開戦三日目 1

 攻撃が始まり3日目の最終日。

 人類に残された時間は24時間を切った。

 今日は朝から家族全員がテレビの前に集まっている。



 テレビの中では戦闘機が頑張っているが、相変わらずダメージを与えられずにいた。

 このまま時間切れまで、この攻撃が続くと思ったが様子が少し変わった。

 飛行機が撤退し始める。


「こちら現場の福竹ふくたけです。今日は自衛隊に同行しております。

 こちらをご覧下さい」


 中継のカメラはどうやら軍艦の艦橋にいるらしい。

 かなり高い位置から周りの船団を映し出す。


 周りには駆逐艦や戦艦など、ありとあらゆる軍艦があった。

 どれも普通の軍艦に見えるが、空母がおかしな事になっている。

 普段なら甲板の上には何も無く、ヘリコプターや飛行機が発着できるようになっているはずだが、今日はいくつもの大砲が飛行甲板の上に並べられていた。


「いままで軍艦からは遙か遠距離からミサイルなどの攻撃を行っていましたが、これから近づいて実弾での射撃を始めるようです。

 エイリアンの巨大モノリスは大口径の実弾に弱いのではないかという仮説が、あがりました。

 近づきすぎるとテレポートでさらわれる可能性がある為、ある程度の距離を置いて、これから総攻撃が始まります」


 昨日、唯一エイリアン側の攻撃を受けたガンシップ。

 あの飛行機は実弾による攻撃を行っていた。

 たしかに、モノリスが実弾に弱い可能性は十分にあるだろう。



 モノリスを射撃するために大艦隊が組まれている。

 自衛隊の横には中国軍と韓国軍も並んでいる。平時では考えられない状況だ。


 船団はモノリスの手前2~3キロの位置で配置に並ぶと、すぐさま砲撃を開始した。

 すさまじい炸裂音を伴って、弾丸が一斉にモノリスへと向かう。

 そしてほとんどの砲弾が中央部分に着弾した。黒い煙が上がりダメージを与えられたのかはよく分からない。


 その後、砲撃は10分以上続いた。戦艦の大砲から、空母の甲板の上の大砲から、輸送艇の戦車の大砲から、ありとあらゆる砲弾が浴びせられる。


 やがてモノリスのダメージを確認するために、砲撃が一時中断された。

 モノリスの様子は…… 無傷だった。


「現場の福竹です。どうやらモノリスはダメージを受けて無いようです……

 こちら、スーパースローモーションで撮影した画像です。ご覧下さい」



 スローモーションの映像が流れる。


 砲弾が当たろうとするとき、モノリスから何か飛び出てきている。

 どうやら砲弾に対して、弾のようなものを打ち出して当てているようだ。

 お互いの砲弾同士が辺り、衝撃を相殺しているらしい。


 僕はがっかりした。

 モノリスはちゃんと砲弾に対しても対抗策を持っているじゃないか。てっきりモノリスにも実弾をいう弱点があるのかと思ったのだが、どうやら的外れだったらしい。


 しかし実弾が有効でないとするならば、ガンシップのメンバーがさらわれたのは何故なんだろう?

 宇宙人は気まぐれでさらったのだろうか?

 考えたところで理由はよく分からない。



 その後、世界各国のモノリスが中継された。

 どうやらこの『砲撃による攻撃作戦』は世界的に行われているらしく、色々な大砲で射撃されている。

 中でもヨーロッパでは第二次世界大戦に使われた、巨大な大砲を引っ張り出して砲撃しているが、この弾も易々と撃ち落とされていているようだ。


 今のところ、モノリス本体に打撃は与えられていない。



 テレビはアメリカのモノリスへと中継が移る。やはりアメリカの砲撃はすざまじい。

 大砲の数が他の場所の2~3倍はあるんじゃないだろうか。絶えず砲弾が着弾して、煙が上がっている。


 アメリカの中継を見ていると、姉ちゃんが変なことを言い出した。


「なんかアメリカのモノリス、ちっちゃくない?」


「えっそうかな? 気のせいなんじゃないの」


「いやいや、小さいよ。よく見てよ」


 画面の中のモノリスを注意深く見てみる。

 巨大なモノリスの周りには比べられるものは無く、大きさはよく分からない。

 しかし言われてみれば、何となく他の場所のモノリスより小さい気がしてきた。


 仮に実弾を相殺するために打ち出しているものが、モノリスの壁の一部分を使ったものだとしたら、このまま数で押していけばモノリスが削れていき、機能不全に追い込めるかもしれない。


 ふと、そんな考えが浮かんだが、確証がまったく持てない。

そこで僕は巨大掲示板を開いた。



 掲示板を見ると、そこはすでに敗戦モードだった。


「ああ、こりゃダメだな」

「人類終わった」

「ねえ、負けたら明日から会社行かなくて良いかな?」


 そこへ僕が持論を書き込む。


「アメリカの巨大モノリスが小さくなっている気がする。このまま砲撃を続けると、モノリスに勝てるんじゃないか?」


「本当か?」

「うそだろ」

「ちょっと映像を検証してみる」


 しばらくすると、検証結果が書き込まれた。


「……なんとも言えないが、アメリカのは5%ぐらい短くなっているかも?」


 どうやら気のせいでは無いらしい。

 でも次はどうすれば良いのだろうか?

 掲示板に意見を求める書き込む。


「この事はだれかに伝えた方がいいかな?」


「俺、知り合いの軍人に伝えておく」


「私はマスコミ関係者だから、伝えてみるよ」


「作戦中の自衛隊だけど、上司に言ってくるよ」


 ……この局面で、相変わらずサボっている人もいるようだが、おそらくこの意見は伝わるだろう。



 人類には全く勝てる見込みが無いように思えたが、少しだけ勝てるような気がしてきた。

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