第10話 強敵②
すでにミノタウロスのHPゲージは緑ゲージの半分を切っている。
「エリー!支援魔法を!」
りきとーさんが叫ぶと、後方で待機していた支援系魔法使いのエリーさんがりきとーさんに「ライジング・アジリティ/俊敏上昇」の魔法を掛ける。
「ライジング・アジリティ」の魔法を掛けられたりきとーさんは剣を下段に構えてミノタウロスに一気に切り込む。その際に剣が赤色に光っていた。武技だ。
さっきの武技でミノタウロスのHPゲージも緑の五分の一ほどまで減った。
「行くぞ!」
その声に合わせて、魔法職以外の三人は己の武器を構え、敵に向かって武技を放つ。
「スラッシュ!」
「風刃!」
「一閃!」
それぞれが、己の中距離で最大の威力を出せる武技を放つ。これでミノタウロスのHPゲージは黄色に入るはずだ。
ウモモモォォォォゥゥゥゥ!!
ミノタウロスが叫ぶ。ボス系のモンスターが放つ
魔法職の二人は急いで前衛の三人にシールド系の魔法を掛けようとしているが少し遅い。
ミノタウロスはハウルを放った後に手に持った石斧を腰に溜めるような形に構えると、一気に横に振るう。振るわれた石斧は赤く光り、空気を切ったように、紅く光った衝撃波が三人に迫る。
武技は別にプレイヤー系の専売特許ではない。敵も当たり前のように放ってくる。先のハウルも武技の一種だ。そう考えるとモンスターの放つ武技の方が優秀であるともいえるだろう。
放たれた衝撃波は動くことのできない俺たちに直撃し、HPバーを五分の一ほど削っていく。
りきとーさんにはエリーさんが回復魔法を掛けている。流石は回復魔法。りきとーさんの体を緑色のオーラが纏ったと思ったら一気に五分の四までHPバーが回復している。
一緒に攻撃を受けたグリーンさんが俺の方を見て、何かを言っている。いや、口は動かしてないけどその視線で何を言いたいかが分かる。
俺はアイテムパレットからギガポーションを取り出し、一つをグリーンさんに渡し、もう一本を自分で飲み干す。メガポーションを作ってから気づいたのだが、ギガポーション以上のポーションになるとポーション独特だと思っていた苦みが消え、とても飲みやすくなった。
ギガポーションを飲み干すと、俺たちのHPバーは完全に回復し、りきとーさんが何か言いたそうな顔をしている。まぁ、今は戦闘中だ。我慢してもらおう。
俺たちが回復し終わるまで時間を稼いでくれていた攻撃系魔法使いのミレイさんの攻撃が止む。そこからはまた前衛職の俺たちの番だ。残念ながらすぐには武技を打つことはできないので、通常攻撃をあて、ちまちまとHPを減らしていく。
■
ミレイさんが放った火球が当たり、ミノタウロスが少し後退する。その瞬間を逃さずに一気に三人で、三方向から近寄る。ちまちま攻撃を仕掛けていたことにより、武技も再び放てるようにもなった。これで黄色ゲージとはおさらばだ。
「パワースラッシュ!」
「瞬閃!」
「一閃突き!」
近距離の武技が炸裂する。
一歩後ろにのけぞる感じでミノタウロスの体が浮くと、態勢を崩し、背中から倒れる。先の武技でしっかりとHPゲージは黄色を削り、赤までいっている。
「退却するぞ!」
りきとーさんの言葉で俺たち5人はこの広間から上層に向かう出口に走り出す。
しかし逃がす気はないらしい。出口には見えない壁のようなものが張られており、通過することができない。
「クソッ!」
噂には聞いていた。ボス系モンスター限定の特殊能力「フィールド化」。ボス系モンスター出現地はボスエリアとなり、特定のアイテムか、そのエリアのボスを倒さない限り抜け出すことはできない。俺らは今回ボス討伐に来たわけではないから転移系アイテムは持っていない。まぁ、倒すしかないってことだ。
赤ゲージに変わってもハウルを放ってくることはなく、石斧を杖代わりに立ち上がると、地面に向かって勢いよく手に持っていた石斧を叩きつけた。なぜ砕けない?と言わんばかりの力で打ち付けられた石斧は、そこから周囲に波上に広がるように地面を伝っての衝撃波を放つ。要は地震だ。
迫ってくる衝撃波はハウルと同じ効果を持っており、これには魔法職の二人も耐えることはできなかったようだ。
地面に打ち付けられた石斧を地面から引き抜くと同時に、傍にあった壁に手を突っ込む。そこからはもう一本の石斧が姿を現す。そして、もともと持っていた石斧を俺らめがけて投げつける。ブーメランのように。そして俺らに当たった石斧は綺麗な円を描きながら綺麗にミノタウロスの片手に収まる形で戻ってくる。
今回ばかりはりきとーさんのパーティーも回復はきついだろう。俺はアイテムパレットから三本のギガポーションを取り出し、グリーさんに一本、りきとーさん達のパーティーに一本分のポーションを振りかける。ポーションは振りかけることでも効果が出る。効果は半分ほどに下がってしまうが。最後に俺がポーションを飲み干し、グリーンさんと俺は満タン。りきとーさん達はあとちょっとのところまで回復した。
さぁ、最後の戦いだ!
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