3、ヤサシイトコロ
※ ※ ※
しばらく歩いたが、人がほとんどいない。本当に全く知らない土地だった。
どこか木々が多い森のようなところに入った辺りで目を瞑って歩いて、と言われ、その通りにする。流石に少し怖かったけど、樹斗に逆らってもいいことがないことくらい知っている。なんてったって元いじめっ子だから。それにさっき美味しいプリン食べさせてもらったし。
目を瞑っていても手を引っ張ってもらってるため、一人で迷子になるなんてことはなかった。
「……ねー、どこいくの?ちょっと疲れた……」
「目、開けちゃだめ?」
樹斗は何も答えない。ただ私の手を引っ張って歩くだけだ。私が何度も同じ質問を繰り返すと、だんだんと引っ張る力と手に込められている力が強くなっていっているような気がした。
「ふぎゃっ」
木の根っこに足を取られ、変な声を上げて転んだ。膝にじわりと血が滲む感覚がする。
「大丈夫?」
やっと何か喋ってくれた……と思いながら、うん、大丈夫。と返し、立ち上がる。すると突然、体が宙に浮いた。
「なっ…おろして!」
樹斗に、おんぶされている。驚きと共に、恥ずかしさが私の顔を覆い、流石に目を開けた。重いから、重いからおろして……!!!! と、全力で足をバタバタさせる。が、思い虚しく、その願いが叶えられることはなかった。無理はさせたくないんだよ、という言葉に顔を埋めてただただ赤面するしかなかった。
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