2、眠たい電車

※         ※        ※

 電車の中でうとうとする。なぜか私は昔から乗り物に乗ると眠くなってしまう。隣に誰かが居ようが居まいが。

 

 今日は樹斗がプリンを食べに行こう、と誘ってくれたのだ。三ヶ月前、十二月。まだ受験生だった頃。いいお店見つけたんだ、今度行こうって誘ってくれたのが、まさか現実になるとは思っていなかった。

 そもそもなぜ誘われたかというと、まぁ彼氏彼女だったら普通にプリンくらい何もなくても食べに行ったりするのだろうけど、私達はちょっと違った。

『いつでも見れるように、写真が一枚欲しい。好きなアングルで一枚だけ撮らせて?』

 という樹斗の言葉から始まったのだ。写真を取られるのが嫌いな私は最初は嫌だと言い張っていたものの、結局はプリン一個で妥協して折れた。その後、どうせなら美味しいものを食べてほしいから、と今日お店に行くことになったのだ。張り切っている樹斗を見ていると、コンビニの焼きプリンでよかったのになぁ。なんて、言い出せなかった。

 実際、プリンは本当に美味しかった。口の中ですぐにとろけて消えてしまう、今まで食べたことのない滑らかさだった。コンビニのプリンの比ではない。食べ始めようとしたときに店員さんに止められて食べ方を説明されたときは、さすがに驚いたけど。

 今でも程よい甘さが、ほのかに残っている。あぁもうプリン大好き。きっと満足しきっているから、余計うとうとしてしまうんだろう。ちなみに写真はまだ撮ってない。報酬は前払いだったらしい。ふはー、いい思いしたぁ。きっとそれなりにお値段張るんだろうな……。


 突然、

「乗り換えるよ」

 と、手を引っ張られた。あれ、行きは乗り換えなんてしなかったはずなのに。まぁ電車のことは私より樹斗の方が分かるから、大丈夫か。

 そのままついていき、また電車に乗る。数分電車に揺られてついた駅は、知らない田舎のようなところだった。

「ねぇ、ここ、どこ?」

 秘密、と言うと樹斗はニタァと笑う。なにかよからぬことを考えているのはすぐに分かったが、もうどうしようもない。どうせ、一人じゃ帰れないのだから。

 どこか冒険のようでわくわくもしていたため、私は大人しくついていくことにした。

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