一撃で

 しゅるる――俺の耳朶を擽る音色。生を絶ち斬る愉悦の刹那。夜鷹どもの囁きが俺の所業を望んで昂る。地獄とも楽園とも思考し難い、狭間の呼び声が全を包む。死だ。純粋な死と罪への憤怒が俺の精神を沸騰させる。純粋な飛沫と罰への哄笑が俺の腕を空に導く。涙も悲鳴も笑顔も沈黙も、総ては現の瞬間の為に到来するのだ。視よ。此れが誇り高き最期の斧で在る。聴け。此れが埃を祓う人間の咆哮だ。ぶぅううん――死が涌いた。赤色が咲いた。宙を舞うのは如何なる球体。滑稽なほどに舌が踊る。俺は裁いたのだ。俺が捌くのだ。理由だと。要らないものは破棄して終え! 罪は罪だ。罰の喝采を聞いた存在は俺の快楽の為に死に絶えるのだ。誰もが俺を王と呼ぶ。ああ。そうだ。俺こそが此処の支配者。即ち、処刑人で在る。文句を垂れる糞餓鬼など数年前に消え去った。暴力が法だ。たまらない世の中よ。寛容と嗤う莫迦どもが懐かしい! 此れも一種の寛容だと知るが好い。俺は人間の共食いを赦したのだ。泣いて悦ぶ女子供が、隆々たる『もの』に貪り啜られる。至福の時間に最期の贖罪。食材――俺は解放を齎したのだ。クトゥルー! 星は遂に揃う。揃えた首と同じ位置で輝くのだ。暗黒に万歳! 貌の無い化身に山羊の群れ。斧を掲げよ。俺達の神が――轟く撃。舞い散る同胞の血肉。何が起きた。誰が俺達を……殺されたのは数名だ。闘う意志は在るのだが『あれ』は何だ。斧でも剣でも槍でも無い、ちっぽけな丸い口――臓腑を混ぜる絶叫が。

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