エイリアンに支配された日常 1
人類が負けてから一晩が経ち、初めての朝になった。
宇宙人から、通常の状態で生活を続けるようにとの通知があったので、街は何事も無かったかのように動き出している。
僕も通知に従い、いつも通りに朝飯を食べた後、ミサキを迎えに行く。
ミサキは相変わらずだらしない格好をしていた。シャツのボタンもろくに留めていない格好で玄関に出てくる。
僕はいつものようにシャツのボタンを留め直し、ネクタイを締め、手を繋いで学校へと向かう。
いつも変わらないような日常だが、空をみあげると、例のロボットに変形する立方体が必ず視界に入ってくる。
昨日までのあの出来事が、夢ではないと知らしめるように、それは確かに存在していた。
学校に着き教室へ入ると、みんな雑談に夢中だ。
話題はもちろん宇宙人についてである。
教室には既に、ヤン太、ジミ子、キングがいて会話をしていた。僕とミサキはそこへ加わる。
僕を見るなり、キングがこう話しを切り出した。
「聞いてくれよ、宇宙人の規制のせいで
宇宙人にほとんど関係ない話題を言ってきた。
いや、まあ全く関係ない訳ではないのだが、かなりどうでもいい問題だった……
「ん? オフラインでもゲームはできているんだよね?」
ミサキが不思議そうにキングに質問をする。
「オンラインで
キングの説明を受けても、ミサキがキョトンとしている。説明が分かっていなそうだ。
ミサキにとってはオンラインでもオフラインでもゲームはゲームなのだろう。
僕も正直言うと、そこまでゲームをしていないので、あまり違いは分からないけど……
「その話はもういいや。真面目な話をしよう」
ジミ子がキングの話しを強引に切って捨てた。
「
キングの悲痛な悲鳴が上がる。
確かにキングと話しを続けても、ゲームの話題しか出てこなそうだ。
僕は他の二人に話しを振る事にした。
「ヤン太とジミ子は宇宙人についてどう思う?」
「うーん、なんだろう。なにをやらかすか全然予想がつかないぜ」
「私も、ヤツらが何考えているのか、全く分からない」
もっともな意見が返ってきた。人類に彼ら宇宙人の思考など分かる訳がないだろう。
「私も彼らが何を考えているのか分からないけど、今のところは平和的だと思うよ。
あれだけの戦いをして、人類側には犠牲者は出てない訳だし」
ミサキが宇宙人を
僕も今のところはミサキの意見に賛成だ。攻撃的な側面がまるで見当たらないからだ。
「まあ、確かにそうだね。『改善をするだけ』と言っていただけだし」
僕が返事をすると、ミサキがつぶやいた。
「人類のダメなところを直すんじゃないかな?」
「人類のダメなとこってなんだろ?」
ジミ子がみんなに疑問を投げる。
「そういえば会見の時に宇宙人が言ってた『36億人の資産と、金持ち8人の資産が同じ』って、酷かったな」
ヤン太が、宇宙人の初めての会見を思い出しながら言った。
「確かに、あれは酷い」
僕もあれは宇宙人の意見に同意せざるを得ない。
「そういえば、
キングが会見で言っていた例を上げた。
「それもいってたね」
ミサキが同意する。
「アマゾンとか自然環境の破壊が凄いんだろ、たしか」
ヤン太が分かりやすい例を出した。
たしか、毎年、東京都の3~4倍の面積の森林が、消えて無くなるとかいうやつだ。
「あそこらへんの国の人、環境より金の方が大事なんじゃないかな?
普通の仕事だと、貧乏で食っていけないんじゃないの?」
ジミ子が酷評をする。
たしかに、人間は食っていく為に、何でもするかもしれない。
「ところが、裕福な国であるハズのカナダでも環境破壊があるらしいぜ。
アルバータ州ってとこで、石油を含んだ砂、
ギルドメンバーのカナダ人がぼやいてた」
キングの知り合いから思わぬ情報が出てきた。
カナダは自然豊かでおおらかな人が多いイメージがあったのだが、どうやら全員がそうではないらしい……
「裕福そうな国でも、そんな事がおきるんだ……」
ミサキもショックを受けている。
「宇宙人が規制をかけるって言ってたし、今後は大丈夫じゃないかな」
僕は落ち込んだミサキを少し励ます。
「そうよね、アマゾンの森林破壊も、カナダの環境破壊も宇宙人ならパパッと解決してくれるよね」
ミサキは早くも持ち直した。するとジミ子がボソリと言った。
「どうやるんだろう?」
「きっと、環境復元ビームとか出すんだよ。
ビームが当たった部分はみるみる綺麗になって、凄い勢いで草木がはえてくるんだよ」
ミサキがアニメかゲームのような出来事を言い出した。
さすがにそれは科学レベルの高い宇宙人でも無理だろう。
話がやや妄想に近い内容になってきたとき、担任の
「ほら、おまえら席に座れ。朝のホームルームするぞ。その後はいつも通りの授業だ」
だらけ切った生徒達を相手に、軽く怒鳴る。
いつもは鬱陶しいダミ声としか思えないのだが久しぶりに聞く声は、少し懐かしく思えた。
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