第1話 転生術式
ここは、何処だ…??
この空間には何も無い。ただただ闇が広がっているだけ。自分を構成する何かが消えてゆくのがわかる
ああ、俺はこのまま死んでいくのか…
「クハハハハハ!!無様だな!勇者よ!!」
ふと脳裏に蘇るのはあの光景。魔王城でのあの出来事だ。最初は
次はルーヴェンスとリンファだった。アルテミアの裏切り、そしてエリーゼの死に激昂した彼は自身の
ルーヴェンスのその恐るべき速射技術によって放たれた矢は合計6本。それら1つ1つが必殺の威力を秘めた一撃。仮に防いだとしても魔王には兵装を全開にした俺が、|裏切り者には真紅のオーラを迸らせたリンファが追撃に向かっていた。
そしてルーヴェンスの矢がそれぞれに炸裂し、俺は魔王に追撃を加えようしたその時、横から強烈な魔法が俺へと襲いかかる。直撃してしまった俺はそのまま壁までふっ飛ばされてしまった。
一体何が起こったのか。そう混乱する俺の目に飛び込んできたのは衝撃の光景だった。それは|裏切り者をルーヴェンスと追撃しに行ったリンファの腹に大きな風穴が2つ空き、左腕は吹き飛んでいてリンファの右腕はルーヴェンスの胸の辺りを貫通していたのだ。そして元々ルーヴェンスが居た位置には爆笑している裏切り者。そうか、相転移の術式が使えたのか。魔王が止めとばかりに黒い光線を放った。ルーヴェンスは死にかけていたが、それでも仲間であり恋人でとあるリンファをだけでも助けようと彼女突き飛ばそうとしたがそれよりも早くリンファがルーヴェンスに抱き着いていた。最期は一緒よ。そう言っていた気がした。
こうして2人は殺された。卑劣な裏切りによって想い人を攻撃させられ、最期は魔王によってその生涯を閉じた。この後、俺は魔王の転移魔法によって聖女であるシルフィーナとその護衛数人以外がみんな死に絶え、地獄とかした聖王国へと転移する事となったのだ。
俺はこの無念を、怨みを、怒りを、悲しみを、彼らの非業な死を忘れて消えていくだろうか?…ふざけるな。俺が忘れる?そんなこと許されない。あってはならない。
今度こそ俺は俺の大事な物を護りきってみせる。
その為なら俺は……!!!
『
どこまでも暗い闇の中、俺はどこか聞き覚えのある声と共に光に包まれていき…
<hr>
ブゥンッ!
湖の近くに魔法陣が現れる。それはとても眩い光を放っていた。そして光が収まると、そこには
<hr>
「ここは………??」
意識が戻った時、俺は見覚えの無い湖のほとりに居た。俺はあの時死んだ筈だが、何故まだ生きてるのだろうか?。そして起き上がろうと体に力を込めたとき、違和感を感じる。
(何だ……?力が入りにくいのもあるが体が軽く感じる。それに服がでかい??……まさか!?)
そのまさかだった。意識を取り戻した俺の体は縮んでいた。もしやと思い湖の水面に映った自分の姿を確認する。なんとそこには10歳程の男の子の顔があった。いや、これは10歳の時の俺だ。髪は白くなっているが見前違えようが無い。
確か意識を失う直前、聞き慣れた機械音声が『転生術式。
「まさか10歳頃の自分に生まれ変わるとは…。ん?これは転生っていうのか?」
何だか違う気がするが、とりあえずこのボロボロの格好をどうにかすることにした。
「使えるといいな…。
魔力を込めてそう詠唱すると虚空から手のひらサイズ1枚の板の様な物が出てくる。この
「えっと……。うん。ちゃんと使えるな。」
片手に板を握って出したいものをイメージする。そうすると虚空より厚めの白いシャツと黒のレギンスが出てくる。これらの服には
「
格納庫を閉鎖し、次に現在地を把握しようとしたのだがこれは失敗に終わった。通常転移の魔法は訪れたことのある場所ならば魔力の持つ限りどこからでも発動することができる。だが、発動した術式は発動途中で霧散してしまった。この現象は魔力不足、もしくはその地に行ったことが無い場合に発生する。後者は絶対に有り得ない為、魔力不足かと思った俺は星を見て手がかりを得ようと空を見上げる。
だがそこには驚きの光景が広がっていた。
「…………っ!!なんで月が2個あるんだよ…!!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます