91 とりあえず、魔物はぶっ飛ばす
私たちは、転移魔法でシェミーが囚われている場所に行った。
シェミーが囚われているのは、ディカイオシュネーとの国境に近い山だ。その山にはかつて、ゼーレ族の里もあった所だ。
うんうん、だよねだよね!という場所のセレクトだ。
何のひねりもなくて面白くないなぁ……。
「ちょっと人数多いから、班を3つに分けます。突破組、前衛組、後衛組ね。
突破組は、私とベルナと、あとレノ」
「え、俺も?」
「そう、あんたも。私が戦いに集中してる時にベルナ守る役」
「頼りにしてるぞ、レノ」
「お任せください」
レノはベルナの言葉に、びしっと敬礼する。
おいおい、騎士が出てるじゃない。君、今は冒険者でしょ? ダメダメだなぁ。
「前衛組のリーダーは、ヴィクターね。グリーと、えーと片手剣ちゃんと格闘家ちゃんが前衛かなぁ?」
女子多っ、とか思ってはいけないのだ。前か後ろかに性別なんて関係ないのだ。男子にもうちょい頑張って欲しいとか決して思ってはいけないのだ。男女差別反対。
「後衛組のリーダーは、ファースね。呼ばれてない人たちは皆後衛ね」
できるエイリーちゃんは、素早く班分けを終わらせる。実は私、リーダーの素質あるんじゃない?
――――うん、そんなものあるわけないよね。
協調性のないことに定評がある私だ。孤高の英雄・踊る
あるほうがおかしい。
そんなことを考えていると、他の人たちはグループごとによろしくねー、なんて楽しそうにしていた。
こほん、と私は咳払いをして注目を集める。
「じゃあ、前衛組が先頭。続いて後衛組、最高尾は突破組ね」
「了解です!」
「それじゃー出発っ! 頑張ってシェミーを取り戻すよ~!」
「緊張感わね、エイリー」
グリーがどうでもいいツッコミを入れる。ここは、皆で「おーっ!」ってやるとこでしょ。空気読もうよ。
「緊張感? そんなもの持ってちゃダメでしょ。緊張してたら、倒せる相手も倒せなくなるし、勝てる相手にも勝てなくなるよ。リラックスしてるのが一番」
「まあ、それはそうね」
「それじゃー仕切り直して。頑張るぞー!」
「「おーー!!」
皆が声高らかにそう言い、ヴィクターたち前衛組が出発した。
それに続いて、後衛組もぞろぞろと動き出す。
「なんで俺、ここなんだ? エイリー」
後衛組が少し先を行くと、レノが文句を漏らしてくる。
「騎士団長様でしょ? 当然でしょ?」
「俺、エイリーの代わりにベルナディッド様を守れる自信ありませんよ」
「随分弱気じゃの、レノックス?」
「……せめてもうひとりいて欲しかったですっ!」
投げやりにレノはそう言った。
まあ、1人でベルナのおもちゃになるのは辛いかも。私には関係ないないことだもんね。
そうして私たちの組も歩き出した。
* * *
進まない。なかなか進まない。
魔物の叫び声、魔法の詠唱の声など、戦闘の音が辺りに響き渡る。
さっきから魔物が沸くわ、沸くわ。キリがない。
ここ、魔物出過ぎじゃない? よくこんな所に住んでたね、ゼーレ族の皆様。
「イライラするなぁ」
「どうするんだ、エイリー?」
流石にレノも、この状況はまずいと思っているらしい。
これはレベル上げの訓練じゃなくて、シェミー救出作戦なのだ。先に進むことを第一に考えないといけない。
「流石に私も、この森の魔物を一気に倒すことはできないよ」
魔物たちは場所が離れ過ぎてて、私の聖魔法の範囲外に出てくる物の方が多い。
ここに集めてもいいんだけど、危険だからなぁ。
「でもこれだと、日が暮れてしまうの」
「じゃあ、一旦離脱していい?」
「「は?」」
何言ってんのこいつ、という顔をベルナとレノがする。
「いやだから、皆から離れた所に魔物をぜーんぶ集めちゃって、それを私がまとめて倒すんだよ。そうしたら一気に片付く」
「「は?」」
「そうするしかないよねそうだよね。じゃあ、この場の指揮はよろしく、レノ」
そうして私は走り出す。
「あ、ちょっともっとちゃんと説明しろ!!」
レノの叫び声が聞こえた気がするが、気にしないことにした。気にしたら負けだもん。
* * *
ふう、ここまできたらいいかな。
私はかなり他のメンバーと離れた。
これならいつもの方法が使える。
『めんどくさいから一気に片付けちゃおうぜ!』作戦。
「じゃ、今日もよろしく、
その言葉が鍵となって、クラウソラスに魔力が集まる。
こいこいこいこい。魔物全部こい。
すると、数分もしないうちに、かなりの数の魔物が私の前に姿を現した。
おお、いいじゃないかいいじゃないか。
マップで確認すると、大体の魔物が来ていた。流石本能。恐るべし。
私はふう、と一息吐くと、呪文を歌い始める。
「聖なる光が煌めいた。全ては等しく浄化され、この他は再び平和を取り戻す。穢れたものは灰になり、聖なるものは輝きを増す!」
光で辺りが覆われて、光が消えるときには全ての魔物が跡形もなくいなくなっていた。
沢山の魔物がいた所に、ひとつだけぽつんと何かが落ちていた。
――――ブローチ?
拾ってみると、魔力を感じる。装飾も豪華だ。
つまり、これはマスグレイブの秘宝?
鑑定してみると、やはりそうだった。
ラッキーラッキー、棚ぼた的な感じね。
やっぱいいことしてる時はいいことあるんだね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます