砂浜、アナタを捕まえて

 愛情とは如何に確かめれば好いものか。俺は時々、酷い杞憂に急襲される。世界に蔓延る『恋』とは何なのだ。世界に蔓延る、地獄のような感情の炎は何なのだ。多重に到達する感情の渦巻き。毒とも薬とも思考容易な、人間の悪魔じみた輪郭。もはや。俺に点けられた『此れ』は留まりも鎮静も知らない。故に最愛を掲げよう。故に最高への道を拓き尽くそう。ああ。貴女――金色で美しい髪。濁り始めた薄赤ピンクの瞳。鮮やかな――貴女。俺の思い。想いは絶対だと伝えねば! 先ずは場所だ。幸いな事に貴女は海を好むもの。重ねて幸いな事に貴女は此度、綺麗な肌色を空の下で! 俺は太陽が。雲が。総てが羨ましい。貴女の貌を覗き込む、自然の群れに嫉妬を抱く。さて。彼方だ。此方だ。遂に告白の時が訪れた。俺の心は熱に狂う臓物だ。駆けろ。駆けろ――びゅぅう……風が貴女の髪を攫う。否。可笑しい。俺が視たのは貴女の髪だ。金に輝く光の洪水だ。されど貴女は何処に在る。されど貴女は何処に消えた。ああ。神よ! 愛とは儚く融けるものか! 探さねば。衝動に圧されるが儘に。為されるが儘に。辛い世界が俺を抱擁する。ぐらり――唐突で在った。地面が浮かぶ。砂が海の如くウネリ堕す――何処からか囁き声が耳朶を擽る――俺は如何なる夢の中――砂浜クティーラ、貴方を捕まえて。

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