試合開始(その2)

 次に須王龍野に配ったカードは、「ハートの3」「ハートの5」「スペードの7」「ハートのJ」「ハートのQ」であった。

(仲間はずれが1枚……これならどうだ?)

 私に1枚の交換を要求し、「スペードの7」を彼は捨てる。


 次に渡したカードは、「ハートの8」だ。


(フフ、持っているな須王龍野。だが、姫様はそれ以上の強運を持っておられる。どこまで勝てるか、見せてもらおうか……!)

 私は中立を示しつつも、内心で須王龍野を応援していた。

「伯爵。私も2枚の交換を」

 姫様が交換を要求された。すぐさまカードを交換する。

「ありがとうございます。うふふ……」

 やはり、笑っておられる。

 先ほどの「ファイブカード」という、圧倒的な役。

 須王龍野にも幸運はあるが、姫様の幸運はそれ以上だと判断せざるをえなかった。

「それでは、開示を」

 私の号令で、二人が手札を開いた。


 須王龍野は、「ハートの3, 5, 8, J, Q」。つまり「ハートのフラッシュ」。

 最初の勝負で、姫様に勝利した手札だ。


 対する姫様は、「スペードの3, 4, 5, 6, 7」。つまり「スペードの」。


 姫様の、勝利だ。

「また負けた、か」

「諦めないで、龍野君」

 落ち込む須王龍野と、励まされる姫様。

 その様子を見た私は、ひと段落したのを見届けてから口を開いた。

「では、次の勝負を」

 私は須王龍野から黒のクイーンを貰い、側に置いた。そして場のカードを回収すると、賭けベットを促した。

 須王龍野は、ポーンを1つ出した。

「龍野君。ポーンはもう一つ出しなさい」

 姫様の言葉に、私と彼は揃って驚愕した。


 姫様は、ポーンを2置かれたのだ。


「ヴァイス、それは?」

 疑問を投げかける須王龍野。

 姫様は、ゆっくりと口を開かれた。

「『レイズ』よ。賭ける駒をつり上げるの。もっとも、当面は2個を上限とするけれどね」

「わかった」

 彼は納得した様子を見せると、ポーンをもう1つ置いた。


 須王龍野の手札を確認すると、「ダイヤの7」「クラブの7」「ダイヤの8」「スペードの8」「ハートの5」。

(ツーペアか……。しかしジョーカーが使えるこのワイルドポーカー、まだ逆転は出来るぞ)

 私は須王龍野の手札を分析すると、姫様の手札を拝見しようとする。しかし姫様は、カードを伏せてテーブルの上に置かれた。

(どうやら、見せてくださる意思はお持ちでないようでいらっしゃる。仕方がない、私も姫様を分析させていただくか……)

 そう思っていると、須王龍野からカードの交換を要求された。

(思った通りだ……!)

 枚数は1枚。交換を終えた後で渡されたカードを見ると、「ハートの5」であった。

(どれどれ……)

 私は須王龍野のカードを見ると、「ジョーカー」であった。

(「フルハウス」……! なるほど、これだけの強さならば勝てる……!)

 彼本人の様子を見ると、やはり笑みを浮かべていた。まあ、当然だろう。

 これだけの強さを持つ役は、なかなか揃えられないのだから。

(では、姫様は……?)

 姫様の様子を見る。


 やはり、笑みを浮かべられていた。


(となると、まさか……強い役を、揃えられたのですか?)

 私は内心で姫様に問いかけるが、姫様は相も変わらず笑みを浮かべたままであった。

「ではお二方、開示を」

 私の号令に応じ、それぞれの役を開示した。

 須王龍野の役は、相も変わらず「フルハウス」。勝てる戦いだ。


 対して、姫様の役は――


 「ハート・ダイヤ・スペード・クラブの5と、ハートの6」。「フォー・オブ・ア・カインド」だった。


「ヴァイス、強すぎだろ……!」

「いいえ。大したものではないわ、龍野君」

 姫様は2つの黒いポーンを手に取られると、私の側へ置かれた。

 私はカードを回収すると、シャッフルしてから配り始めた。


残りの駒

  龍野:12個

ヴァイス:15個

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