第十四話 パーティ
部隊編成スキルが出来上がった。
早速試してみよう。
「部隊編成」
部隊編成
部隊に登録する人物を指定してください。
ザフィーア=フェルゼン=シュタイン Lv3
マルモア=ペルレ=テュルキース Lv1
ブローンセ=メッスィング=テュルキース Lv1
カルラ・コリント Lv1
参加メンバー
なし
ふむ。ここから、部隊に入れたい人を選べば良いのか。
って、最後の人は誰だ?
あぁ、今後ろを通り過ぎた店員さんの名前かぁ。
見えていない人が実はいました、かと思って焦ったよ。
近くにいれば誰でも範囲に含まれるみたいだな。
勝手にパーティに入れられたら、びっくりしそうだ。
それに、これって、名前を隠してても真の名がバレバレだね。
マルモはマルモア、ブロンはブローンセが本名か。
母親が違うから真ん中の家名が違うのかな。
フィアを選んでみるとしよう。
「リン?本当に大丈夫?いつもわたしがきつく当たってしまったからかしら。そんなつもりはなかったのよ。つい反応が面白くて……。え。これは、何?」
面白がっていたのか。
もしかして、思っていたより嫌われては、いない?
そこも気になるけど、今は部隊編成の方だ。
「僕が今した事が原因で出てるのかも。何か書いてあるかな?」
「部隊編成。ええと、『リーンハルト・フォルトナー』さんからパーティへの参加要請が来ています。参加を許諾しますか?ですって。この拒否するというのを押せば良いのかしら」
やっぱり嫌われてる?
「そこは、許諾する、でお願いします」
我儘ね、と言いながら、許諾を押してくれた。
ホントに許諾の方を押したよね。信じてるよ。
あ、良かった。許諾されました、って言うメッセージが表示されて、参加メンバーの所にフィアの名前が移動したよ。
上手くいきそうだから、次はマルモの番だ。
マルモの名前を選んでみる。
「マルモ。今君の目の前に何か表示されたでしょ?その許諾するって方を押してもらえる?」
「読めない……」
まだ難しいか。
「フィア。許諾は左右どっち側だったかな?」
「右よ…」
うう、フィアが段々険しい顔になってきたよ。
マルモに右のボタンを押してもらって、無事参加メンバーに登録された。
最後にブロンだ。
おおっ、ブロンはやる気だねぇ。
人差し指を立てて、今か今かと待っている。
男の子はボタンを押すの好きだもんね。
「ブロン行くぞ。右を押すんだからな」
「うん!早く押したい!」
ふふふっ。ブロンにも参加要請を出して、ボタンを押させた。
押し終わったら、物足りなさそうにこっちを見るんじゃありません。また今度何かで押させて上げるから。
よし、これで今作成中の経験値譲渡が出来上がればうまく行くはずだ。
その前にフィアには、先に説明しておくか。
さっきからフィアの睨み方が出会った頃並みになってるよ。
レーゲンの森に向かいながらフィアにこれから何をするのかを説明していた。
レーゲンの森は道沿いの森の浅い所なら、出てくる魔物もあまり強くない。
アルメルウサギ発見!
みんなに後ろで待機してもらって、僕は一人で倒しにかかる。
その前にここに来るまでに出来上がった経験値譲渡も忘れず起動しておいた。
レベル差もあるし、アルメルウサギは簡単に倒す事ができた。
これで、経験値が均等に3人に分配されたはずだけど……。
あぁ、これじゃあわかんないな。
でも、フィアは別としても、マルモたちは魔物となんて戦ったことは無いだろうし、あと6回か7回倒せば、はっきりするだろう。
最初のアルメルウサギから7回目の戦闘が終わった時に、マルモとブロンが、うわわっ、とか、ふおおっ、とか言い出した。
想定していた通りにレベルアップできたみたいだ。
始めは僕が持っている経験値+500pとアルメルウサギの経験値1pを足して20%にした100.2pを3人で割ると33.4pになるのか、それとも33pにしかならないのか分からなかった。
前者なら、6回の戦闘で丁度200pとなり、レベル2になれる。
だけど、実際にレベルアップしたのは、7回目だった。
つまり、みんなに分配するのは、小数点以下は切り捨てられた33pだったということだ。
それと、もう一つ分かったことがある。
ほとんどの戦闘はアルメルウサギがクロモリウサギを1匹ずつ倒していたけど、一回だけ2匹をほぼ同時に倒していた。
だから、7回の戦闘だけど、8匹倒している。
それなのに、レベルアップは6回目ではなく、7回目だったから、+500pが付くのは、倒した魔物の数ではなくて、1回の戦闘毎に付くという判定がされているようだ。
それを予想して複数一度に魔物が出てきても、1匹倒した後に、一度少し後ろに下がって、戦闘の経験値が入り終わったと思われるタイミングを待ってから、もう一度前に出て倒すという面倒な事をしなくてはいけなかった。
2人はあともう一つくらい上げておきたいな。
レベル1からレベル3にまで上げるには全部で800p必要だから、さっきまでの7回を除くと、あと18匹倒せば、レベル3になるはず。
「はっ!これは、レベルアップ?本当に戦っていないのに上がった……」
お、フィアもレベルが上がったか。
ステータスで確認してる。いいなあ、やっぱり僕もステータス・ウィンドウ作ろうかな。
その後、計算通りに1回目のレベルアップから18匹目で、マルモとブロンもめでたくレベル3になった。
「にいちゃん、にいちゃん。ボクつよくなった?」
ブロンがニコニコしながら話しかけてくれた。
おおお、なんか懐かれてきたか?
