第百三十二話 地下倉庫
ブロンの更生は出来た、、、と思う。
その歳で、自分好みの女の子を作るのが楽しみ、とか言ってるのは流石にまずいからね。
ちゃんと、神を作り出すのが楽しみ、とか考えないといけないよ。
それも違うか。
ブロンが正しい道に戻れた事で、女神作りも許可が出た。
なんだよ、女神作りって言葉は。
女神の素体となる人形族を求めて人形族屋さんに再び来ていた。
「これはこれはお客様。あの人形族はいかがでしたでしょうか」
「ああ、ええ。とてもいい機体ですね。性能もいいしカスタマイズもやりやすかったですよ」
「それはようございました。本日はどのようなご用件でしょうか」
「えっと、もう一体、人形族が欲しいなって思いまして」
「そうでございますか。お気に入りいただき、ありがとうございます。次はどのようなタイプがお望みでしょうか」
そうだな。
前は初心者でも扱いやすいタイプだったらしいから、今度はもう少し玄人向けでもいいかな。
「グラニット重工の上位機種はどんなのがあるんですか?」
「それでは、カタログがございますので、あちらの商談スペースでご説明いたしましょう」
パーテーションで区切られた区画に案内される。
椅子に座って待っていると、さっきの店員さんがカタログを持ってきた。
「お待たせいたしました。こちらが、グラニット重工の本年度のカタログでございます。こちらが、先月フルモデルチェンジしたばかりのフラグシップモデルとなるB5でございます。前回、お買い上げいただいたC1の1つ上のモデルとなっております」
「フルモデルチェンジ、ねえ。えっと、確か、、、S1とか言うのはあるんですか?」
ここに来る前に家で調べてわかった事だけど、S1というのは、アリアの機種の事だ。
ステータス画面の端にモデル名として書いてあった。
「S1は、グラニット重工の最高機種でございますね。これも今年新しく変わったばかりの最新機種となります。このモデルは神の機体と言われておりまして、品質、性能、カスタマイズ性など、どれを取っても最高グレードを誇っております」
やっぱり、一番すごい機体なんだな。
「その分お高いんでしょう?」
「ええ、そうですね。それなりには。前回のC1が8体程買えるお値段となっております」
うひょう。1億かあ、、、。
アリアたっかあ。
もうちょっと大事に使わないとだね。
「C1が、、、そうだな、4体分くらい買える値段のモデルはありませんか」
「それでしたら、S100という、S1の2つ下のモデルではいかがでしょうか。税抜きで4850万フォルクとなっております」
カタログでS1とS100と、その間にもS5というのもあって、それぞれ見比べてみる、、、けど、違いがよくわからないや。
最大マナ量とか、最高出力とか、燃費とかどれも違いなんて無いように見える。
そのほんのちょっとの違いで値段なこうまで差が出るものなのだろうか。
カタログにはモデルごとに備わっている機能だとか、性能の違いが細かく書いてある。
その辺は面白そうだとは思うんだけど、今は気にしていられない物ばかりだ。
S1だとマナを自然の植物などから充マナできるオプションがあるとか、とても気になるけど、今はそこに引っかかっている時間はない。
パラパラとカタログのページをめくっていくと最後の方に、モデルごとに何が備わっているのか、どれがメーカーオプションなのか、という比較表があった。
それを見ると一目瞭然で性能差が分かった。
だけど、こう見るとS100でも良さそうに見える。
値段的にもS100が丁度いいかな。
比較表の下の方を見てみると、モデル別の可能職業や可能種族が目に入る。
そこを見ると、S1とS5だけが「神、女神、天使、精霊」が職業に選べるとあった。
S100は「精霊、天使まで」となっていて、女神が選べなかった。
ダメじゃん。
これ買っても女神に出来ないじゃん。
危ない危ない。
こういうのはよく読んでおかないといけないね。
S5の値段を見ると、、、、8250万フォルク?!
