集うものども

 皆は焼き魚を如何に食む。小骨が苦手で嫌悪するのか。小骨を外せば突けるものか。骨も丸々咀嚼し尽くすのか。いっそ。刺身の方が好物だと笑う人間も在るだろう。されど私は身にも骨にも興味は無い。こりりとした、ぶにゅりが大好物なのだ。可愛らしくもグロテスクな、今にも動き出しそうなもの。川の底でも海の果てでも変わらぬ感触。彼等の大切な部位を嘲笑する行為。知性と本能の根源ども。ああ。正解だ。私が魚を食す際、最も望むものは脳髄――特に目玉で在る。黒に濁ったギョロリの輪郭。此れを噛み潰す事こそが愉悦の至極で、素晴らしい愛情とも思考可能だ。皆には理解不可能だが、己の脳味噌は『愛』だと認識する。ええと。失礼。あいの間違いだった――人間が育むべき愛とは頭脳の活性化で在り、目玉には見通す力が漲る。故に焼き魚の水晶は総てを措いて収めるべき食物なのだ。ええい。嫌悪するのは何事か。ヰ=ハンスレーに満ちた栄養も無碍に落とすのか。まあ。何でも好い。私は此れから海に身を投げ、真の楽園に到達するのだ。視よ。御馳走がてけりりと鳴き始めたぞ。此処まで大量の目玉が在るものか。仲間の群れが泳ぎ続ける。たまらないものだ。私は彼らと共に大司祭の心臓を啜るのだ。む。在れは何だ。巨大な物体がぎょろりんと私を睨め憑ける。喰らうべきだ。我こそが先に――皆が食材に集う――ざばあ。宙を舞う。私達。


 今日のご飯はインスマス面よ!

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