苦労してやった甲斐があるよ。
「マルモはあの人に心を許してはだめよ」
せっかくマルモも僕の事をキラキラした目で見てくれてたのに。
あれ?もしかして、嫉妬して……、そんな訳ないか。
フィアはレベル4、マルモとブロンはレベル3になったし、これで少しは安心かな。
クエストもこの4人で行ければ、お金も早くたまりそうだ。
ラナを早く助けないと。そして、フィアの笑顔を見るんだ。
2人の子たちが、レベル3になって、クエストに連れ回しても問題なくなったので、それからは、どんどんクエストをこなしていった。
僕は2段にあがり、クランも中級クランという階位になった。
お金もあと1回のクエストで溜まりそうだ。
まだラナは誰にも買われていない。
王族に関係しているから買い手がなかなか付かないのだと、フィアは明かしてくれた。
理由はよく分からないけど、まだ助けられるのはいい事だ。
最後のクエストを終えて、ギルドに戻ってくる。
「お疲れ様。リンくん。討伐部位はいつものようにそこに置いてね」
今日はレティが完了受付だった。
いつも、相手してあげられなくてごめんね。
これで、少し時間ができるから、どこかに遊びに行こう。
あ、あれ?何でそこでフィアが睨んでくるの?
まだ何も言ってないよ?
通帳からお金を全て引き出して、すぐに奴隷センターに向かう。
マルモとブロンはレティがギルドのカウンターで見ていてくれている。
奴隷センターの受付にラナを買い取りたいと申し出る。
これで、さっき買い手が付きましたとかなってないよね。
奥の個室にフィアと一緒に通されて、少し待つ。
しばらくすると、反対の扉からビシッとした格好のナイスミドルな男性とフィアを少し大人にしたような女の子が入ってきた。
「フィア!」
「お姉ちゃん!」
2人は抱き合って涙を流している。
良かった。間に合って良かった。
早速、契約をしてもらう。
「そちらのお嬢様は、エルツ族でいらっしゃいますね」
何!やばいか。
こうなったら、武力行使で2人を連れて、あとはギルドに行って、マルモたちも連れて、どこか遠くの国に……。
「ほっほっ。そう身構え無くても大丈夫でございますよ。
エルツ族のお方だとしても、どうこうしようと言うわけではありませんのでご安心ください。ただ、手続きの都合上、種族の確認が必要になるのです。この王国では、法律でエルツ族の方を主人とした奴隷…おほん、失礼、主従契約をする訳にはいかないのです」
だ、大丈夫なのか。
焦った。こういう時の為に逃走経路とか用意しておこう。
それにしても、そんな法律があるのか。
「ここは、ご存知の通り、奴隷センターと揶揄されておりますが、種族による差別はしておりません。ですので、エルツ族の方が買い取りに来られるのは全く問題ございません。どなたか別種族の方に代理で主従契約をしてもらうなどやりようはいくらでもありますので。割とエルツ族の方はいらっしゃるのですよ。そちらのお嬢様のように、親しい方を助けにね」
と、ウィンクしてくる。こっちにしないでよ。
いや、フィアにもだめだけど。
だとすると。
「はい。あなた様は人族でいらっしゃるようですので、問題なく主従契約をしていただけます。今回の主従契約は少し特殊な条件が付いておりますので、主従契約期間は10年となります。その間の契約解除や譲渡はできませんので、ご了承くださいませ」
10年?そんなにか。でも、仕方ない、僕が主人になるしかない。
「フィアもラ…グラナトさんもいいかな?」
危ない危ない、初対面でいきなり愛称で呼んじゃうところだったよ。
2人とも頷き同意してくれる。
フィアはともかく、ラナは仕方ないとはいえ良いのかな。
今までの奴隷と変わらないなら、フィアと居られるだけでも良いと考えてくれてるといいんだけど。
「じゃあ、僕が主従契約をするので手続きをお願いします」
男性が首肯して、ラナの首に付けられている奴隷の首輪に何か操作をしている。
本当の名前は「ネックレス型主従契約証明端末」と言うらしい。
さっきまで首輪の中心が赤く光っていたのが白く光っている。
そこに人差し指を当てるように言われて、その通りにする。
なんだか恥ずかしいな。フィアは睨まないでよ。
「うおっ」
びっくりした。
ノード接続
『グラナト=フェルゼン=シュタイン』さんをスレーブノードに接続登録しますか?