そんなにお金ない、、、かな。
ありそうな気もするけど、貯金が無くなっちゃう。
「ああ、、、その、このS5というのは、このお値段、なんですよ、、、ね」
「はい。S1からマナリンクポートやヴェラルドリンクポートを半分に減らしたり、色の指定を1,677万色から65,536色に減らす事でここまでの価格を実現しております。価格としましては、やはりこれが限界となりますね」
ですよね。
「えっと。そのすみません。少し検討させて貰えますか?」
「はい、もちろんでございます。あれこれ考えるのも楽しみの一つですので、じっくりとご検討くださいませ」
店員さんには悪いことしちゃったかもしれないな。
女神にするには、8000万必要か。
前回も税だとか保証だとか色々かかったもんな。
ここは、国防費という事で、国にいくらか出して貰えないか、聞いてみるか。
国を守る為に必要な事だもんね。
「そんな金どこから出てくるんだよ」
「そんなあ、国防ですよ?国防。この国を守る為なら8000万くらいポンと出せるでしょ?」
「防衛費は予算が全て決まってしまってますからね。今からその金額を捻出するのは難しいかと思いますよ」
ダメか。
国王のところに来てみたけど、やっぱり断られてしまった。
まあ、分かってたけどね。
国王ならポケットマネーとかで1億くらい出せるかと思ったけど、意外とお金持ってないみたいだ。
「人形族でしたら、王宮の地下倉庫に古いのがあった筈ですので、それでよろしければ差し上げますよ?アールブ族が絶滅してしまってから、精霊術師というのに使われなくなりましたから、誰ももう使わないでしょうしね」
「王宮にもアールブ族が居たんですか?」
「ええ、過去には人工精霊省と言うのがあって、人工精霊を使役して労働力にしていた時代もあったんです。その時にアールブの方達にはそこで働いてもらっていたそうです」
へえ。アールブは元々精霊としても働いていたって言うし、この国ではかなり活躍していたんだな。
地下倉庫の鍵を借りて、王宮の地下一階へ階段を降りていく。
地上階と違って、地階は岩むき出しの壁や床だし、照明も少なく薄暗い。
え?何?急にダンジョンっぽいんだけど。
ぴちょん、、、、ぴちょん、、、、
建物の中なのに何で水が垂れてきてるんだよ。
どこか水漏れしてるんじゃないの?
分かれ道はないけど、何度も曲がり角が出てくる。
左に曲がったら、次は右、もう一度右、左。
何でまっすぐに出来ないんだか。
左、右、右、右。
待て!右3回って、元の場所に戻ってないか?
何で元に戻ってないんだ?
あ、そうか、2つ目の右の後に長めに歩いているのか。
ああ、びっくりした。
いや、それなら最初から右一回でいいじゃん!
………一人で突っ込んでても仕方ないな。
何かを大きく左から巻いているのかもしれないしね。
奥に来るに連れて、ダンジョン風味はどんどん増してくる。
壁は苔むして来たし、岩がゴツゴツし始めて来た。
なんかこう、そこの曲がり角を左に曲がったら魔物とか出てきそうな雰囲気だよ。
そう思って曲がってみたら、、、行き止まりだった。
え?分岐とか無かったよね。
ここまで来たのに、何も無いとか、、、。
もっと普通の倉庫があるだけだと思ったけど、こんな所に一人で来させないでよね。
行き止まりの壁まで来てみる。
すると、岩壁に鉄の板が挟まっていて、そこには何か文章とその横には数字のボタンが0から9まで並んでいた。
『地下に降りる階段からここまでに左に曲がった数を10の位、右に曲がった数を1の位とした2桁の数字を入力すべし。最後に確認ボタンを押すべし』
何だこれ。
えっと左は4回、右は4回だったか?5回だったか?
こんなの覚えてるかよ!
仕方ない何回かやってみるか。
44と確認ボタン、と。
『ブブー外れ。あと一回失敗すると、ブラントストフの爆裂が発動して、この辺り一帯を吹き飛ばします』
間違いのペナルティが強すぎだよ!
中の物も失う位の威力は要らないよ!
というか、王宮になんて危ない仕掛けを入れてるんだよ!
じゃあ、45で入れてみるか。
いや、待てよ。曲がり角の数なんてちゃんと数えたなんか居ないぞ。
一度戻って数えながら来るしか無いか。
この倉庫を開けようとしてるだけで、死と隣り合わせってどんな倉庫だよ!
