アナウンサーのちん○は、残念ながらDelete削除されたと考えられる」


 キングが認めたくないことを言った。その姿勢はどことなく内股だ。

 僕たちもそれにつられるように、自然と内股になった。


「ええと、たしかヤツはセクハラを撲滅とか言ってたよな?」


 ヤン太が冒頭の出来事を思い出しながら言った。


「そ、そうだね。たしかに言っていた。見せしめとかも言ってたね」


 僕が相づちをうつ。


「それなら、セクハラをした人は、その……、ああいう処理をするのかな?」


 ミサキがなんとか解析を入れた。

 たしかに、そうかもしれない。

 動物の話だが、去勢された雄猫などはおとなしくなると言うし、あのような過酷な処罰を科せばセクハラはこの世界から消えて無くなるだろう。


「って事は、福竹アナウンサーはセクハラをやっていたってことかな?

 それだと自業自得かもしれないね」


 ジミ子が福竹アナウンサーをぴしゃり切り捨てた。

 たしかにセクハラをやっていたら罰を受けるべきだろうが、あの罰はあんまりだ。


「酷い罰だと思うけど。セクハラをしなければ大丈夫かも……」


 僕は仮説を立てた、あんな事には死んでもなりたくない。


「そうだな。その説が濃厚なのかな…… あっ!!!」


 ヤン太が何か思いついたらしい。

 僕の顔をみて、固まっている。


「どうしたの?」


「ツカサは毎日、ミサキにネクタイをやっているよな?」


「うん、まあそうだけど」


「あれって端から見ると、セクハラっぽく見えないかなと思って……」


「…………」


 もしかして僕はヤバイかもしれない。

 冷や汗が滝のように出てきた。

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