試合開始(その3)

 その後も、試合は続いた。

 姫様は駒を15個で保っていたが、須王龍野は負け続け、残り6個となっていたのだ。

「龍野君。そろそろハンデを設けるわ」

「何だ? ヴァイス」

 初耳だった。私も、彼も。

「私は、『龍野君が賭けた駒の2倍、駒を賭けなくてはならない』。例えば、龍野君が1つ駒を賭けたのなら、私は2つ賭ける必要がある。おわかりかしら?」

「ああ、わかったぜ。俺が断っても、強行するだろうからな」

「ふふ、よくわかっているじゃない」

 須王龍野がナイトを1つ置く。すると姫様は、ポーンを2つ置いた。さらに2つ、ナイトを置いた。

「龍野君。貴方ももう1つ、賭けてもらうわよ」

「あいよ」

 再び、須王龍野がもう1つのナイトを置く。

 だが、仮に駒を失うこととなっても、姫様は15分の4。対して、須王龍野が失うことになる駒は、6分の2。

 単純な比では、須王龍野が失う駒の割合が大きかった。

 何より、焦りが彼を狂わせていた。

 実際、彼はこの次の勝負を降りてしまったのだ。


 というだけで。


 手札を回収したとき、それぞれの手札を拝見した。

 須王龍野の役は、「ハート・ダイヤ・スペードの7」と「ハート・スペードの8」のフルハウス。

 対して姫様の役は、「」であった。

 つまり、姫様の微笑みはハッタリだった。

(しかし、私が彼に伝えることは出来ない。私はあくまで仲介者であり、中立だ。余計な手出しは出来ない……!)

 私は歯噛みしながら、二人がそれぞれ2つ、4つの駒を置いたのを確認すると、次の手札を配った。


残りの駒

  龍野:4個

ヴァイス:15個

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