試合開始(その5)

 伯爵にカードを配ってもらった私は、手札を確認する。

 「ハートの3」「スペードの5」「ダイヤの6」「クラブの7」「ジョーカー」。

 悩むわね。

 これは放置してもいいわ。

「伯爵。2枚、交換を」

 そう思っていると、龍野君の声。

 仕掛けたわね、うふふ。

 けれど、もう微笑まない。これ以上は、意味が無いのですから。


 既に敗北を喫した以上は、純粋な勝負。

 手は尽くしつつも、その後は神頼み。

 ふふ、興奮してきたわ。


「ではお二方、開示を」

 伯爵の合図も、もう聞きなれたわね。

 私と龍野君は、それぞれカードを開示する。


 私は先ほどと同じ、「ストレート」。

 一方、龍野君は……あら。

 「ダイヤの10」、「ハートのJ」、「スペードのQ」、「ハートのK」、「ジョーカー」。

 同じ「ストレート」ね。

 けれど、これは……。


「なあ、ヴァイス」

 やっぱり。龍野君が口を開いたわね。

「これ、同じ『ストレート』だよな? どっちの勝ちなんだ?」

 まあ、「知ってた」とでも言うべき質問ね。

 けれど私は、あくまで冷静に答える。

「龍野君の勝ちよ」

「どうして?」

 うふふ。きっちり理由も聞くあたり、しっかりしているわね、龍野君。

「同じ役の場合、手持ちの中で一番強いカードで優劣を決めるの。私達は『ジョーカー』を共通して持っているから、それ以外の4枚で一番上の数字のカードを1つ出すの。私は『7』、龍野君は『K』、つまり『13』ね。強い、つまり大きい数字のカードを持っているのは龍野君。だから、龍野君の勝ちなのよ。わかったかしら?」

「ああ、ありがとよ」

 龍野君、納得してくれたようね。

 私は4つの駒を伯爵に渡すと、龍野君に提案をした。

「ねえ、龍野君」

「何だ?」


「そろそろ、決着を付けない?」


「いいぜ、どうするつもりだ?」

「そうね……、というのはどうかしら?」

「乗ったぜ」

 双方合意の元での、最終勝負。

 今、火蓋が切って落とされたわ。


残りの駒

  龍野:4個

ヴァイス:3個

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