TTL:315.36Ms
[拒否する] [許諾する]
こんなのが出てきた。
驚いて声が出たから、周りに見られてる。
スレーブって、そりゃ奴隷って意味だけど、これは違う意味に感じるな。
315.36Msって、Mが100万だから、3億1536万秒だと?
あ、これが10年の意味か。
こんなの他の人も毎回出てくるのかな?
許諾する、を押す。
ノード接続
『グラナト=フェルゼン=シュタイン』さんを許諾しました。
『グラナト=フェルゼン=シュタイン』さんをスレーブノードに接続登録しました。
絶対服従スキルを作成しました。
全ノードに絶対服従スキルを適用しました。
メッセージスキルを作成しました。
ノード1にメッセージスキルを強制インストールできませんでした。
現在のアカウントにスキル操作権限が無いため管理者権限に切り替えます。
全ノードにメッセージスキルを強制インストールしました。
経験値共有スキルを作成しました。
全ノードに経験値共有スキルを適用しました。
全ノードに経験値共有スキルを強制インストールしました。
なんかいっぱい出てきた。
絶対服従とか、こんなの要らないよ。
消せないかな。
TTL経過まで削除および無効化はできません、って表示されてできなかった。
まあとにかく、主従契約も出来たし、奴隷センターにもライヒェン金貨5枚と大銀貨3枚を支払って、これでラナを助け出せたぞ。
ようやくフィアの笑顔を見る事が出来た。
主従契約もスレーブノード接続というのも、僕さえ何もしなければ問題ないだろう。
これでフィアもラナと一緒にエルツの国に帰るのかなぁ。
ちょっと寂しいけど、フィアが幸せになるなら、それが良い。
もうちょっと仲良くなりたかったけどね。
マルモとブロンも一緒に帰れるといいな。
2人を迎えにレティの所にに行こう。
レティにも後でお礼をしておこう。
ギルドに戻り、奥の個室を借りて、レティたちに無事ラナを取り戻せた事を報告してラナをみんなに紹介した。
僕も初対面なんだけどさ。
「ぐすん、本当に良かったわね、フィア」
「レティ。ありがとう。あなたにもお世話になったわね。
これで、国に帰れるわ」
「え?」
最後のはレティでは無い。
ラナだ。
「お姉ちゃ……姉さま?国に帰りたく無いの?もう奴隷にはされないでしょうけど、私たちにとっては暮らしていくのは大変よ。それにパ……お父様やお母様に会いたく無いの?ディアだっているのよ?」
「そう…なんだけど…」
ん?何故そこで僕を見る?
あ、主従契約か。
「僕は構わなくて良いよ。便宜上、僕が主従契約相手になったけど、キミを縛るつもりはないよ。好きにして大丈夫だから、国に帰っても構わないよ」
あれ?ラナは何故ムッとしてるの?
「私はあなたの物です。あなたに一生仕えます。だから、国に帰れなんて言わないでください」
ええっ。これって、絶対服従スキルが発動でもしてるの?
「姉さま。どうしちゃったの?リン!あなた姉さまに何したの?また変なスキルで姉さまを惑わしてるのではないの?」
おおう。過去最高に険しい目で睨まれてるよ。
やっぱりスキルなのか。
「違うわフィア。これは私の意志よ。会ったこともない私の為に、お金を作ってくれて、私の種族とかも気にせず、10年なんて長い期間の契約をしてくれたのよ。しかも、こんなかわいい男の子なのよ!…あ、今のは無しで。と、とにかく、私はこのお方の所にいます。居続けます。良いですよね、ご主人様」
「ご主人様はやめて欲しいかな。リンで良いよ」
何故だか好意を持たれてる。
フィアの代わりに仕方無しに主従契約をしただけなんだし、そのやり取りも聞いていたはずなんだけどなぁ。
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