エピローグ

「さて、それじゃあヴァイス」

「待って。気持ちを整理させて」

 あーあ、負けちゃった。

 仕方ないから、伯爵に話しかけることで気持ちを整理しなければ、ね。

「伯爵」

「はい、姫様」

「これで、私達が(現金類の)賭博行為を行っていないというのは、証明されたでしょう?」

「ええ」

「それに、決闘の立会人として。龍野君の勝利、見届けたわよね?」

「はい、確かに」

 簡素な言葉で、しかし正確な事実を告げた伯爵。うふふ、だから信頼出来るのよね。

「さて、もういいわね。龍野君、

「ああ」

 龍野君が呼吸を整え、その言葉を告げる。

 うふふ、うふふふふふふ。一体何を命令されてしまうのでしょう、私は。ああ、龍野君。貴方のけもの、見せてちょうだい――


「ヴァイス、明日一日デートしろ」


 え?

「デ……デート?」

「ああ。『何でも聞く』と言った以上、やってもらうぜ」

「いえ、それはいいの。やるから。けれど、ちょっと待って龍野君。もっとこう、過激な命令とかは、しないのかしら?」

「あ? しねえし、そもそもそういうアイデア自体がねえよ」

「……」

 うふふ。この朴念仁ぼくねんじんめ。

 だったら、デートのクライマックスまで取っておくわ。ええ、取っておくわよ、私の願望にして欲望といえるものを。うふふふふふふ……。


 けれど、スッキリしたわ。

 それは、から。

 大部分は運も絡んだけれど、それでも「龍野君を鍛え上げることは出来た」から。これでいいのよ。


 さて、それでは。

「二人とも」

「はい」

「あいよ」


「この会場を、片付けるとしましょうか」


     *


 勝負の翌日。

 私はデートのために、ヴァレンティア城の庭で龍野君を待っていた。

「わりい、遅れたぜ!」

 うふふ。約束の時間まで、まだ五分もあるのに。

「大丈夫よ、龍野君。気にしてないわ」

 ええ。私はすぐにでも、楽しみたいの。


 このデートを、ね


「それじゃあ、ヴァイス」

「ええ、行きましょうか」


 こうして、私達の戦いは終わった。

 けれど、私は確信しているわ。

 私達の絆は、今まで以上に深まったと、ね。

 うふふ、龍野君。これからもずっと、よろしくね。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

隠す手札、明かす役 有原ハリアー @BlackKnight

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