77 問・出口はどこにありますか? そもそも存在しますか?

 さて、牢屋から出たのはいいけれれど、これからどうすればいいのだろう?


「出れたのはいいけれど、ここからどうするの?」


 シェミーも同じことを考えていたらしく、そんなことを口にした。


「だよねぇ~」

「考えてないのですか……」


 あの、メリッサさん。

 いかにも「まあ、知ってましたけど」と付け加えそうな声音で言うの、やめてくれないかな?


 どうやらムーシュはメリッサの中に戻ったらしい。


「じゃあ、逆に出口どこにあるのか知ってるの?」


 ふたりは首を横に振る。


「でしょ~。ふたりも人のこと言えないでしょ~」

「それはそうですけど……」

「ねえ……?」


 どうしてそんなに不満げなの!?

 この件に関しては、大差なくない!?


「……とりあえず、邪竜がいる方向に進みますか? それが今わかっている情報ですし」


 一息をついてから、メリッサは切り出す。


「まあ、そうなるよねぇ」


 現在の状況でわかってることは、ここが王宮の地下であり、邪竜がいるってことだけ。

 う~ん。まったく情報がない。驚くほど何もわかってない。


「でも、これがザリチュの計画の一部だったとしたら、私たちここから出られない可能性が高くない? そもそも、牢屋に入れられていたんだから、出させる気ないよね……?」


 3人が3人とも思っていたであろう疑問を、シェミーが口にした。

 だよね~、そうだよね~。そうに決まってるよね~。

 メリッサの方を見ると、彼女もうなずいていた。


「牢屋に入れといて脱出ルートを示す方がどうかしてるし」


 ゲームとかなら、地図があったり、脱出の段階が決まってたりするんだけどなぁ。

 現実はそんなにあまくないよねぇ。


「とりあえず、進むしかないよねぇ」


 牢屋を破壊してしまった以上、ここにとどまっている理由もない。

 そもそも誰が好んで牢屋なんかにいたいと思うのか。


 そうして、私たちは歩き出した。



 * * *



 道中にはいろいろな罠が仕掛けられていたり、魔物がいたり、厄介だった。

 絶対に逃がさないぞという意思を感じられる。殺意が高い。当たり前だけど。


 普通の人であれば、どこかで死んでいてもおかしくはない難易度だ。私たちには関係ない。

 魔物は私が倒すし、罠なんかはシェミーやメリッサが先に見つけてくれて、ほとんど怪我をすることなく進めてる。

 唯一の難点としては数が多いので、疲れる。とにかく疲れる。


「それにしても、他に牢屋ないんだね? あと、人もいない」


 何度目かの魔物の群れを倒し終わり、気を紛らわすために話をふる。


 結構進んできたのに、出会うのは魔物ばかりで、捕まっている罪人もそれを監視する看守もいなかった。

 少しくらい人がいてもいいのに。そしたら、いい感じの情報が手に入ったのかもしれないのになぁ。


「まあ、私たちを閉じ込めるだけに作られたんじゃない? 罠とか魔物とかの量、考えられないほど多いし」

「マジ? そんな大がかりなことする?」

「私たちためっていうか、強敵を閉じ込めるためって可能性もあるけど」


 確かに。

 普通の牢屋だとしたら、脱出をさせないための仕掛けが多すぎる。

 ちょっと出ただけで死にそうになる牢屋ってなんだよ。

 脱出した罪人よりも、看守のほうが命の危険あるな。


「だったら、出口なくない? 出したくないんだし」

「ないってことはないんだろうけど、出入り口は特殊な構造になっているのかもしれないよね」

「私たちがここに連れてこられたときも、アズダハーの転移魔法の魔法陣でしたし……」


 あれ? あれれ?

 これ、私たち出られなくない?


 出入りの方法が特殊な魔法陣だったとしたら、そんなのわかるはずがない。

 いくら私でも、空間を魔法で広げているであろうこの場所を壊すことはできない。


 王宮の床まで穴をあけるのに、どれくらいの魔力を使うかわからないし。

 普通の地下牢だったら、ぶち抜いてたけどなぁ……。

 だって、その方が楽だし。余計な手間がない。


「……もしかして、アズダハーとかドゥルジとかが来てくれるの待つしかない?」

「来てくれると思う?」

「……すべてが終わったあとなら?」

「ダメじゃん」

「だよねぇ」


 あいつらが食事とかなにやらを気づかって、顔を出してくれるとは思えない。

 餓死しても構わないとか思ってそう。というか、むしろそれで倒せたらラッキーって思ってるだろ絶対。


 私が倒せるし、アエーシュマを仲間に戻せる。

 あいつらにとっては美味しすぎない?


「とにかく、進むしかないです。邪竜が何かを知っているかもしれませんし」


 メリッサの言う通りだ。

 それしかできることがない。


 ほんの少しの望みにかけて、進むしかない。


「はあ、行くか~。頑張るか~」


 こんなめんどくさいことしないで、正面から挑んできてくれれば楽なのになぁ。

 みんながみんな、そうであれば私はとっても生きやすいのに。


「頑張ろう」

「頑張りましょう」


 気合を入れ直すために、私たちは拳を突き合わせた。



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