運命を決める記者会見 3
記者会見している最中に、宇宙人は突然、「この惑星を支配する」と言い出した。
周りにいたレポーター達が、なんとか考え直すように説得すると、
「デハ、ワレワレの支配が無くても、コノ惑星を運営して行けるという事を証明してくれたまえ。
君たちの文化レベルの高さをアピールしてちょうだいネ」
と、弁明の機会が与えられた。
宇宙人を説得できれば侵略を考え直してくれるようだ。まだ人類にチャンスは残されている。
宇宙人の発言を受けて、さっそく別のアナウンサーがこう発言をする。
「この世界には『共産主義』という素晴らしいシステムがあります。これは宇宙に誇れるはずです」
ロシアのアナウンサーだろうか、自信満々に言い放つ。
「ウム。『共産主義』とは確か。公平と
宇宙人はある程度は知っているようだ。
ロシアのアナウンサーに触発され、隣に居た中国と思われるアナウンサーが自信満々にこう付け加えた。
「はい、その通りです。『共産主義』を広めて、宇宙の同士達にも永久の繁栄をもたらしましょう」
頑張れ。なんとかして宇宙人を説得させるんだ。
宇宙人の支配から逃れられるのなら、このさい全世界が共産主義になってしまっても構わない!
「ソウダネ。デハ、一つ君たちに問う。
『共産主義』では、たしか国民は全て『平等』に扱われるハズだ。
従って一人一人の発言権の大きさや、権限。
国民には貧富の格差など無いはずだが、現実はどうかナ?」
「……すいませんでした」
ロシアのアナウンサーがすぐに謝った。
早い。謝るのが早すぎる。素直に認めないでもっと何か反論してくれ!
「君の国の現実はどうかネ?」
次は中国人のアナウンサーに答えを求める。
「ノ、ノーコメントでお願いします」
レポーターがノーコメントってどうなんだ。普通は逆だろう、おまえが黙ってどうする。
しばらく間が空く。しかし、この発言の趣旨に続く意見が出てこない。
他にも共産圏の国がいくつかあるはずだが、やはり何らかの格差はあるらしい。
どうやら共産主義は宇宙人の前に敗れ去ってしまったようだ。
すこし間を置いて、こんどはアメリカのアナウンサーが発言をする。
「『資本主義』という経済のシステムがあります。
人々の自主性とアイデアを
「金を中心としたシステムだよネ。金を基準として、生産、労働、物流、などを動かすよネ?」
宇宙人は『資本主義』も知っていた。やはり人類に対して詳細な調査をしているに違いない。
「ええ、まあ、その解釈に否定は出来ないです」
「何事にも採点方法、評価の指標といったモノは必要だ。何かを基準とする事は悪い事ではないヨ」
その言葉を受け、気まずそうにしていたアメリカのアナウンサーの顔が明るくなった。
「そうでしょう、なんらかの指針は必要なのです。
お金が原動力となり、人を動かし、物を動かし、アイデアを生み出します。
いわばお金が地球を回る血液のようなものです。
全世界に広がり、人々に栄養を与え
美化や
やはり資本主義は正しかった。がんばれ資本主義!
「ワレワレもその点は調べているヨ。
この惑星のデータによると、2017年の調べでは『世界の人口の半分の36億人の資産と、金持ち8人の資産』が同じ金額で釣り合うとかいう話だよネ。コレは偏りすぎていないかナ?
貧富の差がとても酷いヨ『資本主義』はシステムとして大丈夫かナ?」
「あの、それは、貧乏な方々には、弱者救済のシステムがありまして……」
「イヤ、そういった話じゃなくて、金持ちと貧乏人の偏りが酷い、この偏りを正常化するシステムは組み込まれているのかっていう話だヨ」
「いちおう税金を徴収する事で……」
「そのシステムがちゃんと機能していたナラ、ここまで酷い事にはなっていないよネ?」
「……はい、その通りです」
「ナンデこんな酷い状態になっても、君たちはシステムを改善しようとしないのヨ?」
「……ええとですね、国によって通貨の価値が大きく違います。
途上国では物価が安いので、小額のお金でも普通に暮らして行けます。
先進国と途上国を一緒くたに混ぜたその統計は、ちょっと当てにならないかもしれません」
アメリカのアナウンサーは論点をずらして、かなり苦しい言い訳をした。
この答弁に無理があることは言った本人も分かっているらしく、目が泳ぎ冷や汗をダラダラとかいている。
「フム、デハ、もっとも裕福な国、アメリカだけに話を移そう」
アナウンサーが安心して深呼吸をした。どうやらなんとか危機を乗り切ったらしい。
「ワレワレが注目したレポートがある。
国連の報告によるとアメリカの国民の4割は貯金が400ドル以下(およそ5万円以下)らしいネ。
裕福な国の国民の4割がこういった状況にあるらしいが、どうやったらこんな状況になるのか説明してくれるかナ」
「…………」
アメリカのアナウンサーは完全に沈黙してしまった。もはや何も言い返せない。
他にも資本主義の国のアナウンサーがいるのだが、やはり意見は出てこない。
資本主義も宇宙人の前に敗れ去ってしまった。
しかし『アメリカの国民の4割が貯金400ドル以下』も酷いが『36億人の資産と、金持ち8人の資産』が釣り合ってしまうとは。地球の経済は、こんなに酷い状態だったのか。
しばらく沈黙の後、宇宙人が口を開く。
「コノ惑星を運営して行けるという他に良いシステムは、もう無いのかナ?」
社会主義と資本主義が宇宙人の前に敗れ去った今では、他に何があるというのだろう。誰も何も発言が出てこない。
しかしどうすればいいんだ、これは。
僕ら人類が宇宙人を説得できる事はあるのだろうか?
懸命に頭をひねるが、一介の高校生に地球を救うような意見は思い浮かばない。
時間だけが流れていく。
10分ほど経っただろうか。こんどは宇宙人の方から口を開いた。
「君タチが優れている点があるのだが、気がつかないかネ?」
現場のマスコミ関係者がさわぐ。
「えっ」「なんだ?」「人類が優れている点?」
急にそんな事を言われても、アナウンサー達は答えは思い浮かばないようだ。
もちろん僕も全く分からない。
「仕方ナイ、ワレワレがアピールできる場所を用意しよう。
その目標が達成できたのなら、ワレワレは君たちの文化レベルの高さを認め。この惑星から手を引くヨ」
宇宙人がそう言うと、背後に大きな光のスクリーンが現れた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます