2章 脳筋プロテイン少女の恋
恋ってのはするもんじゃない、落ちるもんなんだ
何かしらの目標が出来た場合、それをいかにして達成するか。
その目的を達成する場合、どのような方法をとるべきなのか。
それを一重に手段と言うわけだが、手段を遂行するのは大抵の場合手間がかかるし、
そしてこの手の話は、
例えばそれは、教室の後方でお喋りをしている連中など、その筆頭にあたるのかもしれない。
「なぁ
「その話、桐生も知ってるのか。じゃあ狙ってあげようかな小山さん」
「ああっ? おい待てって! おめぇこの前、赤校の子に手ェ出したろうがよ!」
そんな会話をしているのは、たしか桐生と神木と言ったはずだ。
聞いた話によると
「コイツ最近マジ遊びすぎじゃね? どんだけ女喰ってんだよ。なあ、二階堂」
桐生に呼ばれたソイツは、「かもな」と言って微笑んだ。その微笑みは男である俺であっても、なんだかドキっとするほどに爽やかだった。
「てか神木、あんま女の子に手を出してるといつか刺されるぞ」
そんなことを言って「ははっ」と笑ったこの男こそ、
二階堂は桐生と同じ野球部所属。そして、なんの面白みもない言い方ではあるが、学校一のイケメンである。どのくらいイケメンなのかと言えば、他校の女子生徒に「
つまり枕詞的な意味として「二階堂」の名前が用いられるくらいに、彼はイケメンなのである。ま、他校の女子生徒と話したことなんてないからよく知らんが。
と、そこで耳につく声がして、教室中腹に視線を向けてみれば、なにやらビッチがいた。
「つーかさ。昨日のアイツ。童帝じゃなかったんだけど。マジありえない」
言ってご立腹な表情を浮かべるは、
「それな。でもさ、アイツの反応超面白くなかった?」
「だよねー。女子と話したことないんだよ絶対」
そう言ったのは蛸島と蜂谷蜜葉である。鮫島一派であり、鮫島同様にDTK。
恐らく今あの3人の話題は、昨日、旧館の旧教室で襲ったあの男子生徒のことなのだろう。
しかし、あの男子生徒はナニをされたのだろうか。怖くてあの旧教室を覗けなかったけど、すすり泣きみたいなのが聞こえたし。本当に女なしでは生きていけない心と身体にされてしまったのだろうか。てかあれ、元を辿ればあの女が悪い。
そいつの名前が出たついでに教室前方を見ると、女子生徒数名とお喋りをしている
……しかし恋中のやつ。恋愛アンチの割にはフツーに恋愛絡みの話に乗ってるんだよな。あ、いや。でもちょっとだけ困った顔してる。なるほど、体裁を取り繕うため猫被ってんのか。
現在、朝のHR前の時間。俺は廊下側後方にある自分の席に座り、そんな光景を眺めていた。
教室内でお喋りに興じるクラスメイトたちは、先の三グループに代表されるように恋愛関連のネタを話題にする割合が高い。
にしてもなんだろう。奴らは恋愛がしたいから恋愛をしているような気がしてならない。恋に恋しているというやつだ。てかさ、恋ってのはするもんじゃないと思うぜ。落ちるもんなんだぜ。まあ、童貞だからしらんけど。
なんて、恋愛上級者的思考を妄想によってトレースして遊んでいるとチャイムが鳴って、担任教師が教室に入ってきた。それにともないクラスの連中は各々席自分の席へと戻っていく。
と、そこで。自分の席に向かって歩く恋中と眼が合った。
する彼女は人差し指を唇に添え、いたずらっぽく笑う。
突如、心の奥底に閉じ込めていた感情がむらむらと湧いてきた。心臓が高鳴り、鼓動が早くなる。心なしか呼吸が早くなり、自分の頬が紅潮しているのがわかる。……ああ、これはまさに……恋、などではない。欲情してるのだ、恋中に。
ふと、自分の唇に昨日の感触が蘇る。にしても、恋中の唇……柔らか過ぎんだろ。
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