運命を決める記者会見 2

「では語ろうかナ。ワレワレの目的を」


 人類が今、一番知りたがっていることを宇宙人は語り始めた。



「まあ、簡潔に言うなら『実地調査フィールドワーク』という事になるカナ。

 きっかけは、およそ32年と7ヶ月前。ワレワレの探査衛星のひとつが君たちの惑星の電波の一部を捕らえ。知的生命体が居ると判断した訳だヨ」


「なるほど、そうでしたか」


 記者団の代表のイギリスのアナウンサーは納得したようだ。


 僕はひとまず安心をした。この宇宙人の目的は『調査』らしい。

『侵略』だの『戦争』といった物騒な目的でなくて助かった。


 現場の報道陣も、この発言を受けて安堵あんどしたようで、先ほどよりリラックスした様子だ。



「すいません。宇宙にはあなた方の他に知的生命体は居るのでしょうか?」


 福竹ふくたけアナウンサーが横から興味深い質問をした。


「ソウダネ、ある程度の知能。この惑星に例えると、猫や犬くらいの知性の生命体が居る惑星は2073ある。

 そのうち今の君ら人類ぐらいの知性が居た惑星は75惑星。我々と匹敵するレベルとなると3惑星ダネ」


「おおっー」

 報道陣がどよめく。


「もちろん、今の数字はワレワレの調査した範囲内、およそ700光年の内の話だがネ。ワレワレは惑星の環境、生命体の強度や文化レベル、そういったモノも調査しているヨ」


「なるほど。ところで、我々人類はどうなんでしょう?

 他の宇宙の方々と比べて、どのくらいの評価はどうでしょうか?」


 記者団の代表のイギリスのアナウンサーが笑顔で問いかける。


 気になる質問だ。いまの人類は高レベルの知的生命体から見てどのくらいの位置にいるのだろうか?


 すると宇宙人は、少し時間をおき、こう切り出した。


「ダメだね、ダメダメだ。全然、全くダメダヨ!」


「えぇ、そうなんでしょうか」


「ソウダネ、この惑星の100点満点の採点方法に当てはめると、君らは6点くらいだヨ」


 これはショックだ! 低い、低すぎる。そんなに駄目なのか人類は。



「ど、どういったところが良くないのでしょうか?」


 アナウンサーが人類の評価を上げようと食い下がった。


「ソウダネ、わかりやすい例を上げよう。

 今、人類の人口は歴史上最高で、これからも増え続ける予定だよネ?」


「ええ、そうですね世界の人口はおよそ74億いて、2050年には91億を超えると言われてますね」


「食料とか物資とか十分に足りてますかネ?」


「いえ、十分かと言われると足りてないですね……」


「だよネ。この惑星の規模だとワレワレの試算で適正人数は20~40億程度だけど。どうヨ?」


「そうですね。そのくらいかもしれないですね」


「ふつうはサ。人口が上限一杯になりそうになったら、他の惑星に移住する計画とか立てない?

 隣の火星とか、君らにはけっこう住みやすいでしょウ」


「いえ、その、技術力が……」


「技術力が無いならサ、各国が技術を持ち寄って、手を取り合って協力して、なんとか他の惑星へ行かないとネ。

 そんな状況なのに、同族同士で資源や食料を争いあうなんて行動してちゃダメでしょ。問題外だヨ」


「…………」


 アナウンサーは黙ってしまった。トークの専門家なのに、なにも言い返せない。

 他の国から来ているアナウンサー達も口を閉ざしたままだ。ぐうの音も出ない状態とはこの事だろう。


 仮に、僕があそこに居たとしても、やはり何も言い返せないと思う。

 宇宙人の言う事は全くもってその通りだ。



「君たちの文化レベルの低さが分かったかネ」


「ええ、そうですね。身につまされました」


「ウム。分かって貰ったところで、この記者会見を開いた本題に移ろう。

 この惑星の文化レベルは低すぎる。これからは極めて劣悪な環境へと向かうだろうネ」


 宇宙人の目が異様に明るく光り出した。

 そして大きな声で、ゆっくりと、こう宣言がなされた。


「従ってワレワレが事にしたヨ」


「えっ!」「本当かよ!」「嘘だろ!」

 マスコミ関係者から次々と悲鳴に似た声が上がった。


 ヤバいぞこれは。今までは友好的だと思ってきたが、とんでもない発言がきた。

 どうなるんだこれは? もしかしたら、これから人類は奴隷のような生活を強いられるかもしれない。



「それは、どうにか…… どうにか考え直してもらえませんか?」


 アナウンサーが宇宙人に食い下がり懇願こんがんをする。


「デハ、ワレワレの支配が無くても、コノ惑星を運営して行けるという事を証明してくれたまえ。君たちの文化レベルの高さをアピールしてちょうだいネ」


 と、弁明の機会が与えられた。

 宇宙人を説得できれば侵略を考え直してくれるようだ。まだ人類にチャンスは残されている。

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