行列

 覗こう。覗こう――地獄の窯の中を覗こう。其処までの道は万人に拓かれ、人類の得た恍惚に似る。故に誰もが底を魅力的に想い、愉快な咆哮を轟かせるのだ。此れが魂からの渇望で在り、我等が最も咀嚼すべき頑健たる丸薬――フニクリフニクラ――高らかに詩を宙へと届けよう。最下至高の業々へと届けるべきだ。何。貴様は列車に乗りたいのか。ならば其方に並ぶが好い。彼方も此方も大行列だがな。結婚例え話など幸せの欠片でも在らず、人生は不幸の渦巻きで仕方がない。ならば必要不可欠なのは陽気な音楽と沿った行進だ。冒涜的な魔笛とフルートの狂騒に身を委ね、光輝に満ちた山を登ろう。貌の知れぬ神々の美に精神を震わせ、闇黒に果てた虚空へと到ろう――フニクリフニクラ。フニクリフニクラ――ああ。未曽有の群れが我等を誘うぞ。ああ。未曽有の生命どもが我等を歓迎するぞ。楽園に棲む糞の唾棄が降り注ぐ。今だ! 未だに解らぬ豚の涎へ、忌まわしきものへ、逸脱の悦びを晒し尽くせ。衣を脱ぎ棄てるのだ。剥ぐように衣を放棄するのだ。死の愛情を臓物もって憑き嗤うのだ。ふにくりと。ふにくらと嘲るのだ。ああ。墜落の時は訪れた。皆! 飛び込むが好い!


 ――剥こう。剥こう。ゴーント護謨パンツを。

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