第71話 宣戦布告です
お茶の準備をして戻ってきたマリーは何故か一緒にたくさんのお菓子やケーキを持ってきた。
私を元気付けようとしてくれたのだろう、心配させてしまったことを謝れば事情を聞かれメアリーが戻ってくるのを待って私は二人に何があったのか簡単に説明した。
「ジェード様に振られてしまったの」
その一言で。
メアリーは動じなかったが、あまりにもあっさりとした説明に付き添ってくれていたエドワードは苦笑浮かべる。
「……まぁ、まぁまぁ…」
マリーは徐にケーキと一緒に持ってきていたフォークを手に取ったかと思うと部屋を出ようとする。
「マ、マリー?」
「安心してください姫様、今すぐ私が姫様の悲しみを百倍にして返して参りますわ」
百倍返し!?
フォークで何するつもりなの!?
急に恐ろしい事を口にしたマリーの前にメアリーが立ちはだかり冷静に宥める。
「落ち着きなさい、マリー。フォークではたかが知れてます、相手は騎士なのですからせめて剣と同等の武器でなければ」
メアリー!?止めるかと思いきやまさかそこなの!?
「そうですわねメアリー…私、庭師の方に高枝専用の鋏を借りてきます」
「待って待って!マリーやめて!そうじゃないの、私はまだ諦めてないから!少しは悲しかったけど、大丈夫だから!」
慌てて腰に抱き付くとマリーは眉を下げて私を抱き締めてくれる。
「姫様……本当に処分しなくてよろしいので?」
「しなくていい!寧ろしないで!」
「分かりました、姫様がそう仰るなら……」
残念そうにマリーはフォークを元の場所に戻す。
安堵する私の後ろでエドワードがぼそっと「王女殿下の侍女は個性的ですね」と呟いていたけれど私だって知らなかったよ!?こんなにマリーが暴走するなんて!!
なんとかマリーが落ち着いたので脱線してしまった話を戻す。
「さっきも言ったけれど私はジェード様を諦めるつもりはないの。エドワード様が教えてくださったわ、『相手にしてもらえないのなら相手にされるまで挑戦すればいい』って。だから私は挑戦しようと思う。マリーやメアリーにはそれを手伝って欲しいの。サポートというか…私の補助みたいな感じで」
「もちろん、いくらでもお力になりますわ」
「私共は永遠に姫様の侍女ですから」
即答を得たのは嬉しいけどうちの侍女、私の事好きすぎだろう。
ありがたいけど少し怖い…
そう思っているとエドワードが自分もと協力を申し出てくれた。
「私にも協力させてくれませんか?」
「……エドワード様…よろしいのですか?」
「えぇ、王女殿下がどのような事をなさるのかとても興味があるのです」
そう言いながら笑みを浮かべるエドワードはどこか楽しそうに見える。
「ありがとうございます。まず大前提として私はジェード様に相手にされるように訓練しようと思います」
私の発した言葉にマリーが首をかしげる。
「訓練……騎士のように剣術でも習うのですか?」
「そうよ」
さらりと答えた私にメアリーが目を瞬かせる。
「まさか姫様、近々行われる剣技大会に参加なさるおつもりで?」
「えぇ、そのまさかよ」
「正気ですか?何年も訓練した騎士に王女殿下が勝てるわけが……」
私の言葉にエドワードが眉間にシワを寄せて尋ねてくる。
「確かに体力や技術では到底敵わないでしょう、ですから知恵で補うのです。そして私はジェード様に勝ちます」
不敵に笑う私をぽかんと見詰める二人。
メアリーだけは楽しげに微笑み返すのだった。
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