結局、一度階段まで戻ってから、左、右と今度は数えながらまたここまで戻って来た。
やっぱり45で合っていたようだ。
ボタンで45確認と押した。
『本当にそれでよろしいですね?』
どうしろと。
確認ボタンを押してみる。
『最終確認?』
よくわからん。また確認を押す。
『……………』
いや、早く結果を言ってよ。
『……………………』
ま、まだ?
『正解!』
何だよ。引っ張るから間違えたのかと思ったじゃ無いか。
これで、ここの壁が扉になって開くのかな。
それじゃあ、この預かっている鍵は何のためにあるんだよ。
と、思ったら、鉄の板がぱかんと開いて、中から鍵穴が出てきた。
………最初からこの鍵穴でいいじゃ無いか。
色々と上に戻ったら文句を言ってやりたいけど、今はこの中が大事だ。
鍵穴に鍵を差し込み鍵を開ける。
かちゃり、と音がしてから、ゴゴゴゴと壁全体が後ろに退がり始める。
そして、壁が横にズレると、そこには広い部屋があった。
ごくり
こ、ここが地下倉庫。
いや、倉庫なんだから普通の場所なんだろうけど、ここに来るまでがダンジョンみたいだったから、下手したらここに宝を守る魔物とかいるんじゃ無いの?とか思わず考えちゃうよね。
でも、中を見て、魔物は居ないな〜ってすぐに分かった。
さっきまでとは違って、倉庫は本当に倉庫だったからだ。
棚が整然と並んでいて、その上には箱に物が入れられて、管理番号が割り振られ、きっちりと整理整頓されていた。
中がこれなのに何で来るまでの道がアレなんだかな。
まあいいや。目当ての物を探そう。
人形族は人工精霊省の管轄だから、S-01からS-05までの棚のようだ。
ええっと、OPQ、、、R、S、あった。
この辺りの棚か。
S-5の棚の下の方に人が入るほどの大きな箱がいくつかあった。
これがみんな人形族の入った箱なのかな。
一つずつ棚から降ろして、蓋を外してみる。
箱の中には確かに人形族が入っていたけど、この地下倉庫に一人で箱を開けたら、人の形をした物が出てくるとか、ちょっとした恐怖演劇物だよね。
顔がのっぺりしてるからまだ人形らしさがあって平気だけどさ。
後頭部のスイッチを長押しして起動してみる。
グラニット重工 C1
ああ、これC1だったんだ。
モデルチェンジする前の物なのかな。
何だ、買わなくてもここで貰えたんじゃないかよ。
なんかこれを貰ったら悔しいからこれは持っていかない。
スイッチを長押しして停止したら、蓋をして元の位置に戻す。
次だ次!
隣の箱を引きずり出して、蓋をあける。
やっぱり、のっぺらとした人形族だ。
あ、ちょっと違う。
何が違うのかよく分からないけど、多分これグラニットのじゃないよ。、
これも起動してみる。
バソールト製作所 BM-06a
おお、やっぱり、別メーカーの物だったな。
グラニットじゃ無いのを使ってみるのも良いのかな?
でも、これ型番がかなり古い物だよな。
起動はしたけど、ちゃんと動くものなのかな。
だって、さっきからクルクルが止まらないよ?
画面を触っても何も動かないし。
あ。
『デバイスドライバーが古い為、正常に起動出来ませんでした。セーフモードで起動しますか?』
やっぱりダメそうだな。
これも停止させて元に戻した。
古いのばかりならさっきのC1でも仕方ないか。
あ、いや、あれじゃあ、女神にできないから貰ってもダメか。
その後、残りの3つの箱を全て調べてみたけど、全部古いタイプのモデルで起動すらしないものもあったりした。
「うぃ〜、ダメだったか〜」
仕方ない。貧乏王国の倉庫にそんな良いものがあるはずないか。
んー。あ、そうか。
「セラフの翼。第一の翼 神判代行。対象、人形族」
『対象は見つかりませんでした。初期化前の人形族も検索しますか?』
「おお?いけるか?検索する!」
『検索中………。対象、6体が見つかりました。リスト表示します』
バソールト製作所 BM-06a
グラニット重工 C1
バソールト製作所 BM-04 リミテッドエディション
バソールト製作所 BM-09
バソールト製作所 BM-06a
グラニット重工 S1
ぬおおお!S1!
え?え?どこにあるの?
その大きさの箱もうないよ?!
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