第1回目の改善政策 2

 国の中心と時間の中心が違う事を福竹ふくたけアナウンサーが丁寧に説明をする。

すると宇宙人は、


「まあ、イイヤ。そういう文化もあるかもネ」


 その説明に納得したようだ。

 以外にも宇宙人の思考は柔軟らしい。人類の価値観に理解をしめしてくれた。



「それでは改めて『第1回目の改善政策の発表』をお送りしたいと思います」


 福竹アナウンサーが再び仕切り直す。


「さて、第1回目は何を改善されるのでしょうか?」


 その質問に宇宙人が答える。


「この惑星の住人は、『セクハラ』という異性間で行われる嫌がらせが有るそうだネ」


「ええ、残念ながらありますね」


「ワレワレはセクハラを根絶こんぜつしたいと思ウ」



 セクハラと聞いて僕は思い当たる事がある。姉ちゃんだ。


 姉ちゃんは前々回の面接で、面接官からジロジロと胸を見られていたと言っていた。前の会社でも、言葉によるセクハラは日常的に行われていたようだし、飲み会の時には軽いお触りもされていたらしい。


 この『セクハラを根絶する』という政策は、姉ちゃんの私怨しえんにしか思えない所もあるが、まあこの政策は良いことだろう。セクハラを無くせるものなら無くしてしまった方が良い。



「ところで、どのような方法で根絶するのでしょう。監視カメラでも備え付けるのでしょうか?」


 福竹アナウンサーが、根絶の方法を質問する。


 カメラで監視する方法は僕も思いついた。


 たしか痴漢を無くすために『電車の車内に監視カメラをつける』というニュースを見たことがある。

 ある程度の効果はあったようだが、満員電車で重なり合った人たちから、きちんと撮影できるのかは疑問に思う。


 普通のカメラでは不可能だが、宇宙人の超テクノロジーのカメラを使えば可能になるかもしれない。

 人類でもエックス線撮影のような技術があるので、人混みの中から特定のものの撮影や、普通では見えない位置のからの撮影ができたっておかしくはない。


 この方法が実行されると、電車やバスの中、会社の中なども含め、街の至る所に監視カメラが増える事になり、監視社会になってしまいそうだが、犯罪が減るならそれも仕方ない事なのかもしれない。



「ウム、その方法は、こちらを見てもらった方が早いネ」


 宇宙人の指示でテレビの画像が切り替わった。

 カメラは鏡のような銀色の室内を映し出す。


 銀色の室内は、ホールのような大きな空間で繋ぎ目は一切無く、その光景は見覚えがあった。銀色の月の室内だ。

 ホールにはたくさんの人たちがいた、軍服を着ていて先週捕まった捕虜の人たちだと思う。


 カメラは銀色のホールを右から左へと見渡すように映し出す。

 捕虜の人たちは元気そのものだが、僕はおかしな事に気づいた。


 カメラが映し出す映像は、ショートカットの女性ばかりだ。

 軍隊といえば8~9割ぐらいが男性の印象だが、カメラに男性が写り込んでこない。

 これはどういった事だろう。男女で部屋が別れているのだろうか?



「どういう事でしょうか? よくわかりません」


 福竹アナウンサーが訳が分からず宇宙人に質問を投げかけた。


「直接、聞いてみてはどうかネ。中継を繋ぐヨ」


 宇宙人に言われて、福竹アナウンサーは中継先のショートカットの女性に話しかけた。


「あなたたちは無事ですか?

 今、そちらはどうなっていますか?」


 中継の呼びかけに気がついた女性兵士は、こちらに悲痛な顔で叫ぶように訴えてきた。


「私は、私たちは、男性、息子を、溶かされた、逃げろ、今すぐ逃げろ」


 翻訳機の調子が少しおかしいらしい。断片的な単語しか伝わってこないが女性は確かにそう言った。


 男性、息子を溶かされた? いったいどういう意味だ?

 ……いや、とぎれとぎれに伝わってきた言葉の脈略みゃくりゃくは、分かるが理解したくない。

 もしかして男性は一人残らず殺されてしまったのだろうか……



「……これは、いったいどういう事でしょうか?」


 福竹アナウンサーが真実を聞き出そうとする。

 顔は青ざめ、マイクを持つ手は震えている。


「見ての通りだよ、一部の男性に居なくなってもらったネ。

 まず手始めに、キミに見せしめになってもらうヨ」


 宇宙人が手で合図を送ると、いつの間にか福竹アナウンサーの目の前に15cmくらいの大きさの銀色の物体が浮遊している。

 それはL字型をして、銃のような形をしていた。

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