転生勇者は間違えない
@ccd6960
第0話 世界の終わり
クハハハハ!!!そんなものか!勇者よ!」
魔王が手を振るうたび、その荒れ狂う魔力により地形が変わる。既に守るべき王国の城は崩壊し、辺りは死屍累々となっている。
「止めろ…止めろぉぉぉ!!!!」
「アハハハハハハ!!!
魔王の横に立つ女の魔法で今度は大地が割れた。だが、幸いにもこれ以上死者が出ることは無いだろう。何故ならもうこの場で生きている人間は数人。
勇者である俺。聖女であるシルフィーナとその護衛の騎士。そして裏切り者の魔法使い、アルテミア。
今高笑いしながら魔法を放った奴がその裏切り者だ。彼女の裏切りによって聖王国は崩壊したと言っても過言ではない。
「もう、終わりなのですね……」
「まだだ!!
『
「ほう、まだそれだけの力が残っていたのか」
「あ、じゃあアタシ聖女貰いまーす」
機械音声と共に俺の右腕に白い鎧が現れる。これは敵に合わせてその形を千変万化に変化させる勇者専用装備|戦略兵装・夢幻(インフィニティ・バトルアーツ)の中で最も魔王に有効な兵装だ。
だが傷付いた俺にはもうそれを全開で使いこなすことはできない。辺りには様々な死体があった。四肢を吹き飛ばされた者、全身を捩じ切られて死んだ者、火炙りにされた者、腹を裂かれた者。皆、皆俺が弱いから死んだ。守れなかった。だがらせめて、一撃だけでも、そして彼らの無念を…!!!
「
『
「喰らえ魔王!!!!!!」
その剣から放たれる極光は天を裂きその悉くを絶ち切る。魔を滅する事に特化したその巨大なる斬撃はまさに神話の一撃。そのまま魔王を両断するかに思えた。が、
「クク、まさに全身全霊の一撃といったところか。ならば貴様の仲間の力で打ち砕いてくれよう。【
「馬鹿なっ!?」
神剣の一撃は魔王の手で掴まれていた。しかも片手で白刃取り。何故か、それは魔王が使った魔法によるものだろう。この魔法の元々の持ち主は賢者エリーゼ。彼女は言葉数こそ少なかったがいつも俺達の事を心配してくれていた。そのせいか付与魔法が一番得意になったらしい。
「【
次に使用したのは|弓矢使い(アーチャー)のルーヴェンスが良く使用していた技で、瞬間的に魔力限界まで高める技だ。彼は戦闘中に的確な援護で敵を射抜く狙撃手で、戦い方、野営の仕方など、色々な事を俺に教えてくれていて、俺は彼を兄の様に慕っていた。
「ふ、他愛ない。【爆砕拳・紅蓮】」
「がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!」
少し戦闘狂の気があった女格闘家、リンファの防御
無視の一撃が突き刺さる。その拳が放つ衝撃波からはまるで体中の骨や内蔵そのものを内側から破壊されるような痛みが走った。
ドォォォォン!!!凄まじい勢いで地面に叩きつけられる。辺りにはクレーターができ、俺の体は深々とめり込んでいる。口からはヒューヒューという空気の漏れるような音がした。吐血も止まらない。
これは間違いなく致命傷だ。
『生命力低下。兵装強制解除。』
「フハハハハハハハ!!!どうだ!これぞ我が
「く………そ……が……がふっ!!」
「アハハハハ!!!ねぇ?今どんな気分?ねぇ?ねぇ?」
「アル、デ、ミ、アァ……ッ!」
いつの間にかこっち2にやってきて俺を嘲笑してくる
「終わりにしてくれよう。死ね。勇者。」
「じゃあアタシも!!|
荒れ狂う魔力の奔流。今の俺に防ぐ手段は無い。
ああ、憎い。魔王が、アルテミアが、そして無力な自分が。何一つ守れず俺は死んでいくのか…。
その時俺の体に金髪碧眼の女が覆いかぶさった。聖女のシルフィーナだ。
「独りでは逝かせませんよ。私も、一緒です。」
見れば彼女には右目と右腕が失くなっていた。そうか、アルテミアにやられていたのか。
「今、まで、ありが、どう。ジル、ブィ、ナ」
「こちらこそ。貴方は最高の勇者でした。ゼクス、私は貴方が大好きです。」
続きの言葉は話せなかった。そこまで言ったところで俺達は魔力の奔流に飲み込まれてしまったからだ
そして薄れゆく意識の中、俺はこう祈った。
(ああ、神よ、もし、もし来世があったのなら、今度こそ俺は……)
そこで俺の意識は完全に無くなった。
<hr>
『強い残留思念を確認。
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