童貞の中の童貞。
自らを童帝と名乗る日ノ陰縁は、恋愛至上主義の学園に一石を投じる。
恋など性欲の私的表現にすぎない。どっかの文豪が言った言葉を心に刻み、恋愛などくだらないと言い切る様は、なかなかに痛快だ。
そんな中、学園一のモテ女、恋愛マスターの異名をとる恋中いろはに呼び出される。
一緒に恋愛至上主義を、ぶっ壊そう。
共通の目的が示されることでわかりやすい道筋が見えてくるし、女子に抱く感情を恋ではなく性欲だと主義に則った発言をする姿はとても人間らしい。
恋愛をする自由があるのなら
恋愛をしない自由もあるはずだ。
めんどくさいしエッチだし変な奴ばっかりだしゲスイ奴らも一杯いる。
その不器用さはきっと、全てが青春なんだろう。
非モテの代表である男子高校生・日ノ陰縁と、学園一の美少女だがモテすぎるあまりに恋愛嫌いになった恋中いろは、正反対の二人が結託して学園に蔓延する恋愛賛美の風潮をぶち壊すアンチ恋愛学園ラブコメ。
「童帝」というPNで恋愛批判を訴える主人公・日ノ陰縁は、アンチ恋愛を掲げる思想家だが、ヒロインの恋中いろははアンチ恋愛テロリストともいうべき強硬派で、その過激ぶりに苦笑い。
恋愛賛成派であっても、恋愛に夢中になって周りの迷惑を顧みないバカップルは、眉を顰める存在だろう。そんな自分勝手なリア充に立ち向かわんとするのが痛快なのだ。
自分たちの支持を集めるため、生徒の恋愛相談に応じるのだが、経験豊富にみえて恋愛経験ゼロな恋中のポンコツなアドバイスを、非モテな日ノ陰がフォローしていく姿が愉快だ。
共犯者として結託しながら、異性として魅力的すぎる恋中に恋をしないように必死に自制する日ノ陰の葛藤がニヤリとさせる。
恋愛の素晴らしさだけでなく、嫉妬や執着といった愛憎の醜さも描き出した作品だ。
(青春ラブコメ賛成派VS否定派/文=愛咲優詩)