運命を決める記者会見 1
モノリスのカウントダウンがゼロになった。
ロボットが出てきた時のように、光の線が表れて広がり、その中から人影が現れた。
人間と比べると、かなり大きいようだ。背は3メートルはあろうだろうか。
その外見は、絵で見たことがある姿だった。
それを受けて、テレビは騒ぎ立てる。
現場の
「見て下さい、宇宙人が現れました。
ご覧下さい、姿は人間に近いと言えば近いです。
アメリカで目撃例があった『フラッドウッズ・モンスター』と言われている宇宙人と酷似しております」
構造的には人間と変わらなそうだ、頭と胴体、二つの目、二本の手足。これらは人間と変わらない。
服装は、シスターが着るような、中世風の黒いドレスっぽい服を着ている。
しかし、形状こそ人間と同じだが、親近感はまったく沸かない。
やたらと大きな頭に、丸い剥き出しのオレンジ色の目をしていて酷く不気味だ。
現地のイギリスのレポーターが、おそるおそる宇宙人に話しかける。
「よろしければ記者会見こちらでお願いできますか?」
モノリスのすぐ横に設置された演説台を指さした。
宇宙人はどうやら了承したらしく、無言でそちらの方へと滑らかに浮遊するように移動してくれた。
演説台の周りには、各国の国境が掲げられていた。
宇宙人の旗は分からないので、例の銀色の月の写真を印刷された物を旗として使っている。
我々地球人の国旗と宇宙人の旗を交互に並べ、少しでも友好的なムードを作ろうとしていた。
宇宙人が演説台に着くと、代表してイギリスのアナウンサーがこう、質問を切り出す。
「記者会見を開くという話ですが、私たち地球人に何を伝えるという……」
そこまで言いかけると、空中に光りのディスプレイが現れ、
『
と表示された。
各国のレポーターは黙り込む。しばらく沈黙が続いた後、宇宙人はゆっくりと口らしきものを開いた。
「ワレワレは宇宙人ダ」
「おおぉー」、とレポーター達が一斉に沸く。
「挨拶はコレでよかったカナ。
それでは最初に質問を受け付けよう。聞きたいこともあるだろうからネ」
この発言を受けてレポーター達の目が輝いた
イギリスのアナウンサーが、まず質問を切り出した。
「あなた方は何処からやってきたのですか?」
「あっちダ」
宇宙人は空を指さした。
カメラはその先を追うのだが、指の先にはイギリスの曇りがちの空が映るばかりだ。
「……ええと、すいません。私たちに分かるように場所を説明してもらえませんか?」
「そうだな、君たちの名前で言うと『プレアデス星団』と言ったかナ。
君たちの距離の単位でいうと443光年ほど先にある星だヨ」
443光年か、かなり遠いな。
数光年ぐらいなら、たいした科学力が無くともなんとかなりそうなものだけど、これだけ遠いと相当な科学力が無ければ来られない。おそらく今の人類では想像できないような力を持っているに違いないだろう。
しばらくすると、テレビに字幕で「プレアデス星団は、日本では『すばる』と呼ばれています」と解説が入った。この名前は、僕でも聞いたことはある。まあ、どこにあるのかは位置は分からないけど……
続いてレポータから、この質問が飛びだした。
「もしかして以前に地球に来たことありますか?」
「良い質問だね。ワレワレはこの星には初めてやって来たのだヨ」
「そ、そうなのですか。私たちはその姿は見たことがあるのですが……」
「それは、ほらさ、お互い初対面な訳だしドレスコードって大事じゃない。
ここは君たちの惑星な訳だから、ワレワレは君たちの宇宙人のイメージに合わせないと行けないと思う訳よ。
『宇宙人遭遇』でグークル検索したら画像にこの姿が現れてね。
だからこのメイクで来た訳だヨ」
「は、はぁ。そうなんですか」
な、なんか恐ろしい姿とはかけ離れていて、ずいぶんと馴れ馴れしい感じだな。
でもこれは、フレンドリーと言えばフレンドリーなのかもしれない。良い兆候と言えるだろう。
次にアナウンサーが、おそらくみんなが最も知りたい質問を聞いた。
「ところで、この星には何をしにやって来たのですか?」
「おっ、本題だね。聞いちゃう。もう本題を聞いちゃうかイ?」
「はい、是非お願いします」
「その前にちょっといいカナ」
「ええ、なんでしょう」
「遅いヨ! 何で使者の船を送ってこないの?
この惑星の時間単位で一年も待っちゃったヨ」
「それは私たち人類の技術力が足りないので……」
「分かってる『人類には、うちの宇宙船に到達が出来ない』とかでしょ。テレビで見たヨ。
でもジョークだと思ったよ。ほんとうに来られないとは思いもしなかったヨ
おととい、ようやく本気で言ってるんだと気がついたヨ!」
アナウンサーを切れ気味で問い詰める。
「も、申し訳ありません」
代表のイギリスのアナウンサーが謝る。
本人は不本意だろうけど、まあしょうがない。地球を代表してあやまっておいてくれ。
「まあ、イイヤ。その事はどうでもいいとして『何をしにやって来たか』という事だよネ」
「はい、そうです」
「では語ろうかナ。ワレワレの目的を」
いよいよ記者会見のメインテーマが始まった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます