4節 跡継ぎ問題解決しちゃいます☆

105 宝庫探索(国王様と2人きり)

 さてさて、シェミー誘拐事件解決から、早くも2週間が過ぎた今日この日。

 ――――私はまた、城にいる。


 どうしてどうしてどうして?! こう王族でも国の重要な役人でもない私が、こんなに頻繁に城に来てるのおかしくない?!

 慣れたけど慣れたけど慣れたけど!!


「ここだ」

「あ、はいありがとうございます……」


 心の中で暴走していた私は、国王様の声で我に返る。


 そう、今私は国王様のと2人きりで、宝庫に訪れている。前の謁見の時の約束が実現したのである。

 ……だからと言って、2人きりなんて聞いてないんだけどね? 国王様と2人きりなんて、ストレスで死ねちゃうんだけど?


「ルシール嬢」


 国王様が低い声で話しかけてくる。


「エイリーとお呼びください」

「では、エイリー」

「なんでございましょう?」

「お主はもっと奴だと聞いていたんだが?」

「はあ?」


 何言ってんだこいつ。

 ……いかんいかん、国王様にそんなことを思っちゃいけない。


「もっと気軽に話してくれていいのだぞ?」

「いえ、遠慮させていただきます」


 絶対何か企んでるでしょ。腹黒なのは知ってるんだからね?! 今度の今度こそ騙されるものかっ!


「いいのか?」

「はい」

我は知らんからな?」

「…………」


 卑怯、卑怯だ!

 そんなの、ボロ(つまりは軽口のようなもの)が出たら容赦はしないと言っているようなものじゃないか!


「いいのか?」


 にたにたとしながら、腹黒国王が聞いてくる。凄く楽しそうだ。


「……では、お言葉に甘えます」

「よろしい」


 腹黒国王は満足そうに頷いて、本題に入った。


「この宝庫は、マスグレイブの秘宝のみを保管している場所だ。本来なら、あそこの棚に、マスグレイブの秘宝7つ全て並んであるのだ」


 宝庫は、王城の奥のかなり複雑な場所にあり、ここに辿り着くまで、何度も魔法の罠は種類の違うものがいくつもあり、それもかなり高度なものだった。

 衛兵も警戒を怠っていなかったし、そもそもの問題、ここまで来るには国王様と一緒じゃないと来れないらしい。


 警備面は予想以上に厳重だった。最も、私は簡単に突破できるけど。まあ、私は例外だ。

 そんな風に、マスグレイブの秘宝を眺めていると、あることを思い出した。


「あ」

「何か気づいたことがあったか?」

「それもあるんですけど、もっと大事なことを思い出しました」

「大事なこととは?」

「これ、渡すの忘れてました」


 そう言って私はアイテムボックスから、シェミー救出作戦の時に拾ったブローチを取り出す。


「ブローチまで取り返してくれたのか?!」

「たまたま、ですけど」


 国王様は嬉しそうにブローチを受け取る。


「これで、半分戻ってきたな」


 国王様はブローチを元の場所に戻し、並べてあるマスグレイブの秘宝を見て、満足そうに頷く。残るは、弓、槍、そして王位を継ぐために必要なネックレスだ。


「そうですね」

「このブローチ、どこで見つけたんだ?」

「魔物が持ってましたよ」

「またか?」

「ええ、またです」


 割と、私が立ててる仮説は正しいのではないか?

 魔物を一箇所に集めることを目的としている。その糸を引いているのは、悪魔である。というやつ。


「やはり、マスグレイブの秘宝の魔石が目的なのか?」

「私もそうだと思います」


 国王様もその結論に至っているようだ。


「そうすれば、剣が盗まれなかった訳もわかる」

「どうしてですか?」

「剣はな、

「なるほど、決まりですね」


 犯人の目的は、やはりマスグレイブの秘宝の魔石のようだ。

 そもそも、魔石というものはかなり貴重なものであり、あったとしても小さな物ばかりだ。

 マスグレイブの秘宝はかなり大きな魔石が使われており、魔力の量も桁違いだ。


「しかし、犯人像が見えてこないな?」

「まあ、ぼちぼちわかりますよ」

「呑気だな?」

「知ってます? 完全犯罪を犯す人でも、いつかどこかでボロを出すんですよ」


 まあ、私の持論だけども。というか、なんかも何も、手がかりが皆無なんだから、犯人見つける方が無理でしょ。防犯カメラとかないんだし。


「そうなの、か?」

「そうだと私は思ってます」

「確かに、焦って空回ったら相手の思うツボだな」

「そうですそうです」

「さて、エイリー他にわかったことはあるか?」


 国王様はまた話を切り替える。え、まだ続くの?


「悪魔の気配が微かに残ってるかもしれないです。上級悪魔っぽい……?」

「なぜ疑問形なんだ?」

「確信はないからです」


 私だってそんなに悪魔に会ってる訳じゃないし。多い方だとは思うけど。


「エイリーがそういうのだから、そうなのだろうな」

「はあ……」

「それではエイリー、引続きマスグレイブの秘宝を探してくれ。と言うよりも、エイリーがいるところに、マスグレイブの秘宝があるような感じもするがな」

「そうなんですよっ!!」


 ほんとそれ!! 何を狙ってるの?! そんなに私の近くで秘宝が湧かなくていいって!!


「エイリー」


 真剣な表情で国王様が私の名を呼んだ。


「何でしょう?」


 その雰囲気に押され、私はゴクリと唾を飲む。


「大事な話があるので、この後も少々付き合ってもらうぞ?」

「りょ、了解致しました……」


 まだまだ腹黒国王からは解放されないらしい。

 勘弁してくれよ……!